雁屋哲の今日もまた

2010-01-11

オーストラリア政府よ、どうするつもりだ

 盗っ人猛々しいと言う言葉がある。

 この場合は、テロリスト猛々しいと言うべきかも知れない。

 以下に、毎日新聞ネット版の記事を紹介する。

 シー・シェパード:調査船側を「海賊行為」で告訴

 【ブリュッセル福島良典】南極海で反捕鯨団体「シー・シェパード」(SS)の抗議船「アディ・ギル(AG)号」が日本の調査船「第2昭南丸」と衝突、大破した問題でSSは8日、第2昭南丸の行動が「海賊行為」にあたるとして、同船の乗組員をオランダ司法当局に告訴した。

 SSの弁護士は、衝突時のビデオ映像から第2昭南丸の行動が「公海上の海賊行為」にあたるのは明白と主張。衝突でAG号は約100万ドル(約9300万円)相当の損害を受け、乗組員1人が肋骨(ろっこつ)を折るけがをしたとしている。

 AG号はニュージーランド船籍だが、弁護士はSSの母船「スティーブ・アーウィン号」がオランダ船籍であり、AG号の乗組員にオランダ人が含まれていたことから、オランダで告訴したと説明している。弁護士はAFP通信に対し、今後、損害賠償を請求する民事訴訟も計画していると話している。

 衝突原因を巡っては「AG号が第2昭南丸の前を横切ろうとしたため、避けられなかった」とする日本側と「第2昭南丸が故意にぶつけてきた」と主張するSS側で見解が対立している。

 米紙クリスチャン・サイエンス・モニターによると、海運専門家の間では、小回りの利くAG号が衝突回避の行動を取るべきだったとの意見があるという。

 以前この頁で、シー・シェパードが日本の調査船を妨害するために高速船を手に入れたことを書いた。
 高速船はその船を購入する資金を寄付したアメリカ人の名前をとって「アディ・ギル号」と名付けられた。(以下、ギル号と呼ぶ)
 ギル号はその高速を利用して、日本の捕鯨調査船の周りを走り回り様々な妨害行動を行った。
 そのギル号が、捕鯨調査船「第2昭南丸」と衝突した。

 その時の映像があるので見て頂きたい。

 

 この映像を見ると、「第2昭南丸」がギル号の方に近寄って行っているように見える。
 しかし、今度は正面からとった映像を見て頂きたい。

 シー・シェパードの抗議船が日本船と衝突

 これを見るとギル号が「第2昭南丸」の進路に向かって突っ込んでいるのが分かる。
 これだけでも、法律違反である。
 さらに、ギル号の航跡を見れば分かるが、ギル号は波を蹴立てて進んでいる。
 速度を出している証拠である。
 第一の映像でも、最後の部分を見ると、ギル号の後尾で猛烈な勢いで水が巻き上がっているのが見える。
 ギル号はエンジンの出力を強力に上げていたのだ。

 そもそも、ギル号が「第2昭南丸」の進路に突っ込んでくること自体違法である。
 こんな勢いで進路に侵入されてきたら、あの波の荒い南氷洋で、どんなに「第2昭南丸」が避けようと努めても、避けることは不可能だ。
 最初の画像で「第2昭南丸」がギル号に幅寄せしたように見えるが、二番目の映像を見ればそうではないことが分かる。
 二番目の映像から分かることは、ギル号が「第2昭南丸」の進路めがけて突っ込んできていることだ。

 昔、「当たり屋」というやくざな連中がいた。
 連中は、通行中の自動車にわざと当たって、怪我をしたとか難癖を付けて保証金をせしめた。
 この、ギル号を見ていて久しぶりに、その「当たり屋」という言葉を思い出した。
 シー・シェパードが日本の捕鯨調査船に体当たりをしたのはこれが初めてではない。

 次の映像を見て頂きたい。

 

 これは恐るべき映像だ。シー・シェパードの船が、捕鯨調査船の船体の真横に、突っ込んでいるのである。
 このような、恐るべきテロ行為を行うのが、シー・シェパードである。
 正気の人間のすることではない。
 この連中を逮捕しなかったオーストラリア政府の正義心を疑わざるを得ない。
 今回も、シー・シェパードはギル号から、日本の捕鯨調査船に向かって様々なテロ行為を行った。例によって、酸を含んだ異臭のする液体の入った瓶を投げつける。

 更に、レーザー光線を調査船に向かって照射する。

 シー・シェパード、今度はレーザー光線やカラーボールで妨害

 レーザー光線に目を照射されたら、失明の危機もある。
 そのレーザー光線も、真昼の明るい光の中で見てもこのように強力なのだ。

 ギル号は高速で調査船の周りを走り回り、このようなテロ活動を続けていた。
 そのように船足の速いギル号が、それより遙かに速度の遅い「第2昭南丸」にぶつけられるはずがない。
 ギル号が「第2昭南丸」と衝突したくなかったら、ちょっと方向転換して高速で逃げ出せたはずだ。
 それが、逃げるどころか、自ら「第2昭南丸」の進路に突っ込んできた。
 ギル号は前部を大破して動けなくなり、大量の燃料油を海に放出した。
 最悪の環境破壊である。何のための、グリーン・ピースであり、シー・シェパードなんだ。(シー・シェパードはグリーン・ピースから絶縁されたと言うが、基本的には同じカルトだ)

 そのことについて、シー・シェパードのワトソン船長は、「ギル号が油を流すことはない。日本人がバケツに油を汲んで海に流しそれを写真に撮ったのだ」、と言い張っている。
 小学校の生徒でもこんな見え透いた嘘は言わない。

 彼らの知的水準がどんなに低いかを良く表している。
 と言うより、平気で嘘をつく人間達であることを示している。
 彼らは、鯨カルトの信者である。
 カルトの信者であるから、理性的な会話をしようとしない。
 だから、1億円もするギル号を「第2昭南丸」にぶつけたり出来るのだ。

 これは、彼らにとって、最後の手段だったのだろう。
 それにしても、両方に死人が出なかったのは、全く不幸中の幸いと言うべきで、もし、そのような不幸が起きていたら、と思うとぞっとする。
 カルト信者は、そのような常識を無視した残虐な行為を平気でするのだ。
 如何に、彼らが正気でないか、それがこの映像が証拠になる。

 問題は、このようなシー・シェパードのテロリスト軍団を、母港として使用するのを許しているオーストラリア政府である。
 日本の経済が低調で、これからは中国中心で行く、日本は経済的に相手にしない、とラッド政府が決めたからこのような不法が日本に対して行われていることを黙認するのか。
 それでは、オーストラリアという国自体が掲げている公正(フェアー)という概念はどうなるのか。
 金が全ての国なのか。
 このような国は、世界的に見て、フェアーではない。
 
 最後に、ギル号が残したボウ・ガンの矢をお見せしよう。
 ボウ・ガンというのは、ウィリアム・テルで皆さんご存じの、銃の形をした弓矢である。
 その正確度と、破壊力は、日本の弓矢より上だと言われている。
 その、ボウ・ガンの矢がギル号の破壊された部分から海に流失したのを、日本側が回収した。

 発見されたボウガンの矢 。水面にアディ・ギル号燃料の油膜が見られる

 アディ・ギル号から海上に流出した漂流物から見つかったボウガンの矢

 この矢で打たれた人間死ぬか大けがをする。
 シー・シェパードは日本人の命より、鯨の方が大事なのだ。
 日本人も、安く見積もられた物だと思うが、それより、こんな物を用意したシー・シェパードの連中の残酷さに寒気がする。
 この連中は、殺人未遂罪だ。日本だったら、凶器を準備したと言うだけで罪になるだろう。

 シー・シェパードの存在を許すオーストラリアは、日本人が殺されても気にしないんだね。
 シー・シェパードのしたことを列挙してみよう。

  1. 自分たちの船を日本の捕鯨調査船の横っ腹にぶつける。
  2. レーザー光線で日本人の目を狙う。
  3. 毒性の液体の入った瓶を日本人に投げつける。
  4. 調査船の前に、自分たちの船を突入させる。
  5. 日本の調査船のスクリューにロープを巻き付けようとする。
  6. ボウガンで日本人調査船の乗組員を狙う。

 これら、全て、傷害・殺人罪に該当する悪質な犯罪である。
 これは、日本だけに通用する犯罪ではない。国際社会全てで認められている犯罪である。

 私は、オーストラリア政府に尋ねたい。
 この国には、正義は存在しないのか。
 鯨カルトに毒された、カルト集団の国なのか。

 私は今まで、オーストラリアに22年住み、「美味しんぼ」という漫画の中でオーストラリアを褒め称えてきた。
「美味しんぼ」を読んでオーストラリアに親しみを抱いたという人びとに多く出会っている。
 日本からシドニーに来た観光客の多くが私の書いた「美味しんぼ」がシドニーを訪れる動機になっていると言う。
 しかし、私の読者たちは、今、私に私のオーストラリアに対する思いが間違っているのではないかと言う疑問を突きつけている。

 私は、今岐路に立たされている。
 オーストラリアを公正な国として書き続けるか、鯨カルトに毒された人びとの国と書くのか。
 公正、と言う概念が通用しない国として書くのか。

 オーストラリアの人びとに言う。自分たちの祖先がどれだけ鯨を殺したのか知っているのか。
 私は、南オーストラリア州のある町の土産物屋で、鯨の歯に彫刻をしたものを買ったことがある。

 その店の主人は言った。

「この港はかつて、捕鯨の母港だった。ここで沢山の鯨を殺した。港の底をさらうと、鯨の骨や歯が無数に出て来るよ。この土産物の鯨の歯もこの港で簡単に手に入る物だ」

 その店には、鯨の歯や骨を使った工芸品が並んでいた。
 オーストラリア人よ、昔のことだから、今は無罪だというのか。

 いつだったか、私が、この捕鯨のことについて書いたら、英語でメールを送ってくれた人達がいた。
 低劣で、読むに耐えない文章だった。
 文法的にも稚拙な間違いが多かった。(日本人の私に言わせるなよな)
 そう言う、人達よ、また英語で文句を書いてくれ。

英文法の間違いを添削して上げますよ。
私は大変親切な人間だから。

雁屋 哲

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