雁屋哲の今日もまた

2009-05-26

ああ、恥ずかしい

 私は、毎月コンビニエンスストアーで発売されている、マイファースト・ビッグの「美味しんぼ」版に「美味しんぼ塾」という随筆を連載しているが、その件に関して、読者の方からメールを頂戴した。
 5月発売のその「美味しんぼ塾」の中に、炭酸ガスが大量に発生されていて、それを吸収した海が酸性化している。
 その結果、貝類が減っている地域があることを書いた。
 海水が酸性化すると貝類は、殻を作れなくなると言うのである。
 そこで、私は、研究者が「PH7.8」という数値を示した、と書いた。
メールを送って下さった方は、「PH7.8」は弱アルカリを示す値であり、私の記事が間違っているか、研究者が間違えているかどちらかだと思うのだが」と書かれていた。
 読んで私は飛び上がった。
 まさか!
 そんなことを書くか!
 確かめたら、本当に、そんなことを書いています。
 PHのことなんか、中学で学ぶことではないか。
 それを、何をえらそうに、アホなことを書くのだ。
 私は、恥ずかしく、自分の脳みそを取り出して踏んづけてやりたくなりました。
 もちろん、PHの値は7が中性、7以下が酸性、7以上がアルカリ性を示す物です。
 7.8なら、わずかにアルカリ性で、酸性ではありません。

 どうして、そんな中学生にでも笑われるようなことを書いてしまったのだろう。

 言い訳をさせて貰えば、あの原稿を書いていた当時は、環境問題の取材の連続で、日本の環境問題の破滅的な状況に直面して、その厳しさにちょっと神経がおかしくなっていた。心身共に疲労の極地にあった。
 それで、頭の回路が混乱して、そんなことを書いてしまったのだと思う。
 しかし、そんな初歩的な失敗した後で、何を言い訳してもむなしい。

 ああ、恥ずかしい、恥ずかしい。
 死にたくなった。
 激しい鬱がぶり返してきた。
 もう、駄目だ。

 その研究者の研究と、仮説の立て方は間違っていないと思う。
 私が、酔っぱらっていたりしていてその数値を見間違えて、見間違えたまま、愚かにもそんな原稿を書いてしまったのだろう。

 このページの読者諸姉諸兄の中には、あの「美味しんぼ塾」をお読みになった方がいるかも知れない。
 6月発売になる、マイ・ファースト・ビッグの「美味しんぼ」の「美味しんぼ塾」で、訂正と謝罪の文を書きますが、それ以前に、ここで、「美味しんぼ塾」の多くの読者諸姉諸兄にお詫びしておきます。

 今後、こんなアホな、私自身の知性を疑われるようなことは(え?とっくに疑っているって?それは、どうも失礼しました)書かないように、物を書くときには、慎重の上に慎重を重ねるようにします。

 今日は、この、惨めな失敗のために、激しい鬱がぶりかえしてしまったので、これ以上何も書く勇気がない。
 あーあ、何てことをしてしまったんだろう。
 物を書くと言うことは、恥をかくことなんだな。

雁屋 哲

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