雁屋哲の今日もまた

2009-02-19

同じ、酒飲みなんだけど

 どうも、最近、例の大臣のG7における、酔っぱらい会見で騒がしい。
 私も酒が好きで、酒の上で、人間関係を壊したり、しないでも良い喧嘩をしたり(殴り合いを含む)した人間なので、彼に対しては大目に見たいのはやまやまだが、酒飲みには、酒飲みの規則という物があって、彼は、それを踏み外したので、簡単には、「良し、良し」とは言えない。
 その規則とはは何かというと「酒を殺して飲む」と言うことである。
 酒を飲むと大変良い気持ちになる。
 有頂天になる。
 でれーっとした気持ちになる。
 しかし、次に大事なことを言ったりしたりしなければならないと言うことが分かっているときには、私は、酒を殺す。
 要するに、酔っていても、その酔いでもって、自分の行動が他に悪影響を及ぼさないように自分で自分を制する。
 だから、大変重要な場合には幾ら酒を飲んでも酔わない。ウィスキーの四分の三、ワインの二本くらいでは屁でもない。
 いや、はたから見れば、「酔っぱらってましたよ」くらいのことは言われるが、その場の雰囲気を壊したり、他の人を不愉快にしたりすることは絶対にない。
 これは、矢張り、大酒飲みだった父親から仕込まれたことで、「酒を殺せないなら酒を飲むな」と、父に言われた。
 別の言葉で言うと「酒を飲んでも、酒に飲まれるな」だ。
 これを、私が小学生の時から盗み酒をしても寛大だった父が、酒について厳しく言い渡したことだ。
 酒は楽しむべし。
 人を不愉快にするべからず。
 これが、私の父が、私に酒を飲むのを許すと同時に、厳しく言ったことだ。
 要するに、「酒を殺せない人間は、酒を飲んだら人前に出るな」と言うことだ。
 あの大臣は、その酒飲みの基本的な規則を知らなかった。
 あるいは、知っていて、破ってしまった。

 私の連れ合いは、私の酒の被害者で、私が酒を飲むばかりに、酒の勢いでむちゃくちゃなことをするのに、さんざん困ったが、しかし、最低の線は私は守ったつもりで、連れ合いや娘たちに聞いても、「お父さんはお酒を飲むと、うるさくなるが、悪いことはしなかった」とお墨付きを今夜貰った。

 私の連れ合いの甥の結婚式の当日、私は、祝辞を述べることを前から頼まれていたが、その前夜、私は大変な深酒をし、しかも、私は酒を飲み過ぎると興奮して寝られなくなるという性質がある。(良く、寝付きを良くするために、寝酒を飲む、なんて言う人がいますね。洒落れて、ナイト・キャップなどとも言う。冗談じゃない。私なんか、夜十時過ぎに酒なんか飲んだら、もう、興奮してしまって、明け方まで寝付けない。)
 そんな訳で、翌日甥の結婚式だと思うと、とにかく寝なければならないと言うので、睡眠薬を飲んだ。それも大量に。
 今回の、大臣より遙かに悪い状態ですよ。

 結婚式の式場で、私は二日酔いと睡眠薬で、でろでろ。
 目も開けていられない。
 母が心配して、「祝辞は哲也はやめて他の人にして貰って」と言うくらい、無残な状態だった。
 しかし、一旦、私が祝辞を述べる人間として指定されるや、私は壇上に立って、以前から連れ合いに「これだけは、祝辞の中に入れてね」と言われたことまで、きっちりと入れて、実に整然と祝辞を述べたのである。
 この件は、いまだに我が家では語りぐさになっていて「どうして、あんな、酒と睡眠薬ででろでろになって、目も開けられない人間が、突然しゃっきりして、きちんとしたいい祝辞述べられたの」と言われる。
 ふざけんじゃねーよ。
 こちとら、酒だの薬だの、さんざ、こなしてるんだ。
 酒の酔いを殺すなんざ朝飯前だ。
 いざとなったら、どんなに深酔いしていても、すっきりさっばり、理路整然と話すことが出来る。
 特に、私なんか、見栄っ張りだから、人前となると、絶対に自分が酔っている姿を見せまいと努力する。
 だから、普通に付き合っている人は「雁屋さんは酒が強いですね」と言うが、そうじゃない。
 私は酒は弱い。
 しかし、酒を殺す事を知っている。
 あの大臣は、せっかく酒飲みなのに(私は酒飲みが大好き。酒を飲まない人間は、好きじゃないな)、酒を殺す術を未だに体得していなかったようだ。
 彼について、ネットで調べると、1953年生まれ。
 私より、一回り下の同じ蛇年ではないか。
 彼が日常言っていることは、無残な極右的なことで私と意見はまるで違うが、同じ蛇年で酒が好きだ。
 ウワバミ同志ではないか。

 ここに於いて考えを改めて、私の言うようなまともなことを考えて馬鹿馬鹿しい極右的発言行動をやめることを、その大臣に勧めるね。
 そのような、極右的発言をし続けていることが心の負担になってあのような醜態を世界中にさらすことになったのではないか。
 正しいことを言い、正しいことをすれば、あんな悪酔いの醜態を世界中にさらすようなことはしなくなりますよ。

 私の立場、意見は、あの大臣の考え、言うこととは全く正反対だ。
 考えの上から言えば、敵だろう。
 しかし、酒飲みの一員として、あの状態は、情けないが理解する。同情するよ。
 だが、酒飲みとして言いたいが、人前に出るときには自分の酔いの程度を知ってからにしてくれ。
 酒を殺して飲むことを覚えてくれよ。
 と言っても、もはや、五十歳を過ぎた人間に言っても無理か。

 などと言うのは冷たすぎるな。元大臣よ、ウワバミとして正しい道に戻って元気に頑張ってくれ。人間として正しい道を歩むウワバミだってあっていいんだから。

雁屋 哲

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