雁屋哲の今日もまた

2008-05-01

北京の屋台

 ひゃああ、もう、五月になっちゃった!
 光陰矢の如しと言うが、正に、Time flies!(英語で言っても日本語で言っても、この恐ろしさは変わらないね)
 もうじき六月で、うかうかすると七月八月が過ぎて、あっという間に九月十月十一月と飛びさって、気がつくと十二月で、では良いお年を、なんて言うことになる。本当にもうそろそろお正月ですよ。年賀状の準備は出来ましたか。(って、それは早すぎるか)
 ああ、例年と少しも変わるところがない。
 変わるところと言えば、確実に老衰が進行していくことだ。
 今朝も鏡を見て驚きましたね。鏡の中に、見たこともない老人がいやがるんだ。で、私が右手を上げると、その老人も向かって右の手を上げやがる。にやっとしてみると、その老人も醜い笑いを浮かべやがる。あっかんべーをすると、その老人もあっかんべーをする。
 右手で鼻をいじるとその老人も、向かって右の手で鼻をいじりやがる。目をつぶると、その老人は見えなくなる。目を開くと、またいやがる。
 ああ、こんちきしょう!
 その、醜い汚い老人は、私自身に他ならないんだ。認めたくない真実。アル・ゴア風に言えば、「不都合な真実」だよ。
(もっともねえ、大変な美男子が、歳を取って昔の美しさを失ってしまったな、と嘆くのは分かるけれど、私みたいに若いときから醜男だった人間が、歳を取って醜くなったと嘆いても、他の人間から見れば、別に変わらないよ、同じじゃん、と言うことになるんでしょうね。ああ、くやしい)

「不都合な真実」と言えば、中国政府の今の心境だろうね。
 オリンピックで中国の国威発揚を計るところが、逆に、チベット問題が起こって世界中に、反中国感情を植え付けてしまった。
 一番まずかったのが、あの聖火リレーだね。
 青い服を着た屈強の男たちに聖火の周りを走らせ、聖火の妨害を防ぐと言うのだが、あれは、他国の国家主権を侵す物だろう。
 治安維持に係わるのはその国の警察であって、なんでもって、中国の人間が外国の治安取締をしていいってえんだよ。
 中国の警察は世界の警察だというのか。
 あの連中凄かったね、オーストラリアでも、警官が青服の男たちが聖火に近寄らないように必死に押さえようとするんだが、大男揃いで有名なオーストラリアの警官より、青服の中国人の方がでかいんだから驚いた。あの連中は中国全土から選ばれた特に優秀な警官と軍人だと言うことだ。日本では、あの青服隊の連中について曖昧な呼び方をしているが、英語圏の国々では、Paramilitary(準軍事的組織の一員)とはっきり書いているよ。彼らは軍人なんだ。
 また、その表情が、固くこわばっていて人間らしさが一切無い。
 良く訓練された警察犬に、「この品を守れ」と命令すると、他の物に眼を呉れず、その品に全ての注意を注ぎ続け、そばに近寄る人間には猛然と牙をむく。
 中国のあの青服隊の人間達には、その様な印象を受けましたね。
 あれは、とても中国の印象を壊した。中国は怖い国だとあれを見た人間はみんな感じただろう。

 更に凄かったのが、韓国での中国人たちだ。
 在韓中国大使館から支給されたという中国の国旗を掲げた中国人の大群衆がソウルの街を埋め尽くす。
 そして「中国、加油」をわめく。「加油」とは頑張れという意味なんだそうだ。油を加えると確かに火は余計に燃えますな。漢字の本家の人間の漢字の使い方には学ぶべきことがあるね。
 その、中国人の大群衆が、韓国の警察の制止に従わず、チベット問題に抗議する人間、中国が北朝鮮から逃げて来た人間を北朝鮮に送り返すことに抗議する人間、を見つけると、人津波を起こしたようにどーっと押しかけていって、旗の棒を投込んだり、ペットボトルを投込んだり、石を投げ込んだり、更には殴る蹴るの乱暴狼藉。それが、全てテレビの画像に収められているからたまらない。

 どうして中国人は他国の首都で、このような傍若無人の振る舞いを平気でするのか。
 昔、朝鮮は中国の冊封(さくほう、中国の王朝が、周辺の諸民族の国王に称号を与えること)を受け、中国の属国となっていた。それで、今でも中国人は韓国・朝鮮を自分の属国同然に考え、あのような国際的な礼儀を欠いた無法を働いたのだろうか。
 とにかく、あのソウルでの中国人たちの乱暴狼藉はただ事ではなかった。
 この、聖火リレーで世界中に、中国人は恐ろしいという印象を深く植え付けてしまった。それだけでなく、いったいそこまで中国人が感情的になるチベット問題って何なんだろうと、それまでチベット問題について知らなかった人間までも、インターネットなどで、調べると、あっという間にチベットでの中国の残虐無比な行状が目の前に広がることになる。

 中国政府は、この聖火リレーで大失敗を犯したと思う。
 私だったら、まず、パリあたり聖火リレーの妨害が予想されるところに、中国国旗ではなく、オリンピックの旗を持った中国人を大勢配置する。そこで、聖火リレー妨害が起こったら、中国人たちは、それに対する行動は一切取らず、世界中のメディアが集っている前でさめざめと泣いて見せて、「私達は、平和にオリンピックを開催したいと言っているのに」とかなんとか、るると訴えさせるのだ。
 そうしたら、世界中の同情が中国に集まり、聖火リレーを妨害する奴らは平和スポーツの祭典を政治的に利用しようとする不純な人間、と言うことになり、中国の立場は大いに良くなったことだろう。
 それが、各国で中国大使館の動員した中国人留学生たちは、オリンピックの旗など一本も持たず、中国の旗で周囲を埋め尽くし、オリンピックについては何も言わず、「中国加油」「チベットは中国の物」「中国は一つ」そんなことばかり叫び、少しでも中国に反対する人間に対しては肉体的な暴力を振るった。
 日本の長野でも、中国人による随分ひどい暴力事件があったが、日本政府の方針で見て見ぬふりをするように警察官に通達が下されていたようで、警官の目の前で暴力を振るわれている日本人が警官に助けを求めても警官は知らん顔だったという報告がある。

 何のことはない。中国は、わざわざ、世界中を回って中国に対する反感、批判を掻き立てたのである。
 私が提案したようにしたら良かったのにねえ。
 これで、オリンピックは上手く行くのかなあ。
 オリンピック期間中一人でも外国人が中国人に危害を加えられたら、それで全てはおしまいだ。
 日本のサッカーチームに見せたような態度を他の国に対しても見せたら、それだけでもお終いだ。
 難しいことになってきたもんだ。
 私なんか、北京に決まったときから北京オリンピックを楽しみにしていたのに、今の状態では、先行きが不安だ。
 伊藤華英が金メダルを取るオリンピックだ。絶対に問題なく幸せなオリンピックにして貰いたい。

 もともと、北京は雰囲気のあるいい町なんだ。
 数年前、私が北京に行って、わざわざ探し回って食べた屋台の食べ物を紹介しよう。私は、北京の朝食は屋台が一番好き。
 屋台のある町並みはこんな風です。

屋台のある街

 まず、焼餅から。鉄鍋で、細長い餅(小麦粉で、中味が入っている)を焼いている。

焼餅1

 焼き上がり。

焼き上がり

 その中は、こんな具合。ネギ、肉などが入っている。ぱりっとして、しかも、汁がたっぷりで、たまらない。

焼餅の中味

 次は、中国風クレープ。

クレープ屋の外観

 クレープ台に生地を敷き、ひろげる。
 以後の写真は、プラスティックの覆い越しなので不鮮明です。ご勘弁。

クレープ1 クレープ2

 広げたら、卵の黄身を落として広げ、ネギやゴマなどを振りかけ

クレープ3 クレープ4

 さらに、たれを塗り、揚げた湯葉のような物を載せる。
 この物が、看板にある緑豆と関係があるのかな。

たれを塗る 具を載せる

 おりたたむと、出来上がり

出来上がり

 その中味はこうなっています。
 いや、この単純なクレープが、実に味わい深いのだ。香りが良くて、しっとりとして、旨みがふわっと口中に広がる。大したもんだ。これで屋台だからね。

クレープの中味

 と言うわけで、我が愛する北京でのオリンピックの成功を祈りたい。

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雁屋 哲

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