雁屋哲の今日もまた

2010-09-04

我が家の歴史教育の成果

 数日前、夕食の時に、次男を除いて家族全員そろった。(最近はみんな働いているから中々全員揃わない。しかも、次男は、今、東京で働いている)
 私にとって、一番の楽しみはこの夕食の時の一家団欒で、この楽しみのために,毎日仕事をしているのである。
 私は、酒を飲まないと食事は10分もかからずに終わってしまうが、酒を飲むと2時間も、時には3時間もかかる。
 最近は子供たちにうるさがられるようになったから若干控えているが、昔は、私が色々とおしゃべりをした。これは、子供たちに必要だと思う教育を与える意味もあった。
 子供たちも,この時間は大切だと思ってくれていたようで、次男が小学生でまだビデオゲームに凝っていた頃、食事を終わったら早くゲームに戻りたかったのか、すぐに席を立ったら、長男が次男に「おい、食事の後は皆で世間話をするんだよ」と怒った。
 この、世間話、と言うところが如何にも長男らしく屈託がなく愉快だと私と連れ合いは喜んで笑ったが、正にその通りで、家族でとりとめのない事をおしゃべりするのは本当に楽しい物だ。

 で、数日前の夕食の時に色々おしゃべりをしている際に、私は、「もう22年もいるし,みんなオーストラリアに仕事を持っているから、そろそろオーストラリアの国籍にするかい」と子供たちに尋ねた。
 私は、子供たちが「そうだなあ、」とか、「考えてはいるんだけれど」などと、肯定的な態度を示すかと思ったら、とんでもない。鼻もひっかけない。
「そんなこと考えられないわ」「私は、日本がいい」「いやだよ、そんなの」とまるで問題にしない。
 それで、その話はお終いになって、他の話題に移ってしまった。

 その冷淡、無関心なことといったら、オーストラリア人の友人たちが見たらがっかりするだろうと思った。
 子供たちは、自分たちが日本人であることを大変に誇りに思っていて、国籍を変えるなんて、とんでもない事だと考えているのだ。
 日本一の愛国者を自認する私としては、嬉しかった。
 私の子供たちは,実に堂々たる日本人である、と自慢したい。
 我が家庭教育の成果ここにありだ。

 私は、子供たちが物事が分かるようになってから、ずっと厳しい歴史教育をしてきた。
 絶対に日本の学校では教えてくれない、日本の現代史を、しっかり教えてきた。
 日本の朝鮮、中国、東南アジア侵略についての事実。
 日清戦争、日露戦争が司馬遼太郎のいうような「祖国防衛戦争」ではなく、明確な侵略戦争だったこと。
 日本の韓国併合が犯罪であること。
 日本人の、韓国、共和国、中国人、その他東南アジアの人々に対する偏見と差別の犯罪性と醜悪さ。
 慰安婦問題。
 こう言うことを、きっちりと、一つも誤魔化さず、きちんとした一次資料を基に、教えてきた。

 10数年前に、マレーシア・シンガポールに、第二次大戦中に日本軍がシンガポール・マレーシアでどんな残虐行為をしたか検証の旅に出た。
 その結果、もう、目も耳もふさぎたくなるような、事実を見せつけられた。
 今の日本人の大多数が知らないか、無視している史実である。
 その時、大勢の人達とインタビューをした。
 その、インタビューは困難を極める物で、まず言葉の問題が一番大きかった。

 日本軍は、マレーシア、シンガポールでは主に中国人を虐殺した。それは、現地の中国人が、共産党と繋がっていると言う予測の元に、また、中国で戦線を拡大している日本軍にとって、中国人は全部敵だと思ってのことだったのだろう。
 シンガポール・マレーシアの中国人は、広東語、福建語、客家語、広東地方の方言、などを話す。(中国の言葉は、同じ漢字を使っても、地方ごとに完全に発音が違う。香港などでテレビを見たことのある方はご存知だと思うが、画面で、登場人物は中国語を喋っているのに、その下に漢字の字幕が出る。それほど、地方によっては同じ中国語とは思えないほど発音も文法も違うのである)
 シンガポールでは、シンガポールの日本語新聞「星日報」の長井一夫編集長、清水愛砂さん、簫翰宇さんなどの力を借りた。

 まず、広東の地方方言で喋る人の言葉を、その方言の分かる中国人が広東語に直して長井さんに話してくれる。それを長井さんが、日本語に訳してくれる。
 別のところでは、清水愛砂さんが、広東語から日本語に翻訳してくれる。
 また、簫翰宇さんが清水さんに分からない方言を聞きとって、英語で私に話してくれる。
 マレーシアでは、粱麗麗さんが、広東語や福建語から英語に直してくれる。
 英語を喋る人からは英語で聞く。
 結果として、一番多いのが英語による聞き取りだった。

 その英語の聞き取りのテープを文書に起こしてくれたのが、長女と次女である。
 その内容たるや、日本軍のすさまじい残虐行為の数々である。虐殺、強姦、略奪、拷問。
 そのテープ起こしを、当時高校生と中学生だった、長女と次女にさせたのである。
 残虐行為の犠牲になった当の本人の生の言葉を聞くのだから娘たちには辛い仕事だっただろう。
 私は、子供たちが真実を知る教育になると思って、させたのだ。
 その結果は、飛鳥新社から「日本人の誇り」として出版した。

 さて、日本では、歴史の書き換えをしたがっている人達が沢山いる。
 そう言う人達は、過去の日本の歴史をきちんと振り返ろうとすると、それは「自虐的だ」という。
 過去の歴史を正確に語ろうとすると、それを「自虐史観」だという。

 冗談も休み休み言って貰いたい。
 だれが、自分たちの父や祖父たちが犯した犯罪的な行為を知ることが楽しい物か。
 こんな辛いことが楽しい訳がないだろう。
 大体、そんな残虐行為を犯した日本兵だって、戦争で駆出されなければ、家庭では穏和で柔和で平和な男たちだったのだ。(家庭内暴力などは勿論あっただろうが、それは戦時でなく平時でも起こる全世界共通の問題だ)
 普通のそこらの町の男に残虐行為をするように仕向けた物は何なのか、それを突き止めなければこの世の真実は理解出来ないのだ。
「自虐」にふけって楽しむような、変態的な性癖を私は持っていない。
 ただ、私は史実を正確に知らなければならないと思っているだけだ。

「自虐史観」だ「司馬史観」だなどと言って、過去の事実をねじ曲げ、嘘で固めて過去を美化をし、子供たちに真実を教えまいとする人々の罪は重い。
 その人たちは、日本の次代を背負って立つ若い人達に対して計り知れない被害を与えている。
 自分たちの歴史をきちんと知らないばかりに、海外で、大恥をかいてビジネスも上手く行かなくなった例は沢山ある。
 歴史を知らない日本人があまりに大勢いるので、「日本人は嘘つきだ」「日本人は不正直だ」「日本人は、また良からぬ事を企むに違いない」とあらぬ非難を現実に我々は受けている。(我々というと一般的に過ぎる。はっきりと、私は、と書こう)
 日本の中にとじこもって、異常なる排外主義と変態的民族主義的ナルシシズムにふけって、仲間同士、嘘のつきっこをし、空威張りをし、あさましい慰め合いをしている分には自分たちの真の姿が分からない。

 一歩、外国に出てみればよい。
 経済的にこれだけ国際化が進んだ現在、特殊な職業に就いている人達(歴史書き換えに専念している大学教授、評論家、外国語もしゃべれないくせに外国の哲学を日本へ輸入することで生計の道を立てている不思議な大学教授、戦前からの右翼的風潮を強く持っている大企業、大出版社、マスコミ、などにしっぽを振って生きて行くジャーナリストと称する人間達)以外は生涯外国人とつきあわないですむ、と言う訳にはいかないだろう。観光で海外に行く人も多いし、外国からの観光客も来る。
 まともな歴史教育を受けていないと、外国人と会った時に赤っ恥をかく。
 外国の大学卒業程度の教養を持つ人達は、それぞれ、歴史をしっかり学んでいるし、自分の意見も確立している。
 いわば、きちんと対社会的な理論武装が出来ているのである。
 そこに、とんでもない嘘の歴史を教え込まれた日本人が出かけて行ったら、其の場でその日本人は、レッド・カード一発退場!
 おおばかもの!下らない人間のクズ!などと、あざけられてお終いだ。

「歴史書き換え論者」たちは、日本が国際的に活躍出来ないように手足を縛り上げるために、一生懸命取り組んでいるとんでもない犯罪者たちだ。
「新しい歴史教科書」なんか作っている人達は、どこか外国の破壊工作組織から金を貰って日本を駄目にするために陰謀を企んでいる人達に違いない。(わ、は、は、は、こう言う低級な陰謀論は連中にぴったりで面白いねえ)
 そうでなければ、あそこまで日本を駄目にしようと思う訳がない。
 ああいう人間こそ、この日本を没落させようと企んでいる、悪党連中だ。
 嘘をつき、ごまかしを言う人間がどれだけ、他人に軽蔑されるか、馬鹿にされるか、相手にされなくなるか、どうしてあの連中は分からないんだろう。

 私の子供たちは、「歴史書き換え論者」にいわせれば「自虐的」な歴史を私にきちんと教えられた。(「自虐的」でもなんでもない、歴史的事実を教えただけだけれどね)
 しかし、私の子供たちは、自分たちは未来に生きるんだ、という決意があるから、過去の歴史を知ることで卑屈になったりすることはない。
 過去の歴史をきちんと知っているから、自分たちはおなじ間違いを犯さないという自信がある。

 私の子供たちは中国人とも韓国人とも、オーストラリア人とも、どこの国の人間とも対等に仲良くやっていっている。
 次女は、大学の時に,韓国人の同級生と一緒に暮らしたりもしていたし、私の息子たちはアジア人の友人を沢山持っている。
 私の子供たちは、一切の人種的偏見を持っていないし、きちんと歴史の事実を知っているから、アジア人の友人たちからも、オーストラリア人からも、みんなから信頼されている。
 そして、これだけ、徹底的に、「歴史書き換え論者」たちに「自虐史観」といわれる歴史の事実を私が叩き込んでも、日本を誇りに思っていて、日本の国籍を捨てることなど夢にも思わない。
 日本人として堂々と胸を張って世界中の人間を相手にしている。
 アメリカに行ってもヨーロッパに行っても、人間の根本を真実で鍛えてあるから、逆におかしな差別を受けることが万一あってもへこたれない。差別と対決して勝利する力の備えは充分にある。

「歴史書き換え論者」のような連中に、嘘にまみれた歴史教育を施されると、世界における、本当の自分の姿を掴むことが出来ず、しっかり対社会的な理論武装の出来ている外国人をあいてにしたら、へなへなと、くずれおちてしまうだろう。
 本当の愛国とは、嘘をついて自分を飾り立てることではない。
 過去の過ちをしっかり認める勇気を持ち、二度と過ちを犯さないという強い決意を持ち、全ての外国の人々から信頼を受けて、未来に向けて日本と日本人が繁栄する道を切り開くことである。 
(本当のことをいうと、愛国とか、日本人とか、日本の国とか、そんなことにこだわりたくないのだが、この世界では当分の間、これから少なくとも百年近くは、国民国家の時代が続くだろうと思われるので、今ある自分たちを守るために、仕方なく日本人とか日本の国とか、言っているのである。
 早く、この国民国家の時代を終わらせて、「ヨーロッパ連合」を更に改良した形の「世界連合」を作るのが我々の義務だ。その「世界連合」では、民族意識は文化として残るだろうが、政治的な意味を持つ物ではなくなるだろう。)

「歴史書き換え論者」は、弱虫毛虫挾んで捨てろ、みたいな連中である。
 自分たちの過去をはっきり見つめる勇気がない。
 過ちを正す勇気もない。
 人間としての誇りがない。人間のクズ共である。
 私は、私の子供たちに正しい歴史教育を与えることが出来て本当に幸せだった。
「歴史書き換え論者」がこれ以上はびこったら、日本はゴミためになりますよ。
 最近、「歴史書き換え論者」の努力が功を奏して、日本に大分ゴミが増えたようだ。

 そう言う訳で、私の子供たちは、立派に育ってくれた、と日本一の愛国者の私は、にんまりしているのである。
(単に、子供自慢をしている訳ではありません。正しい歴史観を「自虐史観」だなどと言う汚らしいウスバカゲロウに殺虫剤をかけてやっただけですよ)(あ、本当のウスバカゲロウはきれいな昆虫です。前に書いてあるウスバカゲロウは漢字に直してください。へっへ、流石にここで私自身が漢字に直す訳にはいかないね。みなさん、それぞれにしてみてね)
(ヒントをいうと、ウスバカゲロウを本来の昆虫の名称どおり薄羽蜉蝣として、薄羽・ウスバと蜉蝣・カゲロウの二つに分けないこと。ウスは薄、ゲロウは下郎という字をあてること。その間の字は簡単に分かりますね)
(なんて、結局、全部ばらしちゃったな)

雁屋 哲

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