雁屋哲の今日もまた

2008-09-30

「子育て記」完成!

 ついに完成。
「子育て記」を書き上げた。
 前書き、後書き入れて、全部で十一章。
 400字詰めの原稿用紙で510枚。
 それに、写真が41枚。
 くたびれたなあ。

 やり遂げたという高揚感が湧いてくるかと思ったら、別になんて事もないのがつまらない。
 ああ、物書きとしてすれてしまったのか。
 本当は打ち上げ花火でも打ち上げて、どんちゃん騒ぎをしなければならないのになあ。
 まあ、とにかくこれで、自分自身に対する心の負債は返済できたのかしら。
 今これを書いている背後に流れているのは、Franckの「ヴァイオリンとピアノのためのソナタ」。
 今日はこれでは弱いな。
 もっと刺激的な曲の方がしっくり来る。

 ところで、突然ですが、私は学歴で人を判断します。
 私は東大法学部卒と聞くと、まず一歩退いてしまう。
 東大法学部卒の人間に対する私の評価は甚だしく低い。
 それは、これまで、あまりにひどい人間を東大法学部卒の人間の中に見過ぎたからだ。
 東大法学部卒と聞いただけで、私の心の中では、その人間に対する警戒警報が鳴り響く。
「こいつはやばそうだぞ。気をつけろ」

 この数十年間を振り返って頂きたい。
 汚職をした高級官僚の殆どは東大法学部卒だ。
 今でも忘れられないのは、日本のバブル経済が破裂して、いわゆる失われた十年に突入した1990年代初め、当時の大蔵省の高級官僚が、とても恥ずかしくてここには書けないような接待を受けたり、大蔵省の中枢である主計局の官僚が勤務時間中に事務室で賄賂を受けとったりして、問題になったことがある。
 そもそも、バブル経済を、軟着陸させることが出来ず、一億人以上が乗っている「日本号」という飛行機を墜落大破させてしまった張本人が東大法学部卒の官僚どもだ。
 その日本の一番苦しい時期に、日本そこまで苦しい状態に追い込んだ張本人の東大法学部卒の連中が、下劣な汚職をしていた。

 考えてみて欲しい。
 一つの大学の一つの学部から、これだけ毎年のように汚職官僚を産み出す例が世界中にどこにあるか。それも、官僚として最高の位置にある、一番責任の重い官僚たちがだ。
 日本を背負うべきなのに、日本を食い物にして、破壊している。
 官僚だけではない。銀行でも、大企業でも東大法学部卒がのさばっている。

 日本の銀行が最近、アメリカの金融機関が崩壊したのに乗じてアメリカの銀行を買いに出たりしている。
 ふざけるなよ。
 自分たちが失敗した尻ぬぐいで、われわれ国民は、銀行に預金をしても殆どゼロに近い利子しか貰えない。
 この制度を作ったのも東大法学部卒の官僚たちだ。
 日本の銀行は利子を殆ど支払わずに集めた金を、高い利子を付けて貸す。
 こんな商売、子供でも出来る。
 そうして儲けた金をアメリカに持っていく。
 見ていてご覧。
 東大法学部卒の連中は、実はひどく無能だから、またアメリカにしてやられて、日本の国民から巻き上げた金を、アメリカに取られてしまうよ。

 東大法学部卒がどうしてここまで、程度が低いか、それは彼らが人間としての教養にかけるからだ。
 東大法学部を卒業して、国家公務員試験で高得点を取って、高級官僚になる。
 その連中は、秀才である。
 ただし、受験秀才である。
 一番の問題は、受験勉強は本当の意味での人間の教養を深めるための勉強ではないことだ。
 読者諸姉諸兄、ご自分が高校の時に、日本史、世界史、哲学、文学、この分野でどんなことを学んだか、思い出していただきたい。
 歴史なんて、重要事件の年代か、歴史の節目の人物名か、そんなことしか学ばなかったでしょう。
 それも、教わるのは明治維新までの古いことばかりで、昭和に入ってからの歴史は殆ど教わらなかったのではないか。
 第二次大戦前後のことなど、学校で教わった人はほんのわずかしかいないと思う。
 さらに、哲学、世界史、文学、となったら、単に人名を覚えるだけではなかったか。
 大学の入試なんて、そんな物で合格するんですよ。
 受験勉強でよい点を取ったと言っても、そんな上っ面のクイズの問題みたいな物が出来たと言うだけだ。

 そして、日本の受験勉強第一の教育は、受験が終わったところで教育は終わる。受験校というのは大学受験が目的なんだから、大学受験が終われば、その学校の意味はもうない。その学校の教育はそこで終わりだ。
 大学に入った若者たちも、もう、そこで勉強は終わったような気持ちになる。

 まだ、理科系は、一つの理論の検証をしたり、実験の成果を提出したりしなければならないから、勉強せざるを得ない。
 しかし、文化系は、呆れるほど勉強をしない。
 受験勉強で勉強が終わったと大抵の者は感じているから、自分から更に勉強しようという動機付けが出来ない。意志がない。
 だから、英文学を専攻しておきながら、英語の小説の日本語訳を読んで、それを使って卒論を書いて終わり、などと言う学生が大勢いる。
 日本の大学は、卒業するのは簡単だ。
 東大の英文科を出ても、英語の新聞、週刊誌が読めない、英語で電話もかけられない、などと言うものが大半だ。
 語学力がその程度だから、日本の歴史、世界の歴史、世界の社会状況、哲学、文学、そのような基本的な教養を身につける勉強などしていない。
 文化系でも司法試験や、公務員試験を受ける学生は勉強する。
 しかし、そのような資格試験は、人間としての教養を深める物ではない。

 昭和天皇が、こぼしていたな。
 みんな小才のきく人間ばかりで、本当に優秀な人間はいなかった、と。
 戦争に突入したときの軍部の指導者たちは、全員陸軍大学を優等で卒業した恩賜の軍刀組だ。(優等生には天皇から軍刀が与えられる)
 陸軍大学の成績は、試験で決める。それも、紙の上での模擬戦術が教官の意に沿うか沿わないかで決めた。そんなのが実戦に役に立つわけがない。実際に役に立たなかったのは歴史が証明している。
 日本は他に人物の評価基準を持っていないのか、試験秀才を異常に祟める。
 アメリカに戦争をしかけるような愚かなことをしたのが、その「恩賜の軍刀」組の最優秀とされた軍人たちだ。
 アメリカの実力も知らず、世界における日本の地位も知らず、戦争を始めるなんて、本当に愚かだと思わないか。
 その愚かな軍人を支えた官僚が、東大法学部卒の秀才たちだ。
 日本が贅沢は敵だ、など言っていって、国民が惨めな生活を強いられていたとき、アメリカでは、ディズニーが「ダンボ」という素敵に贅沢で楽しい映画を作っていた。そんな国と戦争して勝てるはずがないことがどうして分からなかったのか。
 軍人だって、外交官だって、アメリカに行ったことがあったはずだ。
 それなのに、実情を掴めないほどおろかだったのだ。それは、基本的な人間としての教養を欠いていたからだ。
 試験秀才は、小才がきく。
 試験で良い点を取る能力はある。賢そうに見える。口は上手い。
 しかし、本当の教養は試験秀才にはない。

 教養がないから、事の善悪も判断できず、日本が一番困っているときに平気で汚職をしたりするのだ。
 十年ほど前、東大法学部を卒業して、農水省に入ったばかりの新人官僚に「どうして雁屋さんは、東大法学部のことを、こんなに悪く言うんですか」と文句を言われたことがあった。
 私は仕方がないから、「君の先輩たちのしたことを見てご覧。私が文句を言うのも当然でしょう。君は、先輩たちのようなことはしないでくれ」と言った。
 あれから十年経ったが、その間にも、東大法学部卒の官僚の汚職は絶えない。

 なぜ、突然東大法学部の事を書き始めたかというと、わずか五日間で昨日国土交通大臣を辞めた中山某と言う人間が、やはり東大法学部卒だったからだ。

 中山某は「成田空港整備への住民の反対を『ごね得』」と言い、
「日本は内向きな単一民族」と言った。
 これは、一人の人間として信じられない言葉だ。
 成田に空港を作ると突然政府が決めた後、どれだけ多くの人間が苦しんだか、その歴史を知らない。
 知らずに、住民を貶める発言をする。
「ごね得」だなんて、本当に下品な言葉を使った物だ。
 また、「日本は単一民族」だなどと言うのは、日本史をきちんと学んでいないからだ。
 全く無知としか言いようがない。
 中山某は天皇が自分の祖先には朝鮮系が入っている、と言ったのを聞かなかったのか。桓武天皇の母親高野新笠は百済王族の末裔であると続日本紀にはっきりと書いてある。
 中山某は天皇を侮辱した。
 私は天皇制を批判するが、天皇を侮辱するような恥ずかしいことは死んでもしない。
 徳川幕府の親玉は家康を始め「征夷大将軍」の官名を朝廷から貰って、その権威の基に全国を支配していた。
 その「征夷大将軍」とは何のことか、中山某は知らないだろうな。
「征夷」とは、「夷」すなわち、「アイヌ」を征服すると言う意味だ。
 昔、朝廷は東国を支配しているアイヌと戦うために、軍隊を派遣し、その将軍に「征夷大将軍」という言う称号を与えた。
 軍人の中で一番、位が高く、だから、それ以後、幕府を開く武士は「征夷大将軍」の官名を貰ってその権威によって国を支配したのだ。
 それほど、当時は大勢のアイヌ民族が日本にいたのだ。
 いまでも、日本各地にアイヌ語の地名が沢山残っている。
 中山某は日本に住んでいながら、そんなことも知らないのだ。
 さらに、平安時代特に名高い征夷大将軍に坂上田村麻呂という人物がいたが、この人物は、前漢の王家が日本に移住したその子孫だと言われている。
 中国人だったのだ。
 坂上田村麻呂はその後大変に英雄扱いされて、国に異変が起こると、坂上田村麻呂の墓は鼓を打つが如く、雷が轟くが如く、音を立てて揺れ動いた、と言われている。
 その国家的英雄も、中国人だったのだ。
 それも、中山某は知るまい。

 この中山某が東大法学部卒だ。
 東大法学部卒の人間が如何に教養がないか、見事に示してくれている。
 東大法学部卒の中で、特にこの中山某だけ教養がないというわけではない。
 東大法学部卒の教養程度はこんなものなのだ。
 中山某は「日教組をぶっ壊せ」と言った。
 私も、日教組には言いたいことが沢山ある。
 しかし、日本には労働組合を組織する自由がある。基本的人権として認められている。
 その労働組合をぶっ壊せとは何事か。
 基本的人権を、認めないことではないか。
 中山某の言っていることは憲法に違反している。
 日教組をぶっ壊す前に、これだけ悪質な人間を次々に輩出する東大法学部をぶっ壊さなければならない。
 東大法学部は日本の恥だ。

 こんな下衆っぺたを自分たちの代表として選出した宮崎県人は間違いを犯しましたね。
 間違いは直ちに正しましょう。今度の総選挙で、またこんな男を選出したら、宮崎県は、世界の恥さらしですよ。
 憲法に違反する人間を、自分たちの代表に選出したら、自分たちも憲法から守って貰えなくなるんですよ。

 勿論、東大法学部卒の中にも、良い人はいるでしょう。
 しかし、悪いのが多すぎる。
 東大法学部卒で良い人間と言うのは、生まれつき非常に心が美しく、しかも強い人に違いない。
 これだけ、悪い連中が集まっている学部を卒業してなお良い人間でいられるとは、すごいものだ。

 繰返すが、一つの大学の一つの学部からこれだけ悪質な国家的な犯罪人を輩出する例は世界中に他にない。
 東大の文一の学生諸君、今からでも遅くない、転部しなさい。
 さもなければ、本当の教養を身につけるべく猛勉強をしなさい。
 東大の学生の知的水準は、欧米の一流大学の学生に比べて、非常に低いと言うことを自覚して、勉強し直して貰いたい。
 そして、君たちの醜悪な先輩たち、中山某のような人間にならないように、しっかりした正しい心を持って貰いたい。

 ああ、あ。
 折角「子育て記」が完成した目出度い日だというのに、こんないやな文章を書いてしまった。
 でも、「子育て記」にも、同じようなことを書いているんですよ。
 日本の受験勉強第一の教育制度に対する批判ついでに、東大法学部についても書いています。
 であれば、今日の「日記」は、「子育て記」の続きみたいな物だ。

雁屋 哲

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