雁屋哲の今日もまた

2008-04-05

焼き干し

 私がこうして毎日日記を更新すると言ったら、小学校の同級生の一人が、そんな大変なことはやめておけ、と言った。私は、後ほど説明するが、ちょっとした手術を受けて、三十一日に退院してきたばかりで、友人は、こんなことに力を使うよりリハビリを第一にしろと忠告してくれたのである。
 持つべき物は、友人で、親身になって心配してくれる。
 しかし、私にとって、こんな日記を更新することは、何も負担ではないのである。
 物書きにとって、文章を書くのは病気というか、第二の天性というか、書くなと言われても書かずにいられないのだ。高校生の時から、色々と書き始めて、それ以来毎日何か書かずにはいられない。
 むしろ辛いのは、このようなインターネットのページの場合、長すぎると読む方が迷惑するから、余り長く書くなと、インターネットに詳しい人達に言われていて、思い切りたっぷり書けないことだ。
 漫画の原作を書くのにも、とにかくページを沢山くれ、と編集部に頼み込んできた。生まれつきしつこい性格のせいか、頭が悪いせいか、短く、すっきりと切上げられない。くどいのである。
 言いたいこと、書きたいことは胸の中に山ほどたまっていて、毎日どれだけ書いても、書きたいものが減ることがない。
 問題は、私の書くものが面白いか面白くないかであって、そこの所は、1973年以来物書き商売を続けて来ても、まだ分からない。
 自分で面白いと思うものの大半が、読者に面白くないと思われてきたのが実情だ。これだけ長い間漫画の原作を書いてきても、当たったと言えるのは三本しかない。
 実に厳しいものである。
 だから、この「美味しんぼ日記」も、本当にこのページに立ち寄ってくださった方々が、何度も来て下さるように面白くしたいと思うのだが、果たして、どうなりますことやら。

 今日は私の昼食をお見せしよう。
 私は、昼は基本的に麺類と決めている。
 うどん、そば、スパゲッティ、などが代る代る出て来る。
 ここにお見せするのは、うどんである。

うどん

 麺は、オーストラリア製の有機小麦で作った乾麺、上に乗っているのは、焼いたネギ、ちくわの薄切り、焼いた油揚げの薄切り。
 何の変哲もないが、実は、この出汁は、靑森の焼き干しと、北海道南茅部町の昆布で取ってある。
 焼き干しと、昆布で取った出汁は最強である。素晴らしく旨い。うどんやそばのつゆにするには無敵だ。
 焼き干しは、取れたての鰯、アジの頭と内臓を取り除き、串に刺して焼いて、干す。(「美味しんぼ」第百巻 日本全県味巡り、靑森篇に詳しく書いてあります)
 煮干しは、頭も内臓もまるごと煮る。煮るから味が抜けるし、内臓の苦みがつく。その点、焼き干しは、頭と内臓を取って焼くので、内臓に苦みは残らず、旨みも抜けない。(アジの焼き干しは、内臓は取るが頭は取らない)
 ご覧下さい。

イワシとアジの焼き干し

 ボールペンに比べると小さいのが分かるでしょう。これを一つ一つ手で仕上げるのだから大変だ。
 それを、昆布と一緒に出汁を取ると、こうなる。

出汁を取った後

 しかし、昆布も北海道の南茅部町の昆布だ。これを捨ててしまうの勿体無い。そこで、鎌倉から来ていた母が、出汁を取ったあとの焼き干しと昆布を刻んで、酒と醤油で煮てくれた。すると、おお、素晴らしい佃煮になるではないか。

焼き干しと昆布の佃煮

 御飯の友として最高。酒のつまみとして上々。
 問題は、この出汁で作ったうどんの汁は、余りに美味しいので、どうしても全部のみ干してしまいたくなることだ。塩分摂取過多が怖いな。

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雁屋 哲

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シドニー子育て記 シュタイナー教育との出会い
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