雁屋哲の美味しんぼ日記


酒を休む

2008年12月13日(土)@ 14:52 | 雁屋哲の美味しんぼ日記

 日本の有名な作曲家が、「毎日酒を飲んではいけない。酒を飲んでいては真剣な大きな仕事は出来ない」と言っていた。
 その通りだと思う。
 作曲家の場合はどうなるのか分からないが、物書きの場合、酒を飲んで書いた文章は、最低である。
 酔いがさめて読み返すと、自己嫌悪で死にたくなる。
 酒を飲み続けていると、体力が低下する。
 脳の機能も低下する。
 結果として根気が無くなるので、まともな大きな仕事は出来なくなる。
 ちょこちょこと、ごまかしのきく仕事しか出来なくなる。

 それに、酒は飲んだときは陽気になるのだが、翌日激しい鬱になる。
 二日酔というわけではない。
 体調が悪いわけではないのだが、いや〜な気持ちが、覆い被さってきて、何もする気がなくなってしまう。

 実は、10月1日から、長い間断っていた酒をまた飲み始めた。
 私はアルコール中毒でも、アルコール依存症でもないので、酒は止めようと思ったらいつでもやめられるのだが、一旦飲み始めると、仲々止まらない。
 ついつい、毎日飲んでしまう。
 それでも、和歌山県の取材中、何日かは断酒した。
 それは、どう言う訳か取材中に胃腸の具合が悪くなったからだ。大勢の方を巻込んでいるのに、取材先で私が「具合が悪くて食べられません」などと言うことになったら、とんでもないことになる。大勢の方が善意で協力して下さっているのに、それを踏みにじってしまう。
 それを恐れて、用心のために断酒したのだ。
 しかし、その胃腸の不具合も、「取材中に具合が悪くなったら困るな」と、自分に精神的な圧力をかけていたからであって、取材が終わった途端、胃腸がすっきりして、和歌山の帰り大阪で盛大に飲み食いをしても何ともなかった。
 実に私は、気の小さな男で、心配性で、些細なことで自分を縛り付けてしまう。

 ま、それとは別の話で、やはり、しばらく酒を休もうと思う。
 来年の春、放映の予定の「美味しんぼ」のテレビドラマの構成をしなければならない。
 何としてでも、視聴率を20パーセント以上取ることが至上命題だ。
 前回までのテレビドラマは、プロデューサーに全てお任せしてきたのだが、今回は、最初の構成から私にしてもらいたい、と言うことになった。
 今テレビ局も不況で苦しんでいる。
 そんな時に、制作費のかかる「美味しんぼ」を作るのだから大変だ。
 何としてでも、良い成績を上げなければならない。
 構成の締切りの日も近づいた。
 もう、とても酒なんか飲んでいられない。
 と言う訳なのだ。

 仕事は昼間にすればよいのだから、夜酒を飲んでも構わない、と言えばそうなのだが、「ここは、ひとつ、しっかり決めるぞ」と自分に気合いを入れるために、酒を休むのだ。
 大晦日は、シドニー恒例の花火大会だ。
 大勢の友人たちと楽しむことになっている。
 その日は、当然大酒を飲まなければなるまい。
 大晦日を楽しみにして、それまで、酒を休む。

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