雁屋哲の今日もまた

2009-01-19

イカを釣りに行きました

 今日は、午後から、長男とイカ釣りに出かけた。
 長男は昨年の末からイカ漁でよい成績を上げていて、このイカがもう、素晴らしく美味しいので、どうしても私も釣りたい、と言って、今日長男に連れて行って貰ったのだ。
 場所は、私達の家からは、ハーバーブリッジを越えた、市の中心部に近く、シドニー最高の住宅地と言われている、Vaucluseの先、Watson’s Bayと言う港の船着き場である。
 ちょうど、シドニー湾の北側の出口付近である。
 ここで、最近長男はよい成績を上げていると言うので、そこに出かけた。
 船着き場であるから、海に向かって、木の突堤があって釣りには非常に便利なのだが、船着き場だけあって、ちょこちょことフェリーが何種類もやってくる。
 そのたびに、釣りは中止だ。
 おまけに、やたらと人が多く、私がイカ釣りのルアーを投げると、そばにいる娘さんたちが、「今投げた魚は何なの」と聞いてくる。
 仕方がないから、ルアーを引き上げて、娘さんたちに見せて「ほらね、人工の物なんだよ。エビなんかに形が似ているでしょう。それで、イカがおびき寄せられてくるのを引っかけて釣るんだよ」などと説明してやらなければならない。
 どこの国でも同じことだと思うが、若い女性が魚釣りに持っている知識は果てしなく低い。
 どうせ、説明したったしょうがないだろうなと思いながら、それでも、私が、いちいち説明するのは、生きている魚をえさに投げていると思われては、私の釣り人としての腕を疑われることになるからだ。(動物愛護なんてことは、絶対に考えません)
 ルアーです、正しくは英語で、lure(そのものの魅力でもって誘惑して引きつけると言う意味)です。
 最近のルアーは素晴らしい出来で、柔らかいプラスティックで作られていて、本当にこれはエビだろうとしか思えないものばかりだ。
 本物のエビとの違いは、そのしっぽに、悪逆な逆さに生えた針を二重に装備していることだ。
 善意のイカくんが、うっかり「あ、これは旨そうなエビだ」などと抱きついたが最後、その二重の針がイカの体に刺さって、イカは逃れようなく、私達の手中に落ちるという仕組みになっている。

 私も、シドニーに来てきから、色々と釣りをしました。
 鯛、アジ、黒鯛、ヒラマサ、カンパチ、など色々釣りましたが、なんと言っても食べて美味しいのは、イカです。
 もう、釣ったその場で活け締めにしたイカは、その味がまるで違います。
 ここ数ヶ月、長男が、美味しいイカを釣ってきて、しかもそれを釣った其の場で活け締めにしているので、もう、その旨いことと言ったら例えようがない。
 凄いんだ。
 いや、こんなに美味しいイカ素麺なんか、北海道でも食べたことがない。
 と言うほどの旨さなんだ。
 で、とうとう今日は、私も出漁しました。

 凄かったよ、一匹の大きなあおりイカを住みかの海草の群れから外におびき出したんだ。
 もうすこしで、私の、ルアーに食付くと言うところまで来たのに、そのイカはえらく用心深い。
 なかなか、食い付かない。
 水が澄んでいるし、海草までの水深が浅いので上から見えるんですよ。
 もう、私のルアーに、早くしがみついてくれと、釣糸を揺らして誘惑するんだがイカは極めて慎重。
 そこで、一旦糸を引き上げて、同じポイントに、ルアーを落とし込んだ。
 普通なら、それで食込んでくるはずなのに、そのイカはどうも、非常にすれているらしい。
 自分の体を、私の、投げたルアーにすり寄せるが、脚からがっきと抱え寄せることがない。それでなければ、イカは釣れない。

 これは、このルアーが、イカさんの気にいらないんだろうと長男に助けを求めて、別のルアーに変えてみたけれど、今度はもう全く反応なし。
 長男の言うところによると、「あの海草の群れの中にイカの三兄弟が住んでいて、とにかく奴らはすれているんだよ。」
 と言うことである。そんな、イカの三兄弟なんてものがあるのかよ。
 なんだか、長男の言うことは、イカ伝説みたいな、神秘の領域に入っているが、私は、もう、目の前で今にもルアーに引っかかりそうになって、そっぽを向いてしまった、イカのことが忘れられない。

 四時間以上、その船着き場に陣取っていて、私は、一匹も釣れず。
 長男は小さいアオリイカを二匹釣った。
 時間が来たので家に帰った。
 その途中、どうしても、私はイカを釣らないと気持ちが収まらないので、長男に協力しろと迫った。
 長男は明明後日から、大学の仕事が入っているから、明後日が最後の日だという。
 よし、あさって、もう一度イカ釣りに挑戦して、大きなイカを何匹も釣ってみせるぞ。付き合えと強要した。
 釣りの途中に連れ合いから電話がかかってきた。
「どれだけ釣れているの。」
 釣れているわけがないという、先入観の下の電話だ。
 長男が、小さいけれど、二匹釣ったといったら、連れ合いはえらく興奮した。
「すごいじゃない!」
 そこで、長男は、「小さいイカだから家族八人が、刺身にしては食べられない。イタリア風に炒めて食べるしかない」と言ったが、それだけで、連れ合いは大満足。

 六時過ぎまで頑張ったが、もうどうにも釣れないので、竿をたたんだ。
 おなじ突堤に、イタリア人、日本人、レバノン人、大勢釣りに来ていたが、小さいとは言え、イカ二匹の収穫を持って帰ったのは私達だけだ。

 家に帰って、早速長男が、釣った二匹のアオリイカをイタリア料理風に調理した。
 まあ、これが、最高。めちゃくちゃに旨い。
 鎌倉の母も、大喜び。
 長男は、祖母孝行を果たして、鼻高々。
 イカの味を美味しく味わうためには、釣ったら其の場ですぐ、締めること。
 活け締めだ。
 これを忘れると、イカの本来の味が味わえず、イカ臭い、おかしなにおいがする。
 しかし、日本人の大半は、そのおかしな臭いをイカ本来のにおいと思いこんでいる。
 冗談じゃない。イカはイカ臭い物ではないんだ。イカ臭さは、死んだ後のイカの体が腐敗を初めて発生する臭みだ。釣ったらすぐに締めないと、イカは死んでもその体は新陳代謝を続ける。その新陳代謝がイカをイカ臭くする。その新陳代謝を止めるためには、すぐに、締めなければならない。
 イカは釣ったらすぐに締める。
 これだけで、イカの価値が、数千倍までに上がる。
 この季節、イカ釣りに行く人は多いと思うが、釣ったら、その場でイカを締めることを忘れないようにお願いしたい。
 これを、実行して欲しい。
 そうすれば、今まで食べていたいかは何だったのがと言う恐ろしい話になる。

 今日、私は、大きなイカを釣ることができなかった。
 で、長男に頼んで、明後日、もう一度、今度は船を仕立ててイカ釣りに行こうと言うことになった。
 そのてん末は、また、報告します。
 とにかく、でかいイカを釣りたいよおーっ!

雁屋 哲

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