スイカのショートケーキ
最近、AERAの2010年7月5日号を見ていて、「うぉーっ!これは食べたいっ!」
と言うケーキの写真を発見した。
私も、ずいぶん美味しい物にはすれっからしになっているが、このケーキは、その写真を見ただけで、目→頭脳→舌→胃袋といきなり伝わってしまった。
このケーキを食べたいっ!
余り食べたいので震え上がってしまった。
どんなケーキかって?
ここは、朝日新聞社のご好意並らびにAERAのご好意にすがって、下にそのコピーを掲載させて頂く。
(こらあ、朝日新聞文句があるか、俺ンちでは物心ついた時から朝日新聞を取っているんだぞ、シドニーでも毎日取っているぞ。AERAと来た日には、創刊号から定期購読してらい。愛読者が、写真一枚使っただけで文句は言うまいな。著作権は朝日と、写真家の間で付けてくれ。)
すごいでしょ。
この、赤いみずみずしい果物のショートケーキ。
私は、イチゴのショートケーキが大好きで、私の娘たちは私の誕生日には必ずイチゴのショートケーキを作ってくれるんだが、このショートケーキには参りましたね。
この、赤い果物は、イチゴじゃないんだ。
スイカなんです。
AERAに書かれているこのケーキの作者の話によると、
「日本一を誇る山形県の尾花沢スイカは、シャキシャキと歯触り抜群、糖度も高く、適度な水分が美味です。厚めにスライスして丸型で抜き、そのままのせて迫力と歯ごたえを持たせました」
と来たもんだ。
うーん。
頭の中で、色々、味わいを試してみる訳ですよ。
この食材と、この食材を、こう、合わせたらどうなるか。
とか、この香りと、あの香りと、合わせたらどうなるか。
とか、あの食感とこの食感と合わせたらどうなるか。
とか、とか、とか・・・・・・・
結局、とか、とか、とか、の導くところ、このケーキは美味しいに決まっていると脳髄内判定が出ました。
私は、変な風に自信があるのだが、「これは美味しいだろう」と直感で感じた場合、外したことがない。
逆に、どんなに、食通と言われる人が「これは美味しいですよ」と言っても、なんと言うのか、変な勘が働いて、「これは美味しい訳がない」と思うことがある。
私の人生はとても不幸で、悪い予感は常に当たるんです。
でもね、食べ物に関しては、話に聞いただけ、見ただけで、びびーんっと胃袋が動くんです。
そう言う時は、まず、外しませんね。
で、今回のこの写真なんだけれど、凄い。
食べたい。
その一念が強烈に湧いてきた。
お菓子を見てこんな気持ちになったのはずいぶん久しぶりだ。
しかし、ああ、悲しいかな。
問題はスイカだ。
スイカは日本の夏の果物だ。
私は、不幸にして今シドニーにいる。
シドニーは今真冬だ。
次に日本へ戻れるのは9月の半ばだ。
とっくにスイカの季節は終わっている。
と言うことは、このケーキは食べられない、と言うことだ。
チキショーッ!
グヤジーーッ!
私の人生は不幸が山のように重なっているが、ここにまた、一つ不幸が加わってしまった。
ああ、情けない。悲しい。残念だ。
そう思って、記事を読んでみると、このケーキを作ったのは町田政信氏、店の名前は白金台の「パティスリー&カフェ アトリエ シュン」で、この店を監修して開いたのは熊谷喜八氏とあるではないか。
熊谷喜八さんとは、氏が葉山の「マーレ・ド・チャヤ」にいた時からの30年近いつきあいだ。
もうね、喜八さん、いい加減にしてよ。
人のために自分の体を粉にして働くのはもう止めてよ。
この間も、言ったけれど、これからは喜八さんのためのゆっくり楽しい人生を送ってよ。
本当に、熊谷さんは人が良すぎるよ。
私が、「美味しんぼ」の「日本全県味巡り」で青森県の取材をしている時にも、突然私の取材先に登場してくれた。
熊谷さんは、青森県の産物を売り出すための企画に協力している。
青森だけじゃない。
あちこちで、熊谷さんの力を頼んで地場の産物を盛り上げたいと言うところがあると、あれだけ毎日働いて疲れているのに、熊谷さんは二つ返事で出かけて行く。
私のような、利己的な人間とは正反対の生き方をしている。
でも、古い友人として心配だ。
もう、このスイカのショートケーキくらいで、いいにしてくれ。
9月に日本へ戻ったら、秋谷で釣りでもしてのんびり遊ぼうね。
喜八さん!