いやはや
コロナで世界中が大混乱している最中に、またとんでもないことが起こった。
ロシアがウクライナに攻め込んだ。
いやはや、なんとも、である。
私にはどうしても、ロシアがウクライナに攻め込んだ理由が分からない。
識者という人たちが、テレビなどで今回の開戦に至る事情を説明しているが、どれ一つ取っても、納得出来ない。
基本的に言って、なぜ、戦争をしなければならないのか、という疑問に答えてくれる説がない。
考えてみれば、戦争とはそんな物なのかも知れない。
例えば、日本が中国を始め、アジア各国に攻め込んだその理由がよく分からない。
日本は単なる膨張慾、八紘一宇(全ての国を天皇の支配のもとに置く)という妄想に駆られてえてあれだけの侵略戦争をしたのだろうか。
朝鮮、中国、東南アジアに攻め込むことについては、八紘一宇の妄想でその行動が理解できるとして、太平洋を隔てたアメリカに宣戦布告したことについては、八紘一宇では理解できない行動だ。
八紘一宇をアメリカに妨害されたので、発狂したとしか思えない。
日本のあのアメリカ相手の戦争は理性的なものではなかった。
もっとも、戦争が理性的だったことがあるわけがないのだが。
プーチンの言うことはあまりに馬鹿げている。
ウクライナのナチスがロシア系住民を虐殺しているから、それをとめるためだという。
しかし、そのために戦争を引き起こしますか。
識者の言う所では、プーチンは旧ソ連の版図を回復したいのだそうだ。
なぜ、回復しなければならないのだ。
今のままで何か不自由があるのか。
戦争を引き起こしてまで版図を回復しなければならない理由があるのか。
ロシアがウクライナに侵攻して1ヶ月以上経って、ロシアがウクライナで何をしたのか、ウクライナの惨状が、次々に明らかになり、テレビで報道される。
その惨状たるや、言葉もない。
あれがロシアのやり方なのだ。
チェチェン、シリア、でロシア軍は都市を徹底的に破壊した。
軍事目標だけでなく、民間の施設も攻撃した。
軍事施設しか攻撃しないなどとロシアをうそぶくが、そもそも、ロシアの目的は相手の抵抗意欲をそぐことにある。
そのためには、民間の犠牲が多ければ多いほど、効果的だと言うことをロシアはよく知っている。
最初から、民間の犠牲者をできるだけ多く出すことを目的としているのだ。
住む環境を破壊され、肉親を殺され、自分も傷つくと、大抵の人は抵抗する気力を失う。
その、抵抗する気力を奪うのがロシアの常套手段なのだ。
ロシアと言うより、プーチンのやり方だ。
ロシア国内をプーチンは暴力で押えつけている。
ロシア政府、プーチンに批判的なジャーナリストは殆ど皆殺された。
弾圧などと言う生やさしいものではない。
反対すれば殺すのだ。
それを見せつけられて怯えた国民は、反対する意欲を失って、プーチンの言うなりになっている。
それがプーチンのやり方だし、プーチンの支配するロシアという国のやり方だ。
今の所ロシアは攻撃目標を達成することが出来ず、一旦キーウ周辺から引き揚げて、東部攻略に集中するようだ。
今日現在、激しい攻撃が行われているだろう。
なんと言っても、ロシアはアメリカ、中国と並ぶ軍事大国だ。
本気を出せば、ウクライナを蹂躙出来ないわけがない。
これから、私達は今まで以上の惨状を見せつけられるに違いない。
このロシアの暴挙を見るにつけ気になることがある。
2つの漫画を見て頂きたい。
最初の1つは、朝日新聞の夕刊に連載している、しりあがり寿氏の「地球防衛家のヒトビト」だ。
この「地球防衛家のヒトビト」は不思議な漫画で、登場人物がSF映画の地球防衛隊の隊員(そんなものがあればだが)の制服を着ている。
ところがその制服で「ヒトビト」は極日常的な生活を営んでいる。
お父さんも娘も会社勤めだし、子供は学校に通っているし、お母さんは家庭の主婦だ。
日常の何と言う事のない滑稽な場面や、社会問題・政治問題の風刺が、地球防衛隊の制服を着たヒトビトによって描かれる。
のんびりほのぼのしているようで、鋭く厳しい内容で迫って来たりするので油断がならない。
その3月1日掲載の分を見て頂きたい。
(画像はクリックすると大きくなります)
次は、以前に何度か紹介させて頂いた、週刊朝日連載の山科けいすけ氏の「パパはなんだかわからない」だ。
4月8日号に掲載されたのを見て頂きたい。
(画像はクリックすると大きくなります)
この二つの漫画に共通しているのは、習近平とプーチンの関係だ。
プーチンがウクライナに攻め込んだのを見た習近平が、「それがありなら、こちらも」とその気になるのではないか、というわけだ。
漫画というものは力がある。何十行も言説を重ねるより、4コマ、1ページの漫画の方が説得力がある。
実に見事な漫画だと思う。
中国は、勝手に自国に取り込んだ、チベット、ウィグル、内モンゴルをジェノサイドと批判されるやり方で、その地の人びとを暴力で屈服させている。
更に習近平は台湾を支配下に置くと広言している。
現在の台湾の人びとは、今の状況で大変に満足している。
それを、どうして習近平は当然のこととでも言うように、台湾を中国の支配下に置く、と言うのか。
台湾は日清戦争の後に、日本が占領した。
元々中国の領土だったのだから、中国が支配する、というのが習近平の論理だろう。
しかし、台湾の人たちはどう考えているか。
第二次大戦後に、共産党に敗北して台湾に逃げ込んできた、蒋介石の率いる国民党が長い間台湾を支配してきたが、1900年代の李登輝による民主化の後、国民党支配の時代が終わり、現在台湾は民主国家として繁栄している。
あっという間に中国の圧制下に入った今の香港の姿を見れば、台湾の人たちが、中国の共産党による圧制という政治体制に入りたいと思うはずがない。
ロシアと中国に共通しているのは、民主主義を知らないことである。
ロシアでは長い間帝政の時代が続いた。
ロシア革命で帝政から共産主義の世界になった。
ソビエト連邦は共産党一党独裁の政治体制だった。
レーニン、スターリン、ブルガーニンと続くソ連の政治体制は民主主義とは無縁のもので、共産党書記長が実質的帝政ロシアの時代のツアーと同じように人民の上に君臨し、人民を支配していた。
エリツィンによって、ソ連邦は崩壊し、選挙で大統領を選ぶロシア連邦に移行して、一見民主主義体制に移行したかと思われたが、エリツィンの後大統領になったプーチンは自分に反対するものは殺すという凶悪な手法でツアーより遙かに強力で凶暴な独裁者になった。
ロシア人にとっては、そのような強権を持つ支配者を戴く生き方が身に染みついているに違いない。
今のロシアは帝政時代を凌ぐ、恐怖による圧制下にあると言えるだろう。
その方がロシア人は生きやすいのだ、といったら言い過ぎだろうか。
ただ、そのような圧制になれてしまっているのだとは言えるだろう。
中国人も4千年以上の皇帝による支配の下に生き続けてくると、自分たちで指導者を選ぶ民主主義的な生き方は返って不安であり、強圧的な独裁権力によって支配される世の中の法が生きやすいのかも知れない。
私は四年ほど前に久しぶりに中国に行った。
わずか十年で中国はその姿を激しく変える。
上海は大変に繁栄する大都会だった。
上海から、観光で東京に来た上海人が、銀座の町にやってきて
「なんでこんな田舎に連れて来たんだ」
と怒りだしたそうである。
確かに、今の上海から見れば、銀座は貧相な町である。
その上海で、そして、その後に行った西安でも見たことだが、夜になると、人びとが町の広場に集まってきて、踊るのだ。
バイクにアンプとスピーカーを積んで持って来て、それで音楽をかける。
聞いたことのない中国の音楽で、それに合わせて、人びとが踊る。
私が見たのは主に中年以上の男女だった。
その男女が、実に楽しげに、踊るのだ。
上海でも西安でも毎日踊る人たちの姿を見た。
休日には昼間に公園で踊るという。
私はその人たちの姿を見ていて、これは、「鼓腹撃壌」なのだろうかと真剣に考えた。
「鼓腹撃壌」とは、中国の史書「十八史略」に書かれていることで、人民は政治に満足すると、腹鼓を打ち(鼓腹)、地面を踏み鳴らして(撃攘)喜ぶ、という。
まさに踊っている人びとは、身なりも良く、健康そうで、如何にも満ち足りているという感じである。
これが鼓腹撃壌の人びとの姿なのか、と私は思った。
中国に言論の自由がないのは良く知られている事実だ。
共産党の批判は犯罪になる。
天安門事件については全てがなかったことにされている。
1989年6月9日に起こったことなので、89や69と言う数字を書かれていただけで問題になるという。
反体制的な言辞を弄したジャーナリスト、辯護士は投獄されてしまう。
ネットは全て検閲されているし、個人情報は全て国が管理していて、監視カメラも全土にくまなく配置されているから、ある1人の人間を捕まえようと思ったら、中国全土どこにいても6分か9分で捕まえることが出来るという。
まるで、中国全土が開放型の監獄のようなものである。
個人の自由も、言論の自由もない。
事業を興して富豪になっても、政府の考え方次第で、金も地位も危うくなる。
そんな国に、私は絶対に住むのは嫌だと思うが、圧制の元で生きることが4千年以上続いて、体の奥底にまで、従うことがすり込まれてしまっている中国人は、権力にさえ逆らわなかったら、とりあえず安楽な生活が出来るという状況で満足してしまうのだろうか。
清朝が崩壊した後、混乱期を経て毛沢東の中国共産党が政権を握った。
中国人は今までに民主的な政治というものを経験したことがない。
大半の中国人は、民主主義とか、個人の人権とか、個人の自由などと言うことは考えたこともないのだろう。
だから、私から見れば開放的監獄のような生活にも、衣食さえ足りていれば満足するのだろう。
私は、踊る中国人たちを見てそう思った。
習近平は「くまのプーさん」に似ていると言われるのがいやなのだそうだ。
そこで、中国では、「くまのプーさん」は禁句となっている。
まさか習近平自身が命じたわけではあるまい、周囲の取り巻きが忖度しての事なのだろう。
習近平、なんというちっぽけな人間であることか。
80パーセント以上の国民がプーチンを支持するロシア。
国民が1人残らず習近平に従う中国。
この二つの国が、巨大な武力を持っていることが恐ろしい。
そして、その二つの国の指導者が、領土拡張の意欲を強く持っていることが恐ろしい。
プーチンの凶行をとめる人間がロシアにはいない。
習近平の、チベット、内モンゴル、ウィグルにおける残虐行為をとめる人間が中国にはいない。
習近平が台湾を攻撃すると言えば、中国人は歓呼の声を挙げるだろう。
まさか、21世紀になって、こんな戦争が起きるとは夢にも思わなかった。
一体どうすれば良いのか、世界中の人間が、答えを見つけられず、オロオロしているように見える。
私も途方に暮れている。
(お断り)しりあがり寿さま、山科けいすけさま、
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