雁屋哲の今日もまた

2008-10-05

ブルー・マウンテンで自信がついた

 1日に日本から大事なお客様「さ」さんご一行がシドニーに見えて、それ以来ずっと遊んでいただいている。
「さ」さんご一行は、ご長男「が」くん(10歳)、ご長女「ひ」ちゃん(8歳)
 兄上「た」さん、お仲間の「あ」さん、「や」さん、の6人。
 最初の日に、私の大好きなウェストヘッドの国立公園に拉致して、アボリジニーが地面に残した筋彫りなどの遺跡を見て頂いた。
 3日から5日まで、ブルー・マウンテンにお連れして、ブルー・マウンテンの雄大な自然を楽しんでいただいた。
 私は、大変な晴れ男で、雨の予報の時でも私が旅行に行くと旅先はかんかん照りになると言う伝説がある。
 一方「さ」さんは、悪質な雨女だと言うことで、晴れ男と雨女のどちらが勝つか、真剣勝負だったが、最初の10月3日は素晴らしい上天気。ブルー・マウンテンの雄大な景色の見るべき所は全部見て貰えた。ところが、その夜から、雨になり、翌日4日は、昼まで大雨。雨の中を、ブルー・マウンテンのおもちゃの博物館など見て回ったが、午後から雨がやんで、この時期、ブルー・マウンテンの素晴らしい庭を持った家は、観光客に公開していて、それガーデン・フェスティバルというのだが、その一つの素晴らしい屋敷の庭を気持ち良く見ることが出来た。
 3日4日ともブルー・マウンテン地域では一番評判の高いストランを予約することが出来て、「さ」さんのお子さんたちも楽しんでいただけて、充実した楽しい夕食を取ることが出来た。
 5日は、晴れ男と、雨女の力の配分の中間で、くもりだったが、幸いに雨は降らず、ブルー・マウンテンの谷底に降りていって、「さ」さんの長女の「ひ」ちゃんは、ポニーに乗馬して上機嫌だった。
 そのあと、「フェザーデール・ワイルドパーク」という、オーストラリアの様々な動物を集めた動物園のような所に行き、私も初めて見るような様々な動物を見ることが出来て、大人も子供も全員たのしめた。
 そのまま、我が家に拉致して、餃子大会。
 実は、明日6日が私の誕生日で、私の誕生日は餃子大会と決まっていて、明日が餃子大会だったのだが、せっかく「さ」さんご一行がいらしているので、私の誕生祝いを一日早めて、今日、餃子大会を決行することにした。
 私の家では、餃子を包むのに、お客様にも手伝わせることになっているので、「さ」さんご一行は、旅行でつかれているのに、むりやり、餃子包み作業に駆りたてられて、しかも私が一々自分の気にいった包み方を強制するので辟易しておられたが、大人数で包むと実にはかが行く物で。十三人分の餃子を、あっという間に包んでしまって、そのまま、水餃子、焼き餃子、長男得意のローピン大会に突入した。
 何が楽しいと言って、気持ちの合う連中と一緒に餃子を包んで食べることほど楽しい物は他に滅多にない。
 たちまち満腹になり、動けなくなったところで、次女が私のために作ってくれたバースデイケーキの登場だ。
 私の大好きなイチゴのショートケーキをバースデイケーキに仕立てた物で、私は感涙にむせんで人の一倍半の量を食べた。

 余りに幸せで楽しく、今誰かが殺してくれたら喜んで死にたい、と思うほど幸せの絶頂を味わった。
 四人の子供たち全員で私のために、一所懸命、努力して作ってくれた。
 餃子の皮だって、きちんと美味しく作るのは大変なんだ。
 出来合いの皮で作るような餃子は私の家では餃子とは呼ばない。
 小麦粉を練るところから始めてこそ、ぎょうざだ。
 だから、ローピンという我が家独特のネギ餅も出来る。
 これが、私の大好物。
 四人の子供たちが連繋も見事に、全部を作ってくれる。

 今回もう一つ嬉しかったのは、3月18日に手術をして以来、はじめて車で遠出をして、近間とはいえ二泊三日の旅をすることが出来たことだ。
 しかも、ブルー・マウンテンの景色の良い所をお客様にお見せしたいから、結局私自身が車を運転し、要所要所では自分で歩いて案内しなければならない。
 それが、全部出来たのだ。
 もはや、痛み止めは一切取っていない。
 それなのに、3日は3900歩以上歩いた。

 痛いが、我慢できる痛さなのだ。
 これで、大いに自信がついた。
 和歌山県の取材もこれで大丈夫だ。

 しかし、それにしても、3月18日以来、こんなに体を動かしたことは初めてだったので、いやはやは、実につかびれた(つかれてくたびれた、と言う意味)。

 つかびれたけれど、この脚で活動できるという自身がついたのが大きい。
 非常に快適だ。

 夜、長男と、昔のレコード(LP)を聞いた。
 ドナルド・バードとジジ・グライスの演奏で、「I remember Cliford Brown」。
 CDでも持っているのだが、LPの音は、ねっとりときめが細かく情感に溢れていて、もう、五十年代・六十年代のジャズはLPでなければ駄目だ、と何度目かの痛感をした。

 楽しかった。
 自分が何歳になったのかも忘れて、夜遅くまで音楽を聴いた。

 最近iPodなどで、音楽を聴くのが流行っていると言うが、まったく涙が砂に変わるほど情けない。
 あんなものは音楽ではない。
 こんど、じっくり、iPodなど、イアフォーンで聞く音が音楽ではないことをじっくり話してあげて、また大勢の人達から、非難の嵐を浴びることにしよう。

雁屋 哲

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