雁屋哲の今日もまた

2012-09-08

「NEWTON」と「無線と実験」

読者諸姉諸兄におかれては、気分が滅入ったときにどうされていますか。

最近嫌なことばかりで、テレビのニュースを見るのもいや、新聞も週刊誌も見るのもいや。
そんな日々が続いている。

で、最近の私の救いは、二つの雑誌。
一つは「NEWTON」。
いわゆる科学雑誌だが、最近の大ヒット、ヒッグス粒子の発見にほぼ成功したこと、ブラック・マター、ブラック・エネルギー、など物理学の問題なと話題が豊富で面白い。
しかし、10月号の大ヒットは、海底の魚の擬態だ。
海底の生物専門の写真家、吉野雄輔氏の撮影した写真が20枚近く掲載されている。
この中に映っている擬態を懲らした写真の姿が、まったくこちらの想像を超えた物ばかりだ。
私と連れ合いと長男と二人の娘で、どこに魚が隠れているか、どこに魚の目があるか、一生懸命探したが、中々分からない。
最後に答えを示す写真がついている。
それには、魚の形態、目の位置、など解説が出ているのだが、それを見ても、簡単には分からない。私たちの間で議論沸騰。これが目でしょう、違うだろう、こっちだ、それは違うわよ、とひとしきりもめた。
撮影した場所は何れも日本近海だ。
日本近海にこんな奇怪な魚が沢山いたとは驚いた。
吉野氏は、目を見つけることで海底で擬態をしてじっとしている生き物に気がつくことが多いそうだ。
それしても、これは大変根気のいる仕事だ。
実に感服する。

こう言う動物の擬態を見る度に、私はダーウィンの説を疑うんだな。
突然変化を起こして、その中で一番環境に適応した物が生き残るという適者生存説。
一体どうしてこんな具合に環境に適した形に調子よく突然変異が起こるというの。
周りの色によって自由に体の色や形を変えることの出来るイカ、とか、猛毒ウミヘビにそっくりの模様になった魚とか、自分がその姿に似せようと思う動物や環境が結構近い過去に置いて出現したり、出来上がっていることだ。
場合によっては一万年も経ってはいないのではないか。
その間に、そんな新しい環境に合わせて突然変化が都合良く起こる物かね。都合良すぎるんじゃないか。
といって、神様が作ったとは無神論者の私には信じられないことだし、知性のある何者かによって設計されたというインテリジェント・デザインと言う説も、殆ど神様の存在と同じで、これもまた信じられないが、ダーウィン以上の何かがあると思うのだ。魚が絶対この形になりたいと一生懸命願って、それで擬態の出来る体になるんだよ。「気」ですね。「気」ですよ。
今月号ではこの擬態を懲らした魚の写真で、家族中が楽しんだ。
いや、長男の友人まで楽しんだから、有り難いもんだ。

もう一つの雑誌は「無線と実験」。
私は、中学生の頃からラジオ少年で、鉱石ラジオに始まり、真空管ラジオ、最後は真空管を使ったハイファイ・アンプ自作に凝った。
大学を卒業して、忙しい日々が続き、それでも、オーディオには持続的に興味を持っていたが、時代はどんどん変わっていって、真空管からトランジスターに主役が移ってしまった。
最初の内は、六石とか八石(石とはトランジスター一個のこと。さいきんはこんな数え方はしないんだろうな。だって、トランジスターを一個一個繋いで回路を造るなんて、最近の若い人はしないらしいんだから。回路のブロックごとに既に既成の基盤が出来ていて、そこには、数十個のトランジスターやコンデンサー、コイル等が既に取り付けてある)
最近はやりの、PCオーディオで必須のDAコンバーターなど、大メーカーが既にDAコンバーターの回路自体をチップに載せて売っている。
DAコンバーターを作る会社は沢山あるが、どこの会社も同じようチップを使う。
それでは、素人が手を出すところがない。

私が真空管アンプを作っていた頃は、6GB8プッシュ・プルで30ワットなんてもんだったんだからね。
しかも、LPからCDに代わり、素人にデジタルは手が出せなくなった。
(最近は、DSDが流行って、素人がDSD基盤を買って来て作るのが流行っているが。それにしても、基盤だものね。)

しかし、「無線と実験」を見ると、とっくの昔に製作が終わったと思っていた真空管が実はまだロシアとか中国あたりでは作られているようで、なかには30年以上も前の国産の真空管を蓄えて持っている店もあって、いまだに自分で真空管アンプを作る趣味人が絶えない。
みんなで、自分の作ったアンプを持ちよって、試聴会など開いている。
そんな記事を読んでいると、昔の自分に戻ったような気がして実に楽しい。

私も久しぶりに、半田ごてを振り回したくなる。あの半田と松ヤニの香りが忘れられないね。
自作真空管アンプの、あの真空管がほのほのと輝く所なんてたまらない。
私は、欲張りだったから、なるべく大出力にしようとして真空管に通常より高い電圧をかけたんだ。
部屋の明かりを消して真っ暗にして音楽を聴いていると、大音量の所で真空管のプレートが真っ赤になるし、しかもその中で稲妻のようなグロウが飛ぶんだよ。
ぞくぞくしましたね。
よし、また真空管アンプ作るぞ。

「NEWTON」「無線と実験」あ、それに「PCオーディオ・ファン」(この誌名は変更されるらしい)が私の愛読する雑誌だ。
こう言う雑誌を読んでいると、とても気分が良くなります。

雁屋 哲

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シドニー子育て記 シュタイナー教育との出会い
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