竹島(独島)問題 その3
私は「日本全県味巡り」の一つとして、第98巻に「長崎編」を書いた。
その中で、対馬を訪れ、朝鮮通信使の話を書き、いかに明治維新以前の日本は朝鮮(韓国)を文化的に高く評価し、こちらから頼んでまで、友好的な交流を続けていたか、改めて、日本人に知って貰うことに努めた。
また、2005年には4万人弱の韓国人観光客が対馬を訪れ、日韓友好の窓口になっていることを強調した。
こう言う歴史的な事実を書くだけで、嫌韓派の人達は、あれこれ難癖をつけて来るのだが、そんなおかしな人達はほんの一部で、私の読者の大多数は、真面目に読んでくれて、これまで朝鮮通信使のことを知らなかった、書いてくれて良かった、と言う声を色々なところで聞いた。
私の書いた「美味しんぼ」長崎編の対馬に関する話は、日本人の中に確実に韓国に対する好感を強めた。
しかし、その対馬で、私が顔を背けざるを得ないようなことを、韓国人がしてくれた。
何があったのか、2008年7月23日の長崎新聞を引用する。
中学社会科の新学習指導要領の解説書に竹島(韓国名・独島)の領有問題が初めて記述されることを受け、韓国の退役軍人ら21人が23日、対馬市役所前で、日本側に謝罪と撤回を求める抗議行動を展開した。これに反発する一部市民も駆け付け、現場は一時怒号が飛び交うなど騒然となった。
韓国側は「竹島は慶尚北道に所属している」と主張しており、「大韓民国傷痍(しょうい)軍警会」の鄭政浩(チャン・ジョンホ)大邱支部長(63)や慶尚北道の会員らが21日から来島していた。
抗議は午前10時から20分間、市役所前の歩道で実施。「独島は韓国領土 対馬も韓国領土」と主張する横断幕を掲げ、同様の主張を書いたTシャツを着用。日本に謝罪と撤回を求める声明書を呼み上げたり、拳を突き上げてシュプレヒコールを上げた。
このうち6人が韓国旗を身にまとい、バリカンで頭を丸刈りにした。また、一部メンバーが指先をかみ切り、流れ出た血で韓国旗に「独島は私たちの土地だ」とハングルで記し、抗議の意志を示した。
一方、一部の市民が道路の反対側で日本国旗を掲げ、「韓国は間違っている」「対馬は日本領土だ」「帰れ」など抗議した。現場は報道陣が取り囲み、怒号が飛び交うなど騒然とした雰囲気に包まれた。
見物していた市内の30代の自営業男性は「なぜ対馬に来なければいけないのか意味がわからない。本当に抗議したければ国会議事堂など中央でやってほしい」と困惑した表情で話した。
抗議団は対馬市役所敷地内での抗議行動を22日に市に申し入れたが、市は拒否していた。財部能成対馬市長は「対馬が韓国領土というのはあり得ない。間違った歴史認識は撤回してほしい。竹島問題は国の問題であり、市では対応しようがない。両国間で早期に問題解決され、未来志向の日韓友好交流への進
展を期待する」とのコメントを出した。抗議団は同日午後、比田勝港から出国する予定。
対馬市では、8月に開かれる日韓交流イベントの朝鮮通信使行列で「正使」として招いていた釜山市影島(ヨンド)区庁長が竹島問題を理由に欠席を伝えており、外交問題の波紋が国境の島対馬で続いている。
この韓国人たちがしたことの問題点を挙げていく。
- この人たちは観光ビザで入国した。政治的な行動を取るのに観光ビザで入国するのは、不法である。
- 上の問題とも関連するが、日本ではデモをする場合には、警察などに届けを出さなければならない。デモをするのは自由だが、国際的にどの国でも、デモに関する法律がある。
韓国人なら日本の法律を破って良いことにはならない。 - 竹島の問題をなぜ対馬で持出すのか。
竹島問題は、日本政府と韓国政府の問題である。
デモをするなら、東京の国会議事堂、あるいは自民党本部で行うべきだ。
日韓の友好関係を深める努力をしてきた対馬でこんな破壊的なことをしたのは韓国にとって損失となる。 - 対馬が韓国領であるというのは、昨日も書いたように、全くの間違いである。
- 人前で指を噛み切って血を出し、それで字を書くなど、そんな野蛮な行為を認める国が世界中にどこにあるのだろうか。
人前で指を咬みちぎったり、頭を丸刈りにしたり、日本人の感覚からすれば野蛮で暴力的としか思えないことをして、日本人に自分たちの意見を伝えるためのデモであったはずが、返って、日本人に反発心を抱かせてしまった。まるで逆効果だ。
しかも、この韓国人たちの行為に対して、韓国からは非難の声が上がらない。
この、元軍人たちは英雄気取りだ。
私は非常に悲しく思った。
「日本全県味巡り」「長崎編」で日韓の友好を願って書いたことが裏切られたと言う思いがまず第一。
韓国人は、一切の話し合いを認めず、暴力で相手に迫って自分の要求を呑ませようとするのか。
日本が、百年前に、暴力で韓国を併合したことは大きな罪だ。
では、今度は韓国が当時の日本がしたのと同じことを日本に対してしても良いというのか。
それでは、人間として何が正しいかを議論することが出来ない。やられたからやり返す権利がある、という、何千年も前から続く暴力による争いの連鎖をこれからも、広げていくことになる。
韓国は、日本に併合され植民地にされた、と言う経緯から、日本に対して道徳的な非難をする権利があった。
日本には、韓国に対して道徳的な負い目がある。
しかし、韓国が自分たちは日本に対して道徳的に優越していると思いこんで、このような乱暴な、非理性的な行為を続けるなら、その道徳的に優位な立場は消え去ることを認識して欲しい。
そして、第二に、落胆した。
これは、対馬に限らず、竹島問題が起こって以来の韓国人の一連の行動に対する落胆である。
しかし、誤解して貰いたくないが、これは韓国人を拒否し、突き放す意味での落胆ではない。
親しい友人が何か間違ったことをしたときに感じる、落胆、である。
友人であるからこそ感じる落胆なのだ。
以前、銀座のクラブで友人たちと酒を飲んでいたときに、その店に身なりの良い、如何にも金回りの良さそうな男が入って来た。その店の常連らしく、態度が大きい。年齢は六十くらいだった。店の女性たちも、大事に扱っている。
しかし、その男のすることが、無作法で下品だ。
見ていて不愉快になる。
そこで私は友人に言った。「どうして、あの歳で、あんな下品なことをするんだろう」
それに対する友人の答えは、実に簡潔で、ことの肯綮に当たるものだった。
友人は言った。
「あの男は、ちゃんとした友人を持っていないんですよ。ちゃんとした友人がいたら、そんな下品ことをするなと忠告するはずでしょう」
私は友人の言葉に、感心した。
良い友人は、相手の間違いをきちんと正してくれる存在なのだ。
相手が間違いを犯しても、その間違いを正しもせず、相手の言うとおりにさせておくことは、結果的に友人を駄目にすることだ。そして、友人が駄目になると、そう言うえせ友人はさっさと姿を消す。
私の友人は、私の間違いを正してくれる。私は良い友人を持ったと幸せに思った。
私は韓国と友好関係を深めたいと心から願っている。
私自身、韓国に対して友情を抱いている。
韓国人を友人と思っているから、こうして苦言を呈しているのである。
韓国人を、諦めたら、こんな事は書かない。
私は韓国人に、もっと理性的になって貰いたいと思う。
感情の激するまま、乱暴な言動に及ぶことは、決して韓国のためにならない。
日本が韓国を併合して植民地化したことを、非難する権利は韓国人にあるが、その件は、全てに有効な切り札ではない。
また、やたらに振り回しては切り札としての価値が無くなる。
竹島問題は、純粋に二国間の領土問題であって、話し合いでしか解決のつかない問題だ。
この問題に、日本の韓国併合問題を絡ませるのは、間違いだ。
日本の韓国併合という歴史的な問題と、領土問題とは、無関係だ。
竹島問題を話し合おうというだけで、韓国に対する侮辱であるとか、日本が竹島を奪おうとする陰謀だと言ったり、韓国人でこの問題を国際的な機関で裁定して貰おうという人間がいたら、その人間は、日本の韓国併合の道を決定づけた、1905年の第二次日韓協約を結んだときの、韓国の親日派、李完用と同罪だと極め付けたりするのは、余りに感情に走りすぎていて、結果的に竹島問題の解決を困難にするものだ。
私は、以前にも言ったように、排他的経済水域(EEZ)さえ、円満に日韓両国で運用するように決めさえすれば、竹島を韓国領土とすることは問題ないと思っている。
しかし、今の、韓国の余りに非理性的な態度を見ると、その考えを保留せざるを得ない。
このような態度の韓国に、韓国の言うがままに竹島を渡すと、今度は日本国内で、韓国に対する激しい反感が起こる。
それは、両国の友好のためにならない。
韓国は、あの島とも言えない小さな岩礁に韓国人の誇りの全てが掛かっていると言うのか。
韓国人の誇りは、あんな小さな岩礁に代表されるようなちっぽけなものなのか。
まさか、そうではあるまい。
繰返すが、竹島問題に、日本の韓国併合という歴史問題を絡ませるのは正しくない。
竹島が、日本の韓国併合の象徴だ、などと言うのは、余りに感情的で、世界に通用することではない。
竹島問題は、話し合いでしか解決出来ない。
韓国が、竹島に対してそこまで深い思い込みがあるのなら、話し合いできちんと解決するべきだ。
如何なる国際紛争も、感情的な行動で解決した試しはない。
韓国が感情的になって話し合いを拒否すれば、日本人も、それに引きずられて感情的になる。
解決は遠のくばかりで、しかも、友好関係は破壊される。
大体、今、日本と韓国は揉めているときではないのである。
中国がますます強大になっていき、日本は没落の一途をたどり始めている。
韓国も、経済状態が思わしくない。
こんな時に、日本と韓国が揉めていては、何も良いことはない。
私は、日本と韓国が協力し合えば、世界的に強力な存在になりうると信じている。
日本の緻密さ、韓国の馬力、この二つを合わせれば、怖いものがないくらいだと思う。
そもそも、日本は韓国とうまが合うのである。
その証拠に、日本の芸能界、スポーツ界、文芸の世界、で活躍している在日韓国人の数は大変なものになる。
文学の世界でも、芥川賞、直木賞を取った人間の中に、在日韓国人が何人もいる。
野球、ボクシング、プロレス、など日本人に人気のあるスポーツも在日韓国人がいなかったら今の隆盛はあり得ない。
NHKの紅白歌合戦も、在日韓国人がいなかったら成り立たないと言われている。
俳優、芸能人の中にも韓国人が大勢いる。
小池一夫先生と共に劇画の原作の創始者として有名な梶原一騎先生も(漫画原作者として、小池一夫、梶原一騎のご両人は、先生とお呼びしないと気がすまない)「韓国人はスター性がある」と言っていた。
日本人は、韓国人に引かれるというのである。
正にその通りであることは、今取り上げた、芸能界、文芸界、スポーツ界の実情を見ても明らかだろう。
韓国人も、日本のテレビ番組、アニメ、漫画、などを好んでみる。
互いに、相手のことを気にいっているのである。
それを、歴史的なこと、政治的なことが、邪魔をして、お互いにぎくしゃくした感情を抱いている。
こう言う馬鹿げたことは止めにして、日本と韓国は単に友好関係を深めるだけでなく、経済的に政治的に協力して世界に対していかなければならない。
そうしないと、日本も韓国も、これからの世界で生き延びられない。
そのためにも、今度の竹島問題を、韓国側は感情の激するまま、行動することなく、話し合いで解決するように、考えて貰いたいのだ。
私は韓国を大事な友人だと思っている。
友人の忠告には、韓国人は度量を持って耳を傾けて貰いたい。
日本人も、韓国人の感情を察して、友好関係を深めるように行動して貰いたい。