雁屋哲の今日もまた

2008-12-06

有田芳生さんを応援します

 私は基本的に政治に関わらないことにしている。
 政治家にも近寄らないようにしている。
 私は政治には関心があるのだが、如何なる党派にも関わるのがいやだからだ。
 しかし、個人的に政治家、あるいは政治家を目指す人を応援するのは、その人間が私と考えを同じくする人なら、構わないだろうとおもう。
 今度の総選挙で、評論家の有田芳生さんが、東京11区から立候補されるというので、是非有田さんを応援したい。
 以前から有田さんのブログを私は熱心に読んでいて、大変に真面目な方だと思っていた。
有田芳生の酔醒漫録
 一度東京でお会いして一緒にお酒を飲んだことがあるが、ブログを読んで受けていた印象どおりの方だった。
 何度かメールを交換していて、真面目でいちずな方であるという印象は余計に強まった。

 実は最近、有田さんのブログに、オーストラリアからアクセスできなくなった。
 私の家からだけでなく、私の使っているISPから直接試して貰ってもつながらない。
 私の使っているISPの技術者は、有田さんがブログを載せているISPが、オーストラリアからの、あるいは私の使っているISPからの接続を拒否しているからだ、と言う。
 有田さんの使っているISPに接続を許可するように頼んでくれと技術者は言う。
 しかし、どう頼んで良いのか分からない。

 この十月に日本へ行って、久し振りに、有田さんのブログを読んだら、衆議院に立候補する、と書かれていたので驚いた。
 参議院の選挙で懲りたかと思ったら、再び挑戦すると知って、その勇気に感心した。
 メールを交換して、有田さんが教育問題に真剣に取り組む意志を持っているのを確認したので、ここは一つ応援しなければなるまいと考えた。
 応援すると言っても、オーストラリアに住んでいる私に出来ることと言ったら、ブログで応援する程度のことしかない。
 それでも、こうしてブログに書けば、少しは応援のお役に立てるのではないかと期待している。

 私は、日本の受験勉強本位の教育制度が耐えられなくなって、二十年前に日本を飛び出したのだが、日本の教育環境は二十年前に比べて確実に更に悪くなっている。
 このままでは日本は立ち腐れてしまう。
 受験勉強本位の教育制度はますます強固になっていくし、それに加えて、二十年前にはなかった「君が代・日の丸」で締め付ける思想統制まで始まった。
 国と教育委員会が校長を締め付ければ、校長は教員を締め付ける。
 次に教員は生徒を締め付ける。結果として、教育全体が統制される。
 こうして生徒は国の方針に従うように強制される。
 従わないと、落ちこぼれなどと言って、疎外される。
 私は、自分の中学・高校時代、ただひたすら受験勉強ばかり強いられて、砂を噛むような思いをした。そんな思いをするのなら二度と生まれて来たくないとまで思った。
 そんな思いを自分の子供たちにさせたくないと思い詰めたあげく、日本から逃げ出した。(その辺の経緯は、この日記の「子育て記」にも書いてあるので、読んで頂ければ、私の考えが分かっていただけると思う)
 今の、小学校・中学校・高校の生徒たちは、私の時代より更に厳しく辛い状況にあるのではないか。

 AERAの2008年10月13日号に、「勝ち組襲う早すぎる挫折」という特集が載っていた。
 一体何のことかと思って読んで、気が滅入った。
「勝ち組」というのは、小中学校で勉強が出来て、その上の受験校の試験に合格して進学した生徒のことである。
 有名受験校に合格して進学したから「勝ち組」である。
 ところが、進学した学校では、小中学校の時のような良い成績が取れない。そこで偏差値の低い学校に移る。最悪の例は退学してしまう。
 それが「挫折」だと言う。
 しかし、これは生半端な「挫折」ではなく、その生徒の心を深く傷つけ、将来にも厳しい影響を与える。
 学業成績、それも試験の成績だけでその生徒の人間としての価値を判断する教育とは一体何なのだろう。
 こんな物が教育であっていいはずがない。

 11月に上梓した「シドニー子育て記」の中で、ある有名受験校のことを書いた。
 その学校は中高一貫の受験校で、毎年東大を始め有名大学におおくの合格者を出している日本でも有数の受験校である。
 ここには、日本中から受験秀才が集まってくる。
 一学年200人だが、中学三年までのあいだに50人が脱落する。
 試験の度に、成績の悪い生徒には、教師が「君、ここにいても辛いでしょう」「他の学校に行けばもっと楽になるよ」「君なんかこの学校にいない方がいいよ」などと言って、退学を促す。
 中学三年までに減った50人は、高校で新たに新入生を取って補うと言う。
 その学校の卒業生が、そんな話を書いているのを読んだときに、私は唖然となった。
 試験の成績だけがその人間の価値判断の基準で、試験の成績が上がらなければ、上げるように助けてくれるのではなく、退学させる。
 退学させられた生徒は深い傷を負う。
 AERAの記事にある、「挫折」した勝ち組だ。
 こう言う生徒たち負った傷は一生癒えることがない。
「自分は駄目だ」と、自分で自分を低く評価して一生を過ごす。
 何と無惨なことか。
 こんな物が教育であって良いはずがない。

 教育とは、人間の心を豊かに育て上げる物であるべきだ。
 心豊かな人間が集って、初めて、思いやりのある、暖かい、ウソのない社会が出来るのだ。

 受験秀才が、この世を支配する限り、人を押しのけ、自分の利益のみを追求し、社会的責任を負わない人間ばかりの、今のひずんだ社会は、更に悪くなる一方だ。

 学力を身につけることは確かに大事なことだ。
 勉強は大事なことだ。
 死ぬまで勉強を続ける精神を身につけることは大事なことだ。

 しかし、受験勉強では本当の学力、本当の教養は身に付かない。
 本当の学力を身につけるにはどうすれば良いか「シドニー子育て記」の中に書いた。
 東大法学部出身者が如何に教養がないかは、以前にもこの頁で書いた。

 私は、今の教育制度を正さないと、日本は今まで以上にぎすぎすと荒廃した社会になると恐れている。
 今、一番大事なのは教育を改革することだ。

 その教育問題に、有田さんは取り組んでくださると仰言る。
 その有田さんの言葉を信じて、私は有田芳生さんを応援しようと思う。

 有田さんの立候補する東京11区を見てみると、自民党の下村博文氏が、ずっと支配している。
 有田さんにとっては厳しい戦いだ。
 だからこそ、応援したい。

 今の日本で政治家になれるのは、元議員の二世三世か、官庁や大企業が背後についている者か、あるいは、テレビなどで虚名を獲得した者か、に限られている。
 これは何を物語っているのか。
 選挙民が、あまりに政治のことを真面目に考えないと言うことだ。
 今の政府の内閣の顔ぶれを見てご覧なさい。大半が二世三世だ。
 その二世三世議員の政治家の資質がどんな物か、ここ数年の日本の総理大臣を見れば良く分かる。
 無能であるのに、父親、祖父の威光を笠に着て議員になり、総理大臣になった結果が、いまの体たらくだ。
 二世三世議員を選ぶ選挙民は、江戸時代の封建的な感性をそのまま持っている。
 殿様の子供を有り難がる。
 それに尽きる。
 あるいは、官庁や大企業の押す者に投票する。
 そこには理性がない。存在するのは権力と権威に無条件に従う愚かな群衆だ。

 今の無惨な政治状況を作り出している政治家達は、みんな選挙民によって選ばれて国会に出て来た者達である。
 政治が悪いのは、政治家が悪いのではない。
 そんな政治家を選んだ選挙民、(あなたですよ!)が悪いのだ。
 いい加減に目覚めて欲しい。

 東京11区の皆さん。
 ここは、理性と知性のあるところを示して、政治に新風を吹き込んでくれる、有田芳生さんに投票してください。
 有田さんがどんな人柄かは、有田さんのホームページを読むと良く分かる。是非読んで下さい。

 また、有田さんのホームページの最初に、選挙資金の送り先が書かれている。
 有田芳生さんは、テレビに良く出ていたとは言え、芸能人のような人気のある人ではない。
 応援してくれる背後の組織もない。
 一人でも多くの方に、少しでも良いから、選挙資金を援助してくださるようお願いします。
 アメリカの、オバマは、一人あたり5000円とか10000円とかの小口資金を何百万人の人から集めて、選挙に勝つことが出来た。
 アメリカ人に出来て、日本人に出来ないはずがない。
 一人でも多くの方が、選挙区に関係なく、有田芳生さんの選挙資金を援助してくださるようお願いします。
 有田芳生さんが国会に出れば、日本の政治が良くなる芽が出来る。
 少なくとも、東京11区は住みよい所になる。

 私は、心から、有田芳生さんを応援する。

 有田さんが、当選することを、有田さんのためだけではなく、東京11区の皆さんの為にも祈る。

雁屋 哲

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