雁屋哲の今日もまた

2008-06-17

フランス語の発音について

 最初に、昨日書いたフランス語の件で、ある読者から、いろいろ有意義な事を教えていただき、私の誤りも指摘していただいた。
 まず、その誤りを正したい。

 フランス語の広い「イ」と狭い「イ」と昨日書いたのは間違い、前田陽一先生が仰言ったのは、「日本語の『イ』はフランス語の『イ』より、広くてゆるい。フランス語の『イ』の音は、くちびるを横に大きく引き、上下の歯の間隔を1〜2ミリくらいに狭めて、鋭く発音する。フランス語の『イ』は日本語の『イ』より狭い」と言うことだったことを、思い出した。
 広い、狭いの比較は、フランス語の中でなく、日本語とフランス語の間の比較だった。
 昨日の記事もその様に訂正しておきます。

そのとき、前田陽一先生は仰言った。「フランス人の口元は緊張している。だから、ピエール・ランパルのようなフルートの名奏者が出る。日本人がフランス語を喋るときには、まず、口笛を吹くとき以上にくちびるをとがらせ、次に思い切りくちびるを横に引く。この運動を数回繰り返すと、良い発音が出来る」
 確かに、この準備運動は、英語の時も役に立つ。
 日本人は言葉と言葉の間のつなぎや、何気なく声を出すときに「アー」という。
 しかし、フランス語や英語を母国語とする人間は「ウ」と「エ」の中間、あるいは、「オ」と「エ」の中間の、いわゆるあいまい母音で声を出す。
 日本人の方が、普段喋るときに口の周りを緊張させないので、一番楽な音を出そうとすると「アー」となる。口の周りを緊張させているフランス語や英語を母国語とする人間にとって一番楽な音は、あいまい母音となるのだ。
 そこの所が、我々日本人と、フランス語、英語を話す人間との身体にまで及ぶ違いなのだろう。

 私は、フランス語に限らず、外国語の発音を学ぶには、一つ一つの発音について、くちびるの形、舌の位置、息の吐き方、など、まず解剖学的に図式的に頭に入れることが大事だと、その時に痛感した。

 その方には、pain(食べるパン)とlapin(ラパン、うさぎ)が、「パン」という同じ音を持つことを使ったフランスの謎々を教えていただいた。これは語呂合わせに似た言葉の遊びで、大変に面白い。

 また、その方はフランス語の詩が韻を踏むことを取り上げて、それも語呂合わせと同じような物ではないかとも書かれているが、漢詩も同じだが、それは、詩の一節ごとの最後の音の響きを合わせることで、中国人やヨーロッパ人は快感を感じるのであって、語呂合わせとは別のものだと思う。

 このような貴重なご意見を頂いて、本当に有り難いし、嬉しい。
 私は、このページは自分のために書いている。
 ちょっと、「美味しんぼ」を休んでいるので、その間に物を書く能力が落ちるとまずいので、訓練としてこのページを書いている。
 物書きも、ピアニストや、運動の選手と同じで、練習を怠るとたちまち腕がさび付く。

 私は子供の頃からピアノを弾いていたが、1972年に親の家を出てアパート住まいをするようになってから、ピアノを弾くのをやめた。
 大変に貧乏なアパート住まいでピアノなんか持ち込めなかったので、練習することが出来ない。
 しばらく経って実家に帰ったときに、ピアノを弾こうとしたら、(酔っぱらっていたせいもあるが)間違えてばかりだった。
 それで厭になって、以来、ぷっつりとピアノを弾くのをやめた。
 もっとも、グレン・グールドは全然ピアノを弾かない日が何日もあるくらい練習をしなかったそうだが、それは天才の話で、私のような凡人はそうは行かない。
 もともと、自分はからっきし下手なのに人の演奏について能書きを垂れる方だったので、自分のピアノのひどさに愛想が尽きたのだ。

 物を書くことも、ピアノみたいになっては困るから、こうして毎日書く練習をしているのである。
 書く以上出来るだけ大勢の人に読んで貰いたい、というのが職業として物を書いてきた人間の(純文学と違って出来るだけ多くの読者を獲得しなければならないマンガの原作者だから)物書き根性であって、読者の反応がないと「誰も読んでいてくれないのかな」と闇夜に空鉄砲を撃っているような空しい、淋しい気持ちになる。

 それが、今回のような有り難いご意見を頂くと、本当に嬉しくなる。
「ああ、読んでいて下さる方がいる。しかも、こんな有意義なご意見まで頂いた。有り難いことだ」
 とすっかり、良い気持ちになってしまった。

 いくら、自分の訓練のための書いていると言っても、こうして読者からの反応があると、私も張り切ってしまう。
 これからも、どんどん書き続けようと思う。

雁屋 哲

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