雁屋哲の今日もまた

2008-06-10

時の記念日

〈「美味しんぼの日々 中華料理」を追加しました〉

 今日は6月10日、時の記念日。私のすぐ下の弟の誕生日だ。
 子供の頃、他の何とか記念日というのは学校が休みになるのに、自分の誕生日である時の記念日が休みにならないのは不公平だ、と弟は怒っていた。
 そりゃそうだな。最近海の記念日なんて休日も出来た。船舶振興協会の圧力かしら。
 時計産業振興協会(そんな物、本当にあるのかね)もひとつ頑張って、私の弟のために、時の記念日を休日にするようにあちこちに働きかけて貰いたいものだ。
 いつも、時間に追われてせかせかしている現代人に、時の記念日で休みを与えるなんて、ちょっと粋だと思いませんか。

 時間に追われると言えば、私は長い間物書き稼業をしているが、この仕事をしている人間にとって一番厭な言葉は「締切り」という奴だろう。
 先年亡くなった、吉村昭氏は、私が尊敬愛読する作家だったが、非常に真面目な人で、どんな作品も締切り前に出来上がっていたという。
 新聞連載小説など、連載が始まるときには最後まで全部書き上がっていた、と言うから驚きだ。
 私の担当編集者は、私が締め切りを守らないので、みんな苦しんできた。
 吉村昭さんの話など、私の担当編集者に絶対聞かせてはならないことだ。
 しまった。このページは、私の担当編集者者たちも読んでいるな。
 編集者諸君、吉村昭さんの話は極めて特殊な例だから、私と比べないで下さいね。こんなことはすぐに忘れてね。

 ただ、締切りの効用という物もある。
 締切りがなかったら、私のような怠け者は絶対に作品を仕上げられない。
 締切りがあって、編集者が脅迫してきて初めて作品を仕上げる強い気持ちが湧いてくるのだ。
 それが証拠に、いつかは書こう、などと思っていた多くのことも書かず終いで終わっている。
 色々と書こうと思った物の覚え書が書いてあるノートが、私の仕事机の上の棚に並んでいる。
 それを時々取りだしてひっくり返してみて、「あ、これは書かなきゃ」などと思うが、思うだけで書き出さない。
 ああ、私のノートには、書かれないままの名作が沢山眠っているのだ。(へ、へ、へ、書いてないのだから本当に名作かどうか分からない。分からなければ、そう言ってしまった方の勝ちだね)
 やはり、締切りという時間に追われることが必要だ。
 鞭がなければ走れないなんて、競馬馬にも劣る人間だな、この私は。

 おお、リハビリに行く時間になった。
 こう言うことで時間に追われるのは、生産的じゃないなあ。
 いや、活動力を取り戻すことは生産につながる。
 生産的なのか。
 そう、思って、また厳しいリハビリで悲鳴を上げにいこう。
 ああ、辛抱我慢、辛抱我慢。

雁屋 哲

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