雁屋哲の今日もまた

2018-05-24

我々の自己責任

森本学園問題、加計学園問題、自衛隊イラク日報問題、などで安倍晋三内閣は大きく揺らいでいますが、2018年5月24日現在持ちこたえており、このまま内閣を維持し続けることが出来るようです。

本当にこのまま安倍晋三内閣は政権を維持するのでしょうか。

21日の読売新聞電子版によると、内閣支持率は3ポイント上がって42%になったそうです。

この支持率であれば、安倍晋三内閣は政権を維持できます。

自衛隊イラク日報問題は小泉純一郎内閣時代の問題ですが、ここまで秘匿し続けたことには安倍晋三首相にも責任があります。

森本学園問題、加計学園問題は、安倍晋三首相とその夫人の意向が強く働いていることが明らかになっています。

両方共に、安倍晋三首相とその夫人が、首相の地位を利用して自分たちの支持者、或いは友人に便宜を図ったもので、共に巨額の税金が動いていることが指摘されています。

森本学園は土地の購入代を8億円値引きした問題ですが、加計学園問題はその税金の額が更に巨大です。

今治市が獣医学部建設用地(16.8ヘクタール)を加計学園に無償譲渡し、校舎建設費192億円の半額である96億円の債務負担行為をすることになっています。

そもそも、この50年間日本では獣医学部が新設されていません。その大きな理由は日本ではこれ以上の数の獣医師が必要とされることがないからです。

畜産物の輸入が自由化されて以来日本の畜産業が衰退して行っており、牛、豚、鶏などの産業動物を対象に診療行為などを行う獣医の数も減少するでしょう。ペットについても、犬数は減少傾向、猫の数は横ばいだと言うことです。この状況では新たに獣医学部を新設する必要はないのです。今の獣医学部の数で、日本で必要とされる獣医師の数は充分に満たされるでしょう。

この状況で獣医学部を新設する理由はありません。

理由があるとすれば、ただ一つ、加計学園の理事長加計孝太郎氏が、安倍晋三首相と深い親交があるということだけです。

5月23日にまた、佐川元国税庁長官の「(交渉記録は)廃棄した」との国会答弁に合わせるため」に学校法人「森友学園」(大阪市)への国有地売却を巡る学園側との交渉記録を廃棄していたことが明らかになりました。

森友学園、加計学園の問題は新聞やテレビ、インターネットなどで詳しく報道されているのでここで改めて述べることはないでしょう。

はっきりしているのは、森友学園問題も加計学園問題も、安倍晋三首相が関わった明白な汚職であることです。

今までに多くの自民党の政治家が汚職に関わってきた歴史があります。

しかし、その政治家はここまで汚職が明らかになる前に進んで職を辞してきました。

 

今回の件で、省庁の中の省庁と言われる財務省も安倍晋三首相を守るために公文書偽造、公文書廃棄、虚偽答弁を繰り返し、財務省自体が取り返しのつかない破壊的・破滅的な打撃を受けました。

安倍晋三首相は自分の身を守るために、重要な省庁である財務省を破壊してしまったのです。

汚職を重ね、財務省という省庁を破壊し、それでも、安倍晋三首相は蛙の面になんとやらで、首相の座にしがみついています。

大した根性だと思いますが、読売新聞の支持率が42%にまで上昇したことで、安倍晋三首相は「よし、大丈夫だ、」と蛙の面の皮を一層厚くしたことでしょう。

このまま、安倍晋三首相を今の地位に止めておけば、必ず憲法改正にこの国を導いていくでしょう。

今、改憲反対の人達は、9条にばかり目を向けているように私には思われます。

しかし、安倍晋三首相の主導する改憲案の中で一番恐ろしいのは、天皇を象徴ではなく「元首」にすることだと私は思います。

2012年4月に自民党は新たな憲法改正草案を決定しましたが、その中で、私が一番重要で深刻な問題大だと思うのは、天皇を「日本国の元首」と位置づけ、日の丸や君が代の尊重を義務づけたことです。

「象徴天皇」とは、大変に分かりづらい曖昧な存在でした。

しかし、「元首」となると、「象徴」のような曖昧さはなくなり、明治憲法下の「天皇」と同じ機能を持ちます。

日本は天皇を「元首」とする」「君主制国家」となってしまうのです。

安倍晋三首相の主導する改憲派は、単に「元首」とするだけではなく、「元首の尊厳を守るため」の何か法整備を企むでしょう。

「元首」の尊厳を冒してはならない、とされてしまうと、明治憲法下の「不敬罪」の復活です。

「元首」の尊厳を冒すようなこと、とは何か、それは時の権力者がいいように決めるでしょう。

「元首」に危害を加えることは、最大の犯罪とされるでしょう。

「元首」を設定し、その「元首」の尊厳を守ることを国民に受け入れさせると、政治権力者はどんなことでも出来ることになります。

 

2017年6月に安倍晋三内閣は「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ改正組織的犯罪処罰法を成立させ7月11日に施行されました。

これは、「『テロリズム集団その他の組織的犯罪集団』のメンバーが、物品の手配や下見などの『準備行為』をすることを要件に、計画した段階から罪に問うもの」です。

安倍晋三内閣は「テロ等準備罪」の名称を使い「一般の人は対象外」と説明しています。

全てが曖昧で、法律を運用する人間次第でいかようにも使えます。

荒唐無稽な話ですが、ある人間が今流行のドローンを買って遊びながら、これを使えば誰かを攻撃出来るな、と言ったとします。その人間が、反戦、非戦、辺野古米軍基地建設反対、などと反政府的な意見の持ち主である場合、他への見せしめの意味もあってその人間にこの「テロ等準備罪」を適用しようと思えば、「ドローンを使った要人暗殺計画をたてた」として逮捕出来るのです。ついでに、この人間の周囲の人達も、「その計画を聞いた」とか「ドローンの操縦を教えた」とか「皆で一緒にドローンの訓練をした」などと言いがかりをつけて逮捕出来ます。

今、荒唐無稽と言いましたが、1911年に明治天皇暗殺を企てたとして、わずか3週間ほどの審理で24人に死刑宣告をし、判決から一週間後に12人は天皇の「恩命」で無期懲役に減刑されましたが、幸徳秋水を含む12人は絞首刑に処されるという「大逆事件」がありました。

「大逆」とは天皇に危害を加えることですが、死刑宣告された24人は実際に天皇殺害を計画した訳ではなく、敗戦後自由な研究が出来るようになって分かったことですが、全ては政府のでっち上げでした。死刑にされた人間のうち宮下太吉は確かに爆弾を製造し実験もし天皇に危害を加えたいという意志は持っていたようですが実際に天皇殺害計画を立てことはありません。

他の人間は、そう言う話を聞いた、とか単に警察が怪しいと決めつけた、などという理不尽な理由で逮捕され死刑に処されたのです。

この「大逆事件」の黒幕は明治維新の元勲とされた山県有朋です。山県は社会主義者を恐れ嫌っていました。この「大逆事件」は天皇の権威を絶対的に高め、天皇に逆らったらこうなる、社会主義者であるとこうなる、と国民に対する見せしめとしてでっち上げられたものでした。(「大逆事件」田中伸尚、岩波現代文庫、参照)

共謀罪もこの「大逆事件」のような使い方は可能です。政府にとってその存在が疎ましい人間を、前に述べた「ドローン要人暗殺事件」などをでっちあげてはめることも出来ます。

検察や警察が如何に恣意的に反政府的な人間を取り扱うか、沖縄米軍普天間基地の辺野古への移設に抗議する活動を続けていた山城博治氏が、2016年1月に辺野古米軍キャンプ・シュワブのゲート前でコンクリートブロックを積み上げて、工事車両の資機材搬入の妨害を図った容疑で、その後威力業務妨害容疑で逮捕され、2016年10月17日から、2017年3月18日まで、5カ月以上も長期拘留された事件をみれば明かです。

これまでに既に、権力の要請に従って恣意的な拘留を繰返している検察・警察は「共謀罪」という強い武器を手に入れたことになります。

山城博治氏の件も、「共謀罪」を当て嵌めれば、氏の友人・お仲間たちも逮捕拘留されることもあり得ます。

 

安倍晋三首相の企む改憲は九条問題に留まる物ではありません。

一番恐ろしいのは、今まで権力者にとって余り利用価値がない存在だった天皇を「象徴」から「元首」に変えることです。

こうすることで、権力側は明治憲法下のような圧倒的な支配力を手に入れます。

政府は「元首」となった天皇の権威を利用して、国民を支配することが出来るのです。

「元首」が権力者の最大の武器になったことは、戦前の歴史を読めばよく分かります。

日本の社会は戦前の、大日本帝国に日本は戻ってしまいます。

 

そのような、危険な人物安倍晋三首相をこのまま、首相の座に留めておくと、私が以上に述べたような破滅を招きます。

安倍晋三首相を首相の座から引き落とすのは国民の責任です。

このまま安倍晋三首相を首相の座に留めて将来の危険を招くとしたら、それは、現在の我々日本人の自己責任です。

私は、皆さんに、この危機を充分に認識して自己責任を十分に果たすよう訴えかけたいのです。

安倍晋三首相をやめさせるために、声を挙げて下さい。

 

 

 

 

 

雁屋 哲

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