雁屋哲の今日もまた

2008-06-05

因果は巡る

〈「雁屋哲の食卓 巨大マッシュルーム」を追加しました〉

 これから、針の治療に行くのだが、してくれるのは中国人の医師である。
 オーストラリアの医療制度の細かいところは良く分からないが、中国人の漢方医は、こちらの普通の医師とは立場が違うらしい。
 西洋医学的なことは一切しない。
 漢方薬の処方と、針治療だけである。
 それでも、毎日満員で、待ち時間も結構長い。
 また、この漢方薬の種類と量が半端ではない。日本でも漢方薬を貰ったことがあるが、一回あたりの量は、わずかなものだった。
 ところがこちらで呉れる漢方薬の量は、日本で言えば中型のやかんの大きさの土瓶一杯になるほどある。その内容も、訳の分からない木の皮、木の葉、木の幹、木の実、白い石灰質のもの、など、不思議な物ばかりだ。

 ある時、他の人の薬を処方しいるところを見たら明らかにセミの抜け殻が入っている。確かめたら、やはりセミの抜け殻で、それが沢山ある。
 一体何に効くのかと尋ねたら、体のかゆいときに効くという。
 セミの抜け殻とは恐れ入った。
 しかし、私が今貰っている、鹿の角というのも我々日本人の常識からすれば分からない。
 牡蛎の殻は胃の病気に効くと言う。
 セミの抜け殻、鹿の角、牡蛎の殻、そんな物の効能を一体誰が最初に発見したのだろうか。
 中国四千年の歴史というが、長い間人体実験を重ねた結果、効き目が証明されているわけだから、我々はそれを有り難く服用すればよいわけだ。
 これまで、実験台になってくれた中国人よ、有り難う。

 針も、日本のように、ちくちく浅く刺すのではなく、深く、びりびり感じるまで刺して、三十分ほどそのままにしておく。
 結構辛い。時々、医者が戻ってきて、針をくるくる回す。その度にびりびり感じる。ちょっと怖い。
 さらに、テニスボール大のガラスの球の内部にアルコールを塗って火をつける。
 その火を消してすぐに私の背中に押しあてる。火が燃えて、球の中の酸素が無くなって、気圧が低くなっているので私の背中にその球が吸い付く。
 かなりの圧力で吸われているのを感じる。
 それも、三十分くらいそのままにしておく。
 球を三個も四個もつけられると、背中に大きな甲羅を背負った様な気持ちになる。
 かなり、吸引力が強いので、痛いほどだ。

 この、針と、ガラス球を合わせた治療が効くようだ。
 日本にも一人私の体に合う針治療をしてくれる先生がいたが、もうお年だから、治療はやめておられるのではないか。
 こちらの、漢方医の、打った針をそのまま長い時間置いておくというのは、日本の針治療とは違うようだ。

 この針治療も、受ける度に、この経絡なんてものを発見して、そこを針で刺激する治療法を産み出した中国四千年の文化はすごいもんだ、と感心する。

 それに、日本で漢方薬を飲もうとすると、効果が出て来るまで二三ヶ月続けなければ駄目、というが、この漢方医の薬は三日で効果が出る。だから、薬も長くて一週間分しか出さない。
 最初は三日分しか呉れなかった。
 素晴らしい即効力なのだ。
 胃の悪かったときなど、二日目で、あれっ、と不思議に思うほど良く効いた。
 日本で抱いていた漢方薬についての印象が完全に変わった。

 問題は、最近中国製の食品や医薬品の危険性があちこちで指摘されていることだ。
 漢方薬の材料は全て中国から来る。もし変な物が入っていたら大変だ。
 薬のつもりで、毒を飲むことになる。
 そこで、ちょっと敬遠したいところだが、手術後の体力を回復するためには仕方がない。医者を信じて、漢方薬を飲み、針治療を受ける。
 何のことはない、こんどは私が、実験台になる番か。
 因果は巡ると言うから、仕方がないな。

 では、針治療に行ってきます。
 昨日はリハビリ、今日は針、そして明日はまたリハビリ。
 なんと言う人生なんでしょう。

雁屋 哲

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