雁屋哲の今日もまた

2009-03-06

無能で、汚らしい、日本の官僚たち

 私は余り時事問題について話したくないのだが、今回の民主党の小沢代表の件については、暴かれるべきものが暴かれたと言うことだと思う。

 もちろん、これは、国策検挙である。
 自民党が頼んだわけではなく、日本の官僚組織が企んだことだろう。
 日本の官僚にとっては、今の状態が非常に望ましい。
 官僚制度に手を突っ込むようなことを言う小沢は早く退治しなければならない。
 もっと言うなら、これまで、官僚制度を守ってくれた自民党に恩返しをしなければならない。自分たちを守るためにも、自民党を応援しなければならない。
 その官僚たちの一致した思惑があってのことだから、小沢はこのまま無事に過ごすことは出来ないだろう。
 最悪の場合、逮捕・下獄と言うことにもなるだろう。
 同じ建設会社から献金を受けとった自民党の政治家を、野放しにして小沢に的を絞った所など、実に露骨だ。

 戦後の日本が、中々まともな国になれないのは、天皇制を維持したことと、戦前の官僚制度を維持したことがその原因だ。

 歴代の中国を振り返ってみると、王朝は様々に変化するけれど、宦官と科挙制度はずっと残った。
 幸いなことに、日本に宦官制度は伝わらなかったが、日本風に変形された科挙制度は突然明治になって起こった。
 日本風の科挙制度というのは、試験万能ということである。
 中国の科挙の場合、最高の位、進士の位を得る最終段階では、皇帝の直々の面接試験を受けることになっていた。
 その試験というのも、孔子の思想を基本にした儒学を如何に当時の皇帝の気にいるように表現するかと言うことであって、それぞれの時代の中国の世相から見ると、およそ現実離れした物だった。
 如何に当時の支配者の気にいるような思想を述べることが出来るか、それが、中国の進士の条件だったのである。
 そんな馬鹿なことを続けたから、次々に王朝が変わったのである。

 日本は、宦官制度は免れたが、明治になって、官僚制度を作り直し、その官僚は政府の決めた試験に合格した人間を用いることにした。
 時の政府の気にいるような回答を出す人間に、最高点を付け、官僚の頂上に据えたのだ。
 中国の、科挙制度とまるで同じ制度を取り入れてしまった。
 それが、東京大法学部出身でなければ出世できない、今の日本の官僚制度の実態である。

 このように、官の下しおかれた試験で良い成績を収める人間は型にはまってしまっていて、何も大事の起こらない平和な時代においては何となくぶらぶらして難なく過ごすことが出来るが、時代の変化について行くことの出来ない、いや、時代の変化について行ってはいけないという特質を持つので、一旦国の運命のかかるような非常な事態が起こると、まるでそれに対する行動を取ることが出来ない。
 いや、そのような行動は取ってはいけないのだ。まず、前例はどうだったかと探す。前例のない物には対処できない。あるいは、同じようなことが起こった場合、先輩のした通りにしなければ、自分の地位を守れない。
 画期的な発想など、官僚にとっては命取りだ。

 日本が、すぐる大戦で負けたのも日本の軍人の愚かさ故だが、その軍人の支配者たちの殆どが陸軍幼年学校から陸軍大学を最優等の成績で卒業した試験秀才、軍官僚だったのである。
 彼らは、国際感覚もなく、敵の力を知らず、己の軍事力の弱さも知らず、全ての実状を見れども見えず、ただ、天皇に忠誠を尽くし精神力で戦争を勝つことが出来ると言う迷信を抱くように教育された人間だった。

 現在の金融危機に対処する能力は、日本の財務官僚にはない。
 大体、この金融危機を呼び込んだ、金融工学と言う物を理解できる人間が財務官僚にいなかったのだ。
 なんという、知的劣弱。
 財務官僚が、アメリカの投資銀行の人間に、現在の経済状態の教えを乞うたという話もある。こんな官僚が、何の役に立とうか。
 いざという時に役に立たない人間が、官僚の親分として威張っているのだから、この国は救いがない。

 今の日本の官僚の最上級の人間たちは、小学校から高校まで、東京大学に合格するのに有利な学校に入り、めでたく東京大学法学部を卒業してそれぞれの役所に乗り込んだ人間ばかりだ。
 彼らは、東京大学法学部の入学試験に合格するまでの自分の努力を非常に自分で高く評価していて、東京大学法学部を批判する人間に対しては、「悔しければ、入ってみろ」と言う。
 たかが、受験勉強ではないか。そんな物が、人間の価値判断に何の役にも立たないことは、1989年以来の、当時の大蔵省、現在の財務省の人間の役の立たなさを見ればはっきりしているではないか。
 さらに、可哀想なことに世界中の大学ランキングを見ると、東京大学法学部なんか、欧米の大学にはまるで及ばない。
 そして、我々が戦わなければならないのはその欧米人なのだ。
 無能な人間が我々を支配している。
 こんな恐ろしいことはない。

 清代末期、中国は官吏の腐敗が甚だしく、それで大いに外国に対して不利な状況を作り、結果的に国を滅ぼしたのだが、その官吏は今の日本で言えば東京大学法学部出身者と同じ、科挙で進士の称号を取った人間である。

 今回の、小沢民主党代表に対する摘発も、あまりに、時機的に露骨すぎる。
 私は民主党なる党には全く信をおけない。
 こんな党が政権を取っても、日本が良くなるわけがないと思う。
 前にも書いたが、卑怯無残な社会党、民社党の残党が潜り込んでいる汚らしい政党だ。

 しかし、今回の小沢追及を検察庁が仕掛けたことは、それとは別問題だと思う。
 例の建設会社から、金を貰っている自民党代議士は十人を下らないのに、そっちは無視して、小沢に攻撃を集中する。
 ああ、なんと汚い世の中なんだろう。

 小沢という人間については、彼が自民党で力をふるっている頃から問題になっていた。
 自民党の集金機構を、そのまま受け継いだのが今回の結果であって、当然の報いと言うべきだろう。むしろ、遅きに失したいうべきかも知れない。
 政治家は必ず汚職をする物だということは、明治以後、政商という人間が跋扈して日本の経済を蹂躙して以来変わらない。
 こういう話を聞いた人々は、ほんの一時「政治家は汚い」とか「きれいな政治をして貰いたい」とか言って怒るが、その根本を正そうという意見を聞くと、「過激だ」とか「日本人の心に合わない」とか「日本の悪口を言うのは反日的だ」などと言って、結局は、支配する側の言いなりになってしまう。

 今回の日本の官僚勢力による小沢退治も、過ぎてしまえば、日本人はみんな二年も経てば忘れてしまうだろう。
 そして、戦後六十年、同じように続いた、日本という国、日本人という人間のみじめな転落が更にその進展を進めるだけなのだ。

 今、世界的な経済の危機状態にある中で、日本の経済を何とか救済しなければならないというのに、このようなあほらしいことで、時間を浪費する。
 こんな国は、破綻に向かって真っ逆さま、ではないか。
 事が終われば、私達が聞くのは、官僚たちの高笑いである。

 自分たちの省庁の利益を守ること、自分たちの権威を守ること、それが官僚たち最大の目的であって、すぐる大戦に負けた後も、ただちに官僚たちは、占領軍の手足となってよく働いたのである。
 誰一人、日本を占領している軍司令官マッカーサーと刺し違えて死のう、などという、官僚はいなかった。
 私があの時に、マッカーサーに近寄れたら、絶対に殺していたね。
 三歳じゃ無理だったけれど。

 前回も書いた。
 この国を救う人材はいないのか。

雁屋 哲

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