雁屋哲の今日もまた

2008-09-09

オーボエ奏者 渡辺克也さん

 先日、嬉しいことがあった。
 一月以上前の事になるが、担当編集者から、荷物が届いた。
 中には、CDとお手紙が入っていた。
 オーボエ奏者、渡辺克也さんが、新作のCDを送って下さったのだ。

 渡辺克也さんは、1966年生まれで、東京芸大卒。
 大学在学中から、日本フィルハーモニー交響楽団に入団。
 1990年、第7回、日本管打楽器コンクール、オーボエ部門で優勝、合わせて大賞も受賞。
 その後、1991年に渡欧し、ベルリン・ドイツ・オペラ歌劇場管弦楽団の首席奏者などを歴任し、現在、ヨーロッパを中心に活躍しておられる。
 渡辺克也さんの写真を下に載せます。(写真はクリックすると大きくなります)

渡辺克也さん

 その渡辺克也さんは有り難いことに、「美味しんぼ」を愛読して下さっていると言うことで、今回、新しいCDを出されたおりに、勿体無くも私に一枚ご恵贈下さったというわけだ。

 私は早速お礼のお手紙を書いたのだが、編集者から送られてきた包みには、渡辺克也さんの住所がない。
 困り果てて、インターネットで探したら、渡辺克也さんの後援会を発見した。
 そこに、メールを送って、渡辺克也さんのご住所を知らせてくれるようお願いしたのだが、全く音沙汰がない。
 さて、これは、何とか他の手段を用いて、渡辺克也さんの住所を調べなければならないと思っていたところに、当の、渡辺克也さんからメールを頂戴した。
「後援会」は、私のメールを取り次いで下さっていたのだ。

 これで、一月以上心に抱えていた負担が解消した。
 お礼のお手紙を、ベルリンのご自宅に発送した。

 私は、音楽が大好きで、高校生の時からオーディオに凝ってしまっていて、連れ合いににらまれている。
 と言うのは、オーディオ装置は、高価な物が多いからだ。連れ合いにとっては、そんな物を買うのは正気の沙汰ではない、と思えるらしい。
 私の仲の良いオーディオ屋さんは、私の家に姿を見せる度に、連れ合いに「また今度は何を持って来たの」と厳しく追及されるので、参っていた。

 四年近く前に、ひどい鬱病におちいって、まるで音楽を聴かない日が続いていたが、最近、大分回復して、また家中に鳴り響く大音量で音楽を聴くようになった。
 私が聞くのは、主にクラシックと、モダンジャズである。
 タンゴもいい。
 クラシックの中でも、オペラは、駄目。苦手だ。
 バッハ、モーツアルトが一番しっくり来る。ブラームス、マーラー、ブルックナーがその次あたりか。
 ジャズでも、チック・コリアと、キース・ジャレット以後の、サウンド中心のジャズは駄目。
 ロックは曲による。
 そして、突然がらりと変わるが、小林旭が好きだ。
 小林旭の歌は難しいねえ。あの高音がとても出ない。口惜しい。
 ビートルズは結婚した時に、親友たちに、それまで出ていたレコード(LPの時代ですよ)全部を結婚祝いに買って貰った。
(友人たちは、私が会社を辞めて貧乏のどん底だったときだから、もっと実生活に役に立つ物にしろと言ったが、どうしても、と言い張ってビートルズにして貰った。友人たちは、ぷんぷん怒りながら、買ってくれた。)
 ラップはお手上げ。
 それ以外は、好き嫌いなく聞くが、オーボエの独奏というのは、今回、渡辺克也さんに送っていただいた物が初めてだ。

 非常に新鮮に感じた。
 オーボエの音色は、人間の声に近く、情感に溢れて響く。
 それで、あまりに情緒纏綿たる曲を演奏されると、もたれるが、今回の渡辺克也さんのCD「Impression」は、選曲が良く、清澄きわまりない印象だ。
 聞いた後に、すがすがしい気持ちに包まれる。
 暑い夏に、冷たい清水に手を浸したときのような、涼しい風が吹き渡ったような、いい気持ちになる。
 たった一本の管楽器で、良くもあれだけの表現が出来る物だと、つくづく感心した。
 この「Impression」はもう市販されている。
 良い気持ちになりたい人には、おすすめする。
 LPとCDを売るほど抱え込んでいる私が言うんだから信用しなさい。

 渡辺克也さんは日本で活動を終えて、9月7日に、ベルリンに帰られた。外国で暮らすことの鬱陶しさは私も良く分かる。
 渡辺克也さんの今後の一層のご活躍をお祈りしたい。

 さて、現在シドニー時間で深夜を過ぎた。
 こんな時間に、「日記」を更新するのは初めてだ。
 どうも、仕事が渋滞して進まないので、気晴らしに、「日記」を書き始めた。
 読者諸姉諸兄がお読み下さるのは、昼過ぎのことだろう。

 今日(8日)は、朝から期するところがあって、痛み止めを一切飲まなかった。
 最近、リハビリの効果が上がってきて、昨日は、1.6キロ強の距離を、24分強で歩いた。
 しかし、痛み止めを飲んでいるので、これは本物ではない。
 一体、痛み止めを飲まずにどれほど歩ける物か、試してみようと思ったのだ。
 いつも、昼食時と夕食時に痛み止めを飲むのだが、今日は、二回とも飲まず、夜九時半を期して、室内歩行に突入した。
 玄関の戸口から、廊下の一番奥まで、一往復36メートル。それを40往復。
 全部で、1440メートルである。
 流石に最初の5往復ほどは痛くてたまらず、もうやめよう、もうやめよう、と思ったが、口惜しいので必死になって続けたら、10往復目くらいから、なんだか楽になった。
 よおし、と勢いづいて続けたら、15往復目くらいからまた痛くなった。
 そこを根性で頑張って続けたら、20往復くらいから、また少し楽になった。
 ところが、25往復を過ぎたら、また痛くなる。
 無理をしないでやめた方が良いと思うのだが、一昨日40往復したことが頭にあって、意地になってしまい、どうしてもやめられない。
 最後の10往復は、何が何だか分からない状態で、歩き続けた。
 その結果、2670歩。28分57秒。
 一昨日は2167歩だったから、大分歩数に差があるし、時間も掛かっている。
 痛み止めを飲むのと飲まないのでは、これだけ違うか、と改めて驚いた。
 しかし、痛み止めを飲まずに、28分57秒歩き続けられたことは、非常に自信をつけてくれた。
 しかし、終わってみると、もうくたくた。
 よく、運動の後の心地よい疲れなどと言うが、いやはや、痛みと道連れで歩くと、ちっとも心地よくなんかない。体より神経が疲れる。
 体中汗びっしょり。下着を替えて、しばらくへたばっていた。

 歩きながら、馬鹿なことを考えた。
 川や、海の水の上を、歩いて渡る方法ってご存知ですか。
 知らない?
 では、教えて差し上げましょう。
 まず、水の上に右の足を出す、その右の足が沈まないうちに、左の足を出す。その左の足が沈まないうちに、右の足を出す。
 これを繰返せば、沈むことなく水の上を歩ける、と言うんですがね。
 昔の少年雑誌には、こんなおかしな事を書いた小さな本が付録として付いてきたものだ。
 私が歩くときも、右脚を踏みだして痛いと思う前に左脚を出す。また右脚を出して痛いと思う前に左脚を出す。こうすれば、痛みを感じないで歩けるのではないか。
 そう思って、できるだけ早足で歩いたんですよ。
 一歩一歩、ゆっくりじっくり歩くと余計に痛く感じる様な気がするので、追われるようにして、歩いたんです。
 賢くないね、我ながら。

 明日は、(あ、すでに9日だ。もう明日になっている)プールでハイドロ・セラピーだ。
 ハイドロ・セラピーは厳しいから、痛みを抑えないと十分に運動できない。
 明日は、痛み止めを飲んで行く方が良いだろうな。
 いや、しかし、今日は自信がつきました。
 私は自分で自分を讃めるのが大好きな男だから、今日も讃めてやるべえか。

雁屋 哲

最近の記事

過去の記事一覧 →

著書紹介

頭痛、肩コリ、心のコリに美味しんぼ
シドニー子育て記 シュタイナー教育との出会い
美味しんぼ食談
美味しんぼ全巻
美味しんぼア・ラ・カルト
My First BIG 美味しんぼ予告
My First BIG 美味しんぼ 特別編予告
THE 美味しん本 山岡士郎 究極の反骨LIFE編
THE 美味しん本 海原雄山 至高の極意編
美味しんぼ塾
美味しんぼ塾2
美味しんぼの料理本
続・美味しんぼの料理本
豪華愛蔵版 美味しんぼ
マンガ 日本人と天皇(いそっぷ社)
マンガ 日本人と天皇(講談社)
日本人の誇り(飛鳥新社)
Copyright © 2024 Tetsu Kariya. All Rights Reserved.
掲載の記事・写真・イラスト等のすべてのコンテンツの無断複写・転載を禁じます。