シドニー・シンフォニー合唱団
今回は、前回につづいて、私達が如何に豚であるかについて書く予定だったのだが、久しぶりに良い話しが入って来たので、それについて書くことにする。
シドニーには、シドニー・シンフォニー・オーケストラと、シドニー・フィルハーモニーという、二つ大きな楽団がある。
シドニー・シンフォニーには、合唱団もある。
シドニー・シンフォニーと合唱団は、年に一回、あるいは二回、一般的に人気のある曲を選んで素人の音楽好きを自分たちの合唱団に加えて合唱の会を催す。
合唱団に加わって歌いたいという人間は、その上手下手を問わず参加することが出来る。
私はキリスト教徒でもないのに、バッハのミサ曲、モーツァルトのレクイエム、フォーレのレクイエムを非常に愛していて、自分でも歌いたいと思っていたので、シドニー・シンフォニーがフォーレとモーツァルトのレクイエムの合唱の会を催したときには、二度とも二人の娘を誘って参加した。
楽譜と、練習用のCDを貰って、参加費用を払い、自分の家でしっかり練習して、合唱の会の午前中に全体で練習をして、午後に演奏会を開くという段取りである。
全体で練習するのは演奏会の直前に一回だけ、というのは、ちょっと不安になるが、合唱団に参加する人達は大変に熱心で、練習に参加した段階で、もうすぐにでも本番の合唱を始めて問題がないだけに自分自身を鍛え上げてきていた。
娘達も大変に熱心に二人で練習していた。私はちょっと怠けたな。
参加した人達は素人の音楽好きだから大した事はないだろうと甘く見ていた私は驚いた。まるで、全員が音楽大学の学生のようにプロフェッショナルと言った感じなのである。
だから、演奏会直前の一度だけの練習で充分なのだ。シドニー・シンフォニーがそれまでに何度もその会を運営してきて、作り上げたシステムなのだろう。
実際、演奏会は大変に上手く行った。
シドニーの音楽愛好家の水準は非常に高いことがよく分かった。
モーツアルトのレクイエムとフォーレのレクイエムの一番良い演奏は、両方共私と娘達がシドニー・シンフォニーの合唱団に加わった際に録音したものである。本人が一番良いと言っているのだから間違いはない。そのCDは市販されていないのでなんとでも言えるのだ。
今年のイースターには、バッハのヨハネ受難曲を演奏することになっていたのだが、例のコロナヴァイルスのせいでオーケストラも、合唱団も集まることができない。
それでは合唱の会も開くわけには行かない。
しかし、そこが、音楽に熱心な人達であって、そのまま引っ込むことはしない。
どうするかというと、オーケストラ、合唱団の団員それぞれがそれぞれのパートを演奏し、歌う所を、ビデオに撮って指揮者と音楽監督のところに送ることにした。
全員が送ってきたビデオは、指揮者と音楽監督が自分たちの耳を頼りに、まとめあげた。
仮想の合奏、仮想の合唱が出来上がったのである。
これは大変な仕事だった。
1人1人のタイミングが少しでもずれたら、全体として聞くに堪えないものとなる。
それを立派な演奏に聞こえるように、見事にまとめ上げたのだ。
そのために払った努力は大変なものであることか想像できる。
合唱団の人の中には海外から自分の録画を送ってきた人もいた。
この仮想の合唱、合奏を作り上げたチームのメンバーは考えられないほどの長時間をコーラスのリハーサル、録画した演奏のダウンロード、アップロード、このレコーディングの製作に費やした。
その結果はYoutubeで見ることが出来る。
素晴らしい演奏である。
https://www.youtube.com/watch?v=5qIveUWQvE0&feature=youtu.be&mc_cid=e760f36f8e&mc_eid=47d20b5ff8
是非ご覧になって頂きたい。
どんなに苦労したか、指揮者と音楽監督、製作チームの人々の苦労が偲ばれる。
下に、参加した合唱団のメンバーの写真を掲載する。
普通の人達なのだが、その熱意がこのような見事な作品として結晶したのだ。
コロナヴァイルスの悲惨な話が飛び交う中で、このシドニー・シンフォニーと合唱団の困難に立ち向かった姿は美しく、感動的だ。
(私の友人の話しでは、日本でも同じことをしたオーケストラがあると言う。音楽を真に愛する人々はコロナヴァイルスなんかに負けないのだ)