雁屋哲の今日もまた

2010-08-17

お相撲さんをいじめる前に

 このところ、大相撲と、暴力団と関係が問題になっている。
 野球賭博にのめり込んだお相撲さんと(私は、とにかく相撲が好きなので、どうしてもお相撲さんと親しみを込めて呼びたいのだ。力士などと、つまらない言葉は使いたくない)ヤクザの関係が騒がれて、名古屋場所は開催すら危ぶまれた。
 昨日は、現大関がゴルフの競技の際に暴力団関係者と一緒に写真に写っていた事が取り上げられて、騒ぎになった。
 
 暴力団が、最悪の存在であることは論を待たない。
 あの連中がいなければ、どんなに、この社会が清潔で平穏でいられることだろうか。
 覚醒剤、麻薬、なども暴力団がいなければここまで社会的に蔓延しなかっただろう。ヤミ金融、右翼団体を装った暴力団による脅迫事件、ヤミ金融、貧困者を狙い撃ちにする貧困産業、など、暴力団にによって日本の社会がこうむっている被害は巨大な物がある。
 日本では、公にされていないが、日本のバブル経済の破綻の大きな原因はヤクザによる物であると外国では知られている(なぜ、日本では公にされないのか、それは大企業、マスコミも全部暴力団の影響を受けていたからである)。
 日本のバブル景気は不動産景気による物が大きいが、その不動産取引に大きく拘わっていたのが暴力団・ヤクザである。
 バブル経済が破綻した後、不良債務を背負った企業の名前が公表されたが、その多くが、広域暴力団と関わりがあった。
 いわゆる昔からの大財閥企業も、地上げなどの不動産買収に暴力団・ヤクザを使っていた。
 暴力団と大企業の関係は、実は戦後の日本では当たり前のことなのである。 
 以前、自民党の成立時の時に書いたことだが、日本の暴力団の総元締めである児玉誉士夫が日本の政治・経済に大きな影響力を及ぼしていた。
 今、問題になっている日韓条約の締結に関しても、児玉誉士夫が岸信介と共にアメリカの意を受けて大きな働きをした。

 1965年に九頭竜川汚職事件、が問題になった。
 その時、暗躍したのが児玉誉士夫であり、児玉誉士夫と組んだのが後の総理大臣中曽根康弘であり、さらに、中曽根康弘に協力したのが、現在日本を代表する大新聞の会長である。
 このように、日本を代表する大企業、総理大臣、その他の政治家、大新聞の会長まで、暴力団と深い繋がりがあるのが、日本という国である。
 
 私は、お相撲さんびいきで言っているのではない。
 お相撲さんが暴力団とゴルフをしたことを、大相撲の存続にまで影響するほど批判するなら、どうして、大企業、政治家、大新聞を暴力団の繋がりで批判しないのだ。
 第一、自分の会社の会長が暴力団の親玉と深い繋がりがある大新聞が、良くもしゃあしゃあとお相撲さんを批判出来る物だ。
 
 私は、お相撲さんと、暴力団が関係を持つことを絶対に擁護しない。
 ならば、お相撲さん以上に、この日本の社会に深く強い影響力を持っている大企業、大新聞との暴力団の繋がりを、きちんと批判するべきだろう。
 お相撲さんをいじめる前に、我々がとっちめなければならない連中がいるのを忘れてはならない。
 お相撲さんばかりいじめて、自分たちの汚い面には頬かぶりしている新聞や政治家をまず、やっつけることだな。
 大新聞、大企業、政治家が、自分たちの身代わりに、大相撲を潰すのはこれは許せない。
 
 ああ、野見宿禰(のみのすくね)を呼び戻して、今お相撲さんをいじめている連中を投げ殺して貰いたい物だ。
 

(「野見宿禰」垂仁天皇の頃の廷臣。出雲の人。天皇の命により,当麻蹴速(タイマノケハヤ)と相撲をとって投げ殺し、以後朝廷に仕えた。《三省堂、スーパー大辞林》日本の相撲の元祖と言われる人間である)

雁屋 哲

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