和歌山取材、無事終了
昨日、11月14日、「美味しんぼ」の「日本全県味巡り」和歌山県篇の為の和歌山県取材を完了した。
10月の第一次取材に加えて、今回の第二次取材で、和歌山県の姿をかなりのところまでつかめた、と思う。
今回の取材には、和歌山県の全面的な協力を得られて、おかげで円滑に進めることが出来た。
この、「日本全県味巡り」は、最初に私の考えや好みを良く知っている私の甥の真中が、まず各県に乗り込む。
そこで、いったい各県に何があるのか、まるで探検隊のような仕事をする。
「日本全県味巡り」でまず一番大事なのが、この「先行取材」である。
この先行取材で、「美味しんぼ」の「日本全県味巡り」に取り上げるのにふさわしいと思われる物を、まず探し出す。
まず、多くの人から情報を集めて、あるいは推奨されて、「ここなら」と思われるところを回る。
そして、その当たる確率は低い。
今回も真中は、三十軒以上の料理屋を試したが、結果的に取り上げることが出来たのは四軒のみ。
その、「先行取材」には今回、和歌山県庁の食品流通課の山下主幹、仲主査、のお二人にひとかたならぬお世話になった。
真中は一度ならず、二度、三度と「先行取材」を重ねる。
県庁の方も、いったい我々が何を望んでいるのか最初は見当もつかなかったそうである。それはそうだろう。和歌山県の観光、名産品、などの話なら簡単だが、「美味しんぼ」のように、郷土の文化、郷土の料理文化、と来ると、なかなか分かりづらい。
仲さんが仰言るには「二度目の先行取材のおしまいになって、やっとこの人間が何を求めているのか分かりましたわ」
こうして県下くまなくめぼしい物を探し回って、真中が、「美味しんぼ」の「日本全県味巡り」の目的に合致する取材先を決め、取材予定を立てる。
それから、今回の例で言えば、私、担当編集者、記録係のライターの安井さん、カメラマンの同じく安井さん、(私は、この二人と『W安井』、として吉本興業に売り込みたいと、吉本興業の野山さんに掛け合った。カメラマンの安井さんは大阪出身で極めて機転が利き、細かく目の届く人で、つっこみも鋭いし、ぼけも上手だ。ライターの安井さんは仕事の面では一つの隙もなく記録するべきことは全て記録してくれる緻密さを誇るが、仕事を離れるとおっとりとしていて、私達男どものでたらめな冗談に簡単に引っかかったりする。この二人を組み合せて漫才界に新風を吹き込む、と言うのが私の企みなのだ。)
話を元に戻すと、さらに、カメラマンの助手の伊藤さん、ビデオ撮影係の私の長男、それに真中。
そして、主導してくださる、県庁の、山下主幹、仲主査、総勢9人で、県下を回るのだから、大変だ。
どんなに綿密に「先行取材」をしても、実際に行くと、私の気にいらなかったりする物もある。
そう言うときには全員意気消沈である。
一方、取材するつもりではなく気軽に食事をするつもりで入った店が、めっぽう面白く、急遽取材に切り替え、などと言うこともある。
その時は全員、幸せになる。
全く、この取材は、実際にこの目で見てみるまで何がどうなるか分からないところがある。
今回の取材が上手く行ったのは、和歌山県が県を挙げて協力してくださったおかげだ。県の皆さんに心からお礼を申し上げたい。
なかんずく、十日間の取材に同行してくださった、山下主幹、仲主査には感謝感激雨あられだ。
仲主査の口癖、言葉の終わりと、途中に入れる、音声「あう〜」を漫画の中で如何に表現するか、その表記の方法に今苦しんでいる。
単純な「あう〜」ではないのだ。「お」、と「あ」の中間母音であり、さらに「あ゛う〜」、あるいは「お゛う〜」のように、喉の奥からうなり声のような音が出る。これを表現するのが実に難しい。
和歌山取材については日を改めて、このページに書く。
14日の夜は、そのまま、大阪に移動して、以前「日本全県味巡り」の大阪取材以来親しくしていただいている、洪(ほん)さんと、吉本興業の野山さんと今回日本滞在中二度目の大阪での食事を楽しむ。
洪さんは、2002年の日韓共同開催のサッカー・ワールドカップ大会以来だが、相変わらず、二十代にしか見えない若さで、最近はますます実業の方で大きく伸びていて、事業の話など伺うと、実に精力的に頑張っておられるので心から感心する。
連れて行っていただいたのは、鶴橋から桃谷の間のややこしい場所にある韓国料理屋「韓味一(かみいち)」。
前もって野山さんに「食べられないくらい出ますよ」と言われていたが実際に出て来た量は驚くべき物で、その前菜の豊富で美味しいこと、驚嘆すべき物があった。
取材のスタッフ一同の慰労も兼ねていたので、W安井にもたいへん気にいってもらって幸せだった。
主菜の一つで出て来た、「鞍下」の部分の牛肉は、あっと驚く大きさで、脂のさしが盛大に入っている。女主人がそれをグリルの上にのせて、はさみで切り分けてくれる。
柔らかで、脂の味がとろりと濃厚で、よそでは食べたことのない肉だ。
最後は参鶏湯(さんげたん)で締めたのだが、突然ここに至って、強烈な化学調味料の味。
それまで、純粋な味だったのにどうしたことか。
一同、それまで美味しい、美味しいと騒いでいたのに、突然沈黙。
あとで、野山さんが悔しがっていた。「当日、女主人一人だけだったので、手が回らず、其の場で作ることが出来ず、通信販売で送る物を、使ったのではないか」という。通信販売で送る物については、化学調味料を入れないと味が足りないと文句を言う人がいるので、化学調味料を入れざるを得ないのだそうだ。
日本を含む、アジア各国は今や完全に化学調味料に毒されてしまっている。
純粋な味覚を失った人々がこんなに増えたと言うことは恐ろしいことである。
化学調味料も、隠し味程度、味を補う程度に入れれば、悪いものではない。
しかし、化学調味料が味の主役なってしまっては、何もかもぶちこわしになる。
化学調味料には不思議な力があって、使うにつれて舌が麻痺していって、使う量をどんどん増やして行かないと満足できなくなる。
そんな問題もあったが、それ以外のものは非の打ち所のない美味しさで、楽しい美味しい一夜だった。
洪さんと話していると、韓国人のエネルギーの強烈さに圧倒される。
日本の芸能界、スポーツ界、文学の世界でも韓国人が活躍しているのも当然だと、改めて痛感した。
天皇も言ったように天皇の祖先には朝鮮の血が入っている。
歴史的に見て、日本人はかなり濃厚に朝鮮の血を受け継いでいるはずだが、今や朝鮮・韓国の勢いは強く、様々な面で日本を圧倒している。
どうも、この辺りで日本も気を取り直して、頑張らないと韓国の後塵を拝することになりかねない。
洪さんは、もともと画家で、素晴らしい豪快な絵を描かれる。
その画家だった洪さんが、お父さんの、韓国食品を日本に輸入する事業を継がれて、実業家として大成長した。東京にも、韓国にも、色々な事業を持たれている。
豪快で、精力に満ちていて、韓国人が日本で様々な分野で日本人の心を引きつける理由が洪さんを見ていると分かる。
洪さんには、戦後の日本と韓国の問題、韓国内での例えば済州島での問題など、色々話していただいた。
日本と韓国の問題も考えさせられる夜だった。
書きかけの、嫌韓・嫌中問題を考えるのに、洪さんに意見を伺おうと思っている。
15日の昼食は、野山さんの案内で、「一芳亭」のシュウマイを、W安井さんも参加して全員で食べに行く。
素晴らしく美味しいシュウマイで、母と連れ合いのためにお土産に二折り、買ってしまった。
伊丹空港で今回の取材班全員解散。
この取材班がいればこそ、「美味しんぼ」の「日本全県味巡り」は書けるのだ。
10日間に渡る、W安井さんのご尽力に感謝して、次の取材のご協力もお願いしてお別れする。
ライターの安井さんは、可愛がっていたリスを取材中に友人に預かって貰っていたのだが、昨夜、一匹のリスが急死したと言う知らせが入ったと言うことで、夜の間にずいぶん泣いたのだろう。朝お会いしたときには、まぶたを腫らしていた。
留守中に可愛がっている動物に死なれたら、これはたまらない。
しかし、取材旅行に連れて来るわけにも行かないし。
私は犬と猫を飼いたくてたまらないのだが、この、死なれたときの悲しさを思うと、もう飼うのはいやだと思ってしまうのだ。
安井さんは、今夜帰ってから、リス君のお葬式をすると言うことだ。
リス君の冥福をお祈りする。
羽田空港には、五時前に着き、鎌倉の実家には六時前に着く。
弟の息子二人も加わり、7人で豚のしゃぶしゃぶを食べ、取材旅行中の話に花を咲かせる。
久しぶりに我が家でくつろいで、明日は、また小学校の同級会である。
こんなに頻繁に同級会を開くのは、珍しいと言われるが、これが私たちには普通のことなので、明日が楽しみだ。
ところで、長い間、私の心にかかっていた「シドニー子育て記」が、12日に発売になった。
日本の教育制度を思い切り批判しているので、反感を買うことは必死だと思う。
東大法学部や、東大に多く学生を入れることで有名な受験校の批判も書いている。
反感どころか、怒りも買うのではないかと思う。
しかし、私が日本の教育制度がいやでシドニーに逃げ出したことは真実なので、仕方がない。
日本の教育制度がいやだからと言って日本を逃げ出すような、おかしな人間がいたと言うこと、どうしてそこまで日本の教育制度をいやだと思うのか。
その辺のところを、不快感を我慢して読んで頂ければ有り難いと思う。
私にとっては、この二十年間の人生の記録でもある。
あまりに私的な内容で、独りよがりのところが多い。
それでも、出来るだけ多くの方に読んで頂きたいと想う。
日本の教育制度を真剣に多くの人々に考えていただきたいからだ。
第一章の終わりの部分を、「子育て記」に追加しておきます。