雁屋哲の今日もまた

2008-08-25

資料が見つからない

「『嫌韓・嫌中』について」は、ちょっと休憩。
「嫌韓」を論じるのに必要な、大事な資料が見つからないのだ。
 これは、困った。
 日本が韓国を統治しているときの、様々な統計資料の載っている本なのだが、韓国問題をまとめて置いてある本棚の一角に有るはずなのに見あたらない。
 三十年近く前に買った本なので、もう、どこに行っても手に入るわけがない。
 この資料をなくしたのは、おおごとだ。
 もしかしたら、子供たちに勉強しておけと渡して、そのままどこかに紛れ込んでしまったのかも知れない。
 日本の韓国統治時代のことを書いたもう一冊の本は、やはり子供に貸してあって、次女が見つけてくれたが、統計資料の載った本が行方不明なのだ。
 以前、私が親韓的な内容の話を「美味しんぼ」で書いたら、右翼の政治団体から、韓国の肩を持つのはけしからんという内容の手紙が来た。
 そこで、私の意見を色々と書いて、その中に、今行方不明の資料から引用した統計などを明記して、送ったら、実に立派な右翼であって、「その辺の所は当方の勉強不足だった。勉強し直す」という返事が返ってきた。
 右翼も説得出来るだけの、統計資料なのだ。それが、見あたらないので、今日の午前中と、午後は、その本を探すのに、家中の本棚をひっくり返して、くたくたになってしまった。
 こんな商売をしていると、やたらと本がたまる。
 横須賀の秋谷の家を建て直すので、家の中の片付けをした。思い切って色々捨てたのだが、捨てきれずに、新しく建つ家に持越す本が、段ボールに五十箱になった。
 シドニーの家に溜め込んだ本はその数倍有る。
 十年間読まなかった本は、もう捨てよう、と思ったのだが、時々、古い本が必要になるときがあるので、そうも行かない。十年に一度使うかどうか分からない本も、溜め込んでおかないと、実際に今度のように困るのだ。

 今日は、その資料が見つからず、激しくイライラして、おさまらない。
 日頃の自分の整理整頓の悪さに腹を立てているわけだが、このだらしなさが直るわけがなく、そう思うと余計にイライラする。

 よく、雑誌などで、大変にきれいな内装の家を見ることがあるが、そう言う家に共通しているのは、部屋の中に本がないことである。
 別に書庫があるのかも知れないが、きれいな室内には本がない。
 私の家は、全ての部屋が本で埋まっているので、どこをどう写真に撮ってもきれいには写らない。
 私の友人にも本好きがいて、彼は、本のためにだけアパートを借りていた。
 私もそうしようかと思ったが、人が住まずに、本だけのためと言うのではアパートを貸してくれない、と言われて諦めた。友人は、上手い手を使っていたらしい。

 家をきれいに片付けるコツは、何でも捨てることだという。
 私も連れ合いも、欲が深いせいか、物に未練と執着を持って、仲々捨てられない。
 本に至っては、捨てるというのは良く良くのことである。

 裏社会の話、腐敗した政治家の話など日本の社会に批判的なことを書いて人気の出た作家がいる。私も、その作家の本を何冊か買った。
 ところが、その作家は公安とつるんでいることが発覚した。
 私は腹が立って、その作家の本数冊をゴミ箱に叩き込んだ。
 その作家の書くものは面白いと思ったが、学生時代日本共産党の戦闘部隊を率いて、反日共系の学生を暴力で叩きのめしたと、自慢しているところがイヤだった。日本共産党の学生組織「民青」は黄色いヘルメットをかぶっていたので「黄ヘル軍団」と呼ばれていて、反日共系の学生に対する残虐行為は有名だった。
 その「黄ヘル軍団」の頭目だったわけだ。
 そこの所が非常にイヤだったが、歳を取って改心したのかも知れないと思って、その作家の本を読んでいた。
 しかし、公安とつるんでいたとは、驚き呆れた。
「日本共産党」と「公安」か。
 おかしな取り合わせだと思ったが、考えてみると、両者は良く似ているね。

 こんな風に、本をゴミ箱に叩き込むなどと言うことは、滅多にない。
 あ、最近も一冊有ったな。
 それは・・・・。
 おっと、差し障りがあるだろうから、詳しくは書かない。
 ただ、漫画を実際に描いている立場からすると、インテリの人の書く漫画論は実につまらないね。
 インテリの人は漫画なんか読んでいないで、もっと世のため人のためになるような勉強をしなさい。

 とにかく、探している資料が見つからないと、イライラが昂じて金縛り状態になってしまう。

 昨日は、午後一杯、深夜まで落語のDVDを見て過ごした。
 東京に住む私より一回り年下の親友「と」が送ってくれた物だが、中に、1983年の新春寄席の録画があった。
 25年前ですよ。
 小朝が出ていたが、今のようなキューピーか、タマネギか、と言うような頭ではなく、ちょうど良い具合に短く刈った頭で、非常によい男で、話も弾みがあってみずみずしくて大変に良かった。
 志ん朝も二つめの頃にすでに、滅茶苦茶に上手かった。それが、歳を取るにつれて、どんどん芸が大きくなり深くなった。志ん朝のCDやDVDは何度聞いても、見ても、飽きることがない。聞く度、見る度に、話に引き込まれて、気持ちが浮き立つ。志ん朝に並ぶ落語家は、もう出て来ないだろう。
 1983年の小朝を見て、今の小朝と引き比べて、芸人が成長するということは何と難しいことなんだろうと痛感した。

 落語のDVDを続けざまに見て、嬉しい発見をした。
 春風亭小柳枝の「中村仲蔵」はいい!
「中村仲蔵」は、そう言う名前の江戸時代の歌舞伎俳優が、忠臣蔵の芝居で、それまで全然人気のなかった「定九郎」役を全く新規の演出で演じて、一躍大人気の俳優になったと言う筋立てだ。後の彦六、林家正蔵の物が良く知られているが、小柳枝の「中村仲蔵」は林家正蔵風の演出でありながら、正蔵より話が細部まで丁寧なので、歌舞伎を知らない者にも良く分かるし、仲蔵と仲蔵の妻の間の情愛も上手く表現されている。
 情感たっぷりの話っぷりで、大いに堪能した。
 私は、小柳枝のファンになったぞ。

 それに反して、私が大好きな、志ん生の「中村仲蔵」は実につまらない。
 志ん生なら、何でも良いというわけではないことを知った。
 中村仲蔵、と言う落語は、地味だし、よほど腕が良くないときちんと話しきれない。それで、余り聞く機会がないのだが、読者諸姉諸兄におかれては、機会を見つけて、是非お聞きいただきたいと思う。
 小柳枝の「中村仲蔵」は90点つけてしまう。
 面白、おかしい話ではない。芸談と人情話の混ざった物で、聞き終わると良い気持ちになる。

 今日も、深夜まで落語のDVDを見て過ごそうかな。
 しなければならない仕事があって、そのことを考えると気が狂いそうになるのだが、やる気が全く起きないので仕方がない。

雁屋 哲

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シドニー子育て記 シュタイナー教育との出会い
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THE 美味しん本 海原雄山 至高の極意編
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