雁屋哲の今日もまた

2008-04-18

伊藤華英頑張れ!

 伊藤華英バンザイ!
 昨日の、北京五輪代表選考会をかねた競泳の日本選手権戦で、伊藤華英が百メートル背泳で、59秒83の日本新記録で優勝し、北京オリンピックの代表の座を獲得した。
 宿敵、中村礼子を最後の二十メートルでぐいぐい抜いてゴール板をタッチしたときは、本当に昂奮した。
 華英ちゃん、良くやった。
 何故、私が、こんなに喜んでいるかというと、伊藤華英、華英ちゃんは、私の縁続きなのである。
 私の連れ合いには兄がいたが、31の時に1歳半の息子を残して心臓の発作でなくなってしまった。当時義兄の妻はまだ二十の前半。しばらくして、息子を連れて再婚した。再婚して生まれたのが伊藤華英である。
 華英ちゃんは、父親の違う兄とも仲が良く、その兄が数年前結婚するときに、結婚式の席上、挨拶をする段になって、「お兄ちゃんが結婚することになって、お兄ちゃんが、お兄ちゃんが・・・・」とそこまで言って、感激のあまり泣き出してしまい、挨拶にならなかった。結婚式に集った客たちも、華英ちゃんにつられて涙を流し、大変に感動的な結婚式になった。それ以来、私の親族の間では「なんて、いい子なんだろう」と華英ちゃんの株は大暴騰した。
 だから、昨夜も、私の家族全員がテレビの前にしがみついていたのである。
 華英ちゃんの母親が熱心で、三歳か四歳の頃からスイミングスクールに通っていた。両親共に良い体格をしているので華英ちゃんも立派な身体で、アテネオリンピックの時も有望視されていたのだが、残念ながら、選にもれた。
 今回は見事に、日本新記録で出場をかざって、もう言う事はない。良くやったの一言だ。
 しかし、困ったのが私だ。
 何故かというと、私は以前から「華英ちゃんが、オリンピックに行くなら、おれは、華英ちゃんの名前を書いた大きな旗を持って北京に乗込むぞ」と公言してきたからである。
 さて、現実に、華英ちゃんが北京に行くとなって大弱りである。
 前にも書いたが、四年前に北京に行って、あまりの変わりように幻滅をした。しかも、四十メートル先が見えないほどの空気の悪さ。開発という名の破壊の激しい進行。そんな物にうんざりした。
 そこに持って来て、今度は、何を食べ、何を飲んだらよいのか分からない不安がある。ミネラルウオーターとして売られている瓶詰めの水の半分以上が、ミネラルウオーターなどではなく水道水などであると言う。北京の水道水は飲む前に煮沸しろと言われたことがある。煮沸しなければ飲めない水をそのまま瓶に詰めた物を、売付けるとは、凄まじい神経だ。
 と言って、日本から水を運び込むことは許されないし。
 どこで何を食べれば安全か、何を飲めば安全か、そんなことを考えながら、北京の街を歩くのはイヤだ。
 オリンピックの選手たちはどうするのだろう。
 驚いたことに、北京の共産党幹部たちの住む中南海という地域の水は、汚染されていないことがはっきりしている河川から特別に引いているのだそうだ。野菜なども、有機栽培の特別の物を幹部たちは食べているという。
 その、特別の水と、特別に安全な食品を、オリンピック村に回すから、外国の選手団は心配ない、と言う事らしい。
 共産党の幹部たちはみんな恐ろしく長生きだ。しかも、歳を取ってもぴんしゃんしている。
 よほど、特別の食べ物を食べているからだろう。
 昔から中国の皇帝は不老不死の薬を求めるのに必死だった。
 中国革命で変わったのは支配者の顔ぶれだけ。農民、労働者などの下層階級の生活難は少しも改善されない。なんのための革命だったのか。
 胡錦涛の後継者は、習近平国家副主席だという。この習近平は、いわゆる太子党と言って、共産党幹部の子弟の一団の一人である。
 共産党なのに、権力の世襲制が行われようとしている。
 北朝鮮の、金日成、金正日と同じだ。
 これで、何が共産主義というのか。中国革命と、その後の文化大革命で失われた中国人の命は数千万と言われている。
 その、巨大な犠牲の上に、今の中国共産党の指導者たちは君臨しているのだが、自分たちの子供にその権力を譲ろうとしている。これは共産主義の思想とは違うだろう。
 聞こえてくるのは、共産党幹部と、官僚たちの腐敗の話ばかりだ。
 そこに、今度のチベット問題だ。聖火リレーもあちこちで騒ぎが起こり、オリンピックで国威発揚を目論んだ中国政府にとって、飛んでもない逆風となった。
 これで、オリンピックはすんなりといくのだろうか。
 きっと、中国政府は厳しい警戒態勢を敷くだろう。
 聖火リレーの走者の周りを取り囲んで走る「青の軍団」とあだ名が付いた、屈強な警察官、軍隊の特別部隊の兵士たちが、北京の町中を固めるのだろう。
 それでは、オリンピックのお祭りとしての楽しさが消えてしまう。
 とは言え、私は、オリンピックをボイコットしろと言う意見には反対だ。日本だって、東京オリンピックは国威発揚が目的だった部分が大きい。韓国のオリンピックもそうだった。それなのに、中国のオリンピックだけ反対するのはおかしい。北京オリンピックは楽しく盛大に、成功させよう。
 チベット問題は、別の方法で議論するべきだ。
 私は、何度も言うように、中国人が好きだ。
 立派な中国人は日本人が足元にも及ばないような、人格の大きさを持っている。私の父は中国生活が長かったが、中国人は実に立派な国民だと、事ある毎に私に言っていた。大体、私達日本人は、いまだに中国の古典文学を超えるような文学を物にしていないではないか。
 そう考えると、最近のちぐはぐな出来事で、中国を否定することは間違いだと思うが、中国にお願いしたいのは、我々一般の旅行者にも安全な食べ物と水を確保してくれということだ。
 ふむ、そう考えると、今度北京に乗込むのも悪くない。
 華英ちゃんの応援を兼ねて、北京の食の実態を調査してくるか。もっとも、最近の北京政府は、中国に都合の悪いことを書く人間は入国を許可しないそうで、そうなると、こんな事を書いている私は、入れて貰えないかな。
 もし、入れてくれなかったら、それもまた面白い話の種になって、色々書けると言う物だ。
 中国政府よ、中国人が好きな私を入国禁止なんかにしないでよ。好きだから、心配して、あれこれ言うんだからね。
 反中国であれこれ言うのとは違うよ。分かってね。

 北京オリンピックでの、華英ちゃんの勝利の前祝いとして、私の大好きな中華料理を、紹介しよう。シドニーの中華街で食べた、鳩の揚げ物である。

鳩の揚物

 鳩は、前もって十分に味の付いたたれをつけて乾かす。このたれが、良い味を出す共に、全体の艶を出す。生乾きにして、油で揚げる。皮はぱりっと仕上がっている。
 鳩というと日本人の中には敬遠する人がいるが、それは、人生の楽しさを失うこと。鳩ほど美味しい鳥は滅多にない。
 身は柔らかくしっとりしているし、香りはいいし、味は深い。一度食べると病みつきになる。
 フランス人も鳩を食べるが、矢張り、鳩はこの中国風の料理が一番美味しい。
 さて、鳩の中で一番美味しいのが、この頭と首の部分である。

鳩の頭

 頭の中の脳みそは、良い物に当たるとトロリとして、ウニと白子を混ぜたような深い味わいがする。
 この、顔の皮を歯でこそげて食べる。パリパリして実に旨い。
 この首の皮も、歯でこそげて食べる。首には細い筋肉が通っていて、その筋肉がまた、歯ごたえがしっとりとして、噛むと旨みがにじみ出て、応えられない。
 なに、華英ちゃん、鳩の首なんて気持ちが悪いって。
 そんなこと言っていては駄目。オリンピックでは相手の首を取るつもりで戦うんだよ。取るのは、相手の選手の首だ。
 鳩なんかでびびっていちゃ駄目だよ。
 頑張れ、華英!

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雁屋 哲

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