雁屋哲の今日もまた

2008-08-08

北京オリンピック開幕

 今日は北京オリンピックの開幕日。
 パレスティナ問題を離れて、オリンピックをお祝いしましょう。

 家の長女と次女は昨日早朝シドニーを出発し、途中シンガポールで中継ぎをして北京に夜到着した。
 シンガポール空港から電話をかけてきて、空港の食堂で長男が薦めた「チキン・ライス」を食べた。長男の言うとおり、とても美味しかった、と言う報告があった。
 次女は、次女の愛犬ポチが、出発前から具合が悪く、出発前日にも食べ物を戻したので、ひどく心配して、本当は北京に行きたくなかったのだが、ここで行かないというと、長女が怒るから仕方なく行く、と言う風情だった。
 それで、ポチが元気かどうか、シンガポールから電話をかけてきたのだ。

 娘たちは今日の開会式は見ることが出来ず、今日、明日は紫禁城、万里の長城を見て回り、10日に何か試合を見ることが出来るらしいが、何を見られるのかまだ分かっていない。オーストラリア人の団体だから、オーストラリアの選手の出場する試合を見られるのだろう。

 今日のシドニー・モーニング・ヘラルドは第一面にでかでかと、万里の長城を走る聖火リレーの一行の写真を載せ、大きな活字で「The Great Pall of China」と見出しを付けている。
 万里の長城は英語で「The Great Wall」という。
「Pall」とは、幕、とばり、特にお棺や霊柩車などにかける布、などの意味がある。
「The Great Wall」とかけて「The Great Pall」と言っているのである。
 たしかに、その写真を見ると、全体に凄まじいスモッグに包まれている。そのスモッグを「Pall」に見立てたのだろう。

 写真を見ると、スモッグの中を聖火リレーの走者が走っているのだが、長城のてっぺんの、人が歩ける10メートルくらいの幅の通路の両側には、黄色の帽子、黄色のシャツと言うユニフォーム姿の人間がびっしりと並び、黄色と赤に染められた長い布を振り回している。
 その間の狭い空間を、護衛に囲まれた走者が走る。
 その樣子もスモッグに包まれて、40メートルほど先はかすんで見えない。
 写真の説明文に「Olympic torchbearers get lost in the smog….」と書いてある。
 スモッグの中で、「get lost」とは「道に迷う」、「迷子になる」などと言う意味の言葉だ。まさか、道に迷うわけがないが、見ている方が、走者を見失う、ということは十分にあり得る。いや、実際、スモッグと異常な警備陣のせいで、一面半分を占める巨大な写真で見ても、誰が走者なんだか一目では分からない。

 それにしても、この樣子は異常だ。
 黄色の帽子、黄色のユニフォームを着た人間は、動員された人達だろう。
 普通の市民ではあるまい。
 この人間達が万里の長城を延々と埋め尽くしているのだ。
 この人間の数だけで圧倒される。
 聖火に近寄れるのは、このユニフォーム姿の人間達と、テレビカメラだけである。
 一般の人間は誰も聖火を見ることが出来ない。
 今回のオリンピックの聖火リレーは見ている方が気持ちが悪くなるほど、過剰な警備の中で行われた。
 走るコースも秘密にされ、一般市民が近づけない様にし、こっそり走る。
 最後の最後、北京に入る段階でも、このような、異常な警備の中で、一般人を遠ざけて行われる。

 形だけ聖火リレーが行われれば、それで良いと中国は考えているのかも知れないが、世界中の人間は、こんな聖火リレーをみて、呆れ果てている。
 こんな聖火リレーはオリンピック精神に反している。
 反対派の妨害があるから仕方がない、と中国は言うのだろう。
 それなら、いっそのこと聖火リレーは中止すれば良かったのだ。
 この聖火リレーの異常さが、世界中の人々に中国に対していやな感情を抱かせた。
 中国にとっては国威発揚のためのオリンピックだったのが、中国の問題点を大きく世界中にさらしてしまって、全くの逆効果だった。
 これだけ、人々に祝福されないオリンピックは今までになかったのではないか。

 今日のヘラルドの第一面の見出しが、世界中の人々が、中国に対してどんな感じを抱いているか、良く表している。

 ある日本の新聞で、北京に行くと記者が周りの人間に言うと、「大丈夫か」「気をつけろよ」とか、まるで戦地に赴くかのように言われた、と書いてあった。
 私達も、娘二人が、心配だ。
 オリンピックのうきうきした、お祭り気分は全くない。
 不思議なオリンピックだ。

 昨夜、日本のサッカーがアメリカに負けてしまった。
 一敗してしまえば、第一次予選を通過するのは難しい。
 これで、今回のオリンピックでの日本のサッカーは終わりだ。
 がっかりだ。

 残るは、伊藤華英だ。
 華英ちゃん、頑張ってくれ。
 日頃の実力を出してくれればいいんだ。
 力まずに、自然体でのびのびと泳ぐんだ。
 結果は、自然についてくる。

 シドニーの我々の気持ちは北京まで届いて、華英ちゃんの後押しをするぞ。
 頑張れ、華英ちゃん!

雁屋 哲

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