雁屋哲の今日もまた

2009-02-10

ちょっと訂正

 先日書いた、「シー・シェパード」の件についての私の文章は、感情が激するままに、筆が走りすぎたところがあるので、一部訂正する。
 あれくらい激しく書かなければ薬が効かないと思ったのだが、ちょっと薬が効きすぎたところがある。

 まず、海上自衛隊の件であるが、あれは矢張りまずい。
 憲法の第9条と、第1条を同時に廃止するまで、自衛隊の海外派遣はまずいだろう。(憲法の第9条と第1条を同時に廃止することは、長い間私が唱えていることである。第9条と、第1条を同時に廃止することで、日本は初めて普通の国になれるのである)

 明治以降の日本歴史を見ると、対韓国に対する江華島事件(1875年、日本はまだ国交のない韓国の江華島の水道河口に入り、ボートで韓国の要塞草芝鎮に近づいた。国交もない国の船が要塞に近寄ればそれに対応するのは韓国として当然である。まず草芝鎮から砲撃が開始されたが、草芝鎮の大砲の威力は弱かった。それを口実に、日本の軍艦雲揚の井上艦長は砲撃を命じた。雲揚の大砲の方が威力があった。その後雲揚は江華島の南10キロにある永宗島の要塞を急襲した。永宗鎮には600人の兵がいたが、突然の襲撃に殆ど闘わず逃げた。井上艦長は兵を上陸させ、城内を焼き払い残されていた兵器から楽器に至るまで略奪した。《海野福寿著 「韓国合併」による》
 日本側が仕掛けたことであるにもかかわらず、日本はこれを口実に韓国に謝罪を要求し、1876年、韓国にとって不平等な条約『日韓修好条規』を締結した)
 1894年7月25日、豊島沖で清国の戦艦を奇襲して沈没させて、日清戦争を始めた。清国に対して宣戦布告したのは8月1日になってからである。
 1904年2月4日、日本艦隊は、旅順港のロシア艦隊を奇襲してロシア軍艦を沈没させ、9日に仁川沖でロシアの軍艦2隻を撃沈した。宣戦布告は2月10日になって行われた。
(真珠湾攻撃に限らず、日本は常に、宣戦布告前に奇襲攻撃を仕掛けることで戦争を始めていたのである)
 更に、日本の運命を決定づけた、満州事変は、日本の中国駐在の関東軍の支配者、石原莞爾中佐、板垣征四郎中佐などによって、自分たちが爆破しておきながら、満鉄の線路を中国側が爆発したとし、日本人を守るためと称して中国に攻撃を仕掛ける事で満州事変を引き起こし、最終的に日本の傀儡国家満州国の建立まで進んだ。

 以上満州事変の開始までを見ると、常に日本の政府と軍部は謀略的である。
 今の自衛隊がその血筋を引いていることは、先の航空自衛隊の幕僚長である田母神俊雄氏が、「日本が侵略国家だったとはぬれぎぬだ」などと主張する論文を民間企業の懸賞論文で発表して、日本の自衛隊の幹部の頭はその程度の物か、と世界中に恥をさらした事で明らかだ。

 航空自衛隊の幹部がこんな物なら、海上自衛隊の幹部も余り信用ならない。
 うっかり、南氷洋まで捕鯨調査船の護衛などと言う名目で派遣すると、「シー・シェパード」が何もしないうちから、「向こうが先に仕掛けてきたから」という口実で、「シー・シェパード」を撃沈させて世界的な問題を引き起こしかねない。

 そう言うわけだから、自衛隊の派遣を要求することは取り消そう。

 ついでに、オーストラリアドルが安いからと言ってオーストラリアに観光に来たりするなと言ったが、それも取り消す。
 せっかく、オーストラリアドルが安い機会にオーストラリアに来て、反捕鯨を主張するオーストラリア人に、その過ちを指摘してやって貰いたい。

 しかし、オーストラリアに対する批判は取り消さない。
 私がオーストラリアに二十年も住んでいるのは、この国が素晴らしい国だと思っているからだ。
 その一番の素晴らしさは、「フェアーであること」(公平、公明正大、 あること)を大事にするからだ。
 如何に「フェアーであること」を大事にするかというと、その国歌を聞けば分かる。

「オーストラリア国歌」

[flashvideo file=wp-content/uploads/2009/02/national-anthem-of-australia.mp3 /]

(歌詞)
「Australians all let us rejoice,
 For we are young and free;
 We’ve golden soil and wealth for toil,
 Our home is girt by sea;
 Our land abounds in Nature’s gifts
 Of beauty rich and rare;
 In history’s page, let every stage
 Advance Australia fair!
 In joyful strains then let us sing,
 ”Advance Australia fair!”」

(私の試訳)
「全てのオーストラリア人よ、喜び祝おうではないか、
 我々は、若く自由なのだから。
 我々は苦労の結果、黄金の土地と豊かさを手に入れた。
 我々の国は周囲を海に守られ、
 我々の土地は、自然の恵みにあふれている。
 それは、豊かでたぐいまれな美しさを持っている。
 歴史の中で、どんなときでも、前進せよ、
 公明正大なオーストラリア!
 喜びに声を張り上げて歌おう
 前進せよ、公明正大なオーストラリアと!」

 私はオーストラリアの国歌が好きである。実にすがすがしいし、力に満ちている。
 歌の文句も実によい。
 変に愛国的でなく、「闘おう!」などという文句もない。
「Advance Australia fair!」
 と言うところが実にいいではないか。

 オーストラリアでは、差別をしたり、ずるをしたり、フェアーでないと厳しく非難される。場合によっては社会的に葬られる。
 それくらい、オーストラリアではフェアーであることを大事にする。

 だから、今回私はオーストラリアを批判するのだ。
 どうして、オーストラリア政府は「シー・シェパード」が日本の科学調査船を攻撃することを助けたのか。
 捕鯨については議論することを一切拒否し、たとえ議論しても、日本の言い分を聞こうともせず、一方的に日本を野蛮人と言って非難する。
 それが、IWCと「シー・シェパード」これまでの態度だった。
 捕鯨がどうしていけないことなのか、科学的な証明は一切行わず、捕鯨を禁止しようという。

 IWCの反捕鯨派は、捕鯨と何の関係のない国までIWCに加盟させ、時には、アメリカ人が小さな国の代表になったりもする。
 そういう、捕鯨に関係のない国でも、総会では日本と同じ一票を持つからおかしい。
 結果として、常に、IWC総会では、日本の捕鯨が反対される。
「シー・シェパード」は過激な行動ゆえに、そのIWCからも離れた団体である。(形式だけかも知れない)

 その「シー・シェパード」に母港を貸し、去年日本の調査船を襲った人間も、再び「シー・シェパード」に乗ることを許し、結果的に、今回のような、人命に関わるようなテロ行為を行うことを許した。

「Advance Australia fair!」はどこへ行った。
 Unfairではないか。

 オーストラリア政府は、「シー・シェパード」のテロ行為を許したことを、日本に謝罪し、「シー・シェパード」の乗組員を日本に国際犯罪人として引渡すべきである。

 次のニュースを読んで、読者諸姉諸兄よ、どう思われるか。

 遭難した反捕鯨団体の活動家2人を日本の捕鯨船が救助 – オーストラリア

【シドニー/オーストラリア 9日 AFP】南極海で9日、反捕鯨団体「シー・シェパード(Sea Shepherd)」の活動家2人が一時行方不明になったが、日本の捕鯨船の支援で約7時間後に無事救助された。

 行方不明となった2人はオーストラリア人と米国人の活動家。濃い霧が立ちこめる中ゴムボートに乗り、日本の捕鯨船「日新丸」の活動を妨害しようとしていた最中に行方不明になったが、日本の捕鯨船がこの2人の捜索活動を手助けをしたという。

 シー・シェパードのJonny Vasic会長はAFPの取材に対し、「2人を助けてくれた日本の捕鯨船には感謝しているが、今後も妨害活動は続けるつもりだ。こうした海上での救助活動は規則で決まっていることだ。我々も反対の立場にいたら同じことをしただろう」と語った。

 よくも、「我々も反対の立場にいたら同じことをしただろう」といえるものだ。
「海上の救助活動は規則で決まっている」などと、船に体当たりする人間が言えた義理か。この、厚かましさはまともではない。
 1月7日の読売新聞を以下に引用する。(これは、以前にも引用させていただいた)

 「シー・シェパードの船、行方不明者の捜索妨害」鯨研発表

 ニュージーランドの南東約3300キロの南極海で調査捕鯨活動中の目視専門船「第2共新丸」(372トン)から、操機手の白崎玄(はじめ)さん(30)(神奈川県横須賀市)が行方不明になった事故で、調査捕鯨を行う「日本鯨類研究所」(鯨研)は7日、反捕鯨団体「シー・シェパード」の抗議船「スティーブ・アーウィン号」に約370メートルまで接近されるなど、白崎さんの捜索活動を妨害されたと発表した。

 鯨研によると、抗議船は6日夜(日本時間)、無灯火状態で現場海域に現れ、約370メートルまで近づいたところで、無線を通して「行方不明者の捜索に来た」としながらも、「捜索が終わり次第、調査船団の妨害活動を行う」と宣言したという。この距離は安全航行の上で船同士の進路に影響を与えかねない間隔で、鯨研は接近したこと自体が妨害に当たるとしている。

(2009年1月7日12時04分 読売新聞)

 海上で共助するどころか、自分たちは、こう言うことをしているではないか。
「シー・シェパード」はとても正気の団体ではない。
 カルトである。それも、テロリストのカルトである。

「シー・シェパード」の乗組員の中には、国際刑事機構で公開捜査されている人間が何人か含まれている。
 オーストラリア政府は責任を持って、その人間たちの身柄を確保し日本へ引渡すべきだ。
 それが「fair」な態度という物だ。
 もう一つ、2009年2月9日の産経新聞の記事を引用する。

シー・シェパードの捕鯨妨害でオランダ公使に抗議 水産庁

 米国の環境保護団体シー・シェパード(SS)の抗議船が調査捕鯨に対する妨害を繰り返している問題で、水産庁の山田修路長官は9日、抗議船の船籍があるオランダのミッヘルズ駐日公使を呼び、SS抗議船の取り締まりを求めた。
 これに対して、ミッヘルズ公使は「船籍国としての責任を認識している。(抗議船の)船主らと接触し、安全を脅かす行為を止めるよう要請した」とする声明を発表した。ただ、声明の中では「オランダ政府は捕鯨に反対しており、クジラを殺さなくても調査は可能」とも主張した。

「今季の捕鯨妨害終了」 シー・シェパード

 南極海で日本の調査捕鯨船への妨害活動を繰り返していた米環境保護団体「シー・シェパード」は9日、抗議船スティーブ・アーウィン号の燃料が尽きたため、オーストラリアの港に戻るとウェブサイトで発表した。
 次の捕鯨シーズンは11月末から来年3月末まで。同団体は「日本の捕鯨船のスピードに対抗できる船を用意して(次のシーズンに)南極海に戻る」としている。
 シー・シェパードの抗議船は昨年12月下旬、日本の調査捕鯨船に液体入りの瓶を投げ付けたほか、今月に入ってからは船体を何回も日本船に衝突させるなど妨害活動を激化。日本の水産庁は「非常に危険な暴力行為」として非難していた。
 昨年12月初め、オーストラリアから出港した抗議船は、給油のため一月に同国に帰った後、再度南極海に戻っていた。(共同)

 さあ、オーストラリア政府はどうしてくれるのかな。
 国際手配されている犯罪人たちをそのまま見逃したら、オーストラリアはunfairどころではなく、無法国家になると忠告しておこう。

雁屋 哲

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