雁屋哲の今日もまた

2008-07-18

パレスティナ問題 その9

 さて、イスラエル建国までの事だが、前回に続いて箇条書きに記します。

 パレスティナでアラブ民族主義が興ってから、情勢が変わってくる。

 6)アラブ人の中に様々な政治結社がうまれ、過激な行動を取るようになった。
 1936年、ヤッフォでアラブの暴動が発生した。
 アラブ諸派会議はハジ・アミン(グランド・ムフティ)を議長とするアラブ高等委員会を設置し、大規模なゼネストを行い、テロ活動も行った。

 7)イギリス政府は、調査団を派遣し、ユダヤ人とアラブ人から様々な事情を聴取した。
 調査団は、「パレスティナ分割案」を提出した。
 パレスティナをユダヤ人国家(ガリラヤ地方全域、レオポットを南限とする沿岸平野部)と、アラブ人国家(サマリヤちほう、ジュディア地方、ネゲブ地方)の二つに分けるという案だった。
 シオニスト側も、アラブ人側も、意見が対立し、分割案は成立しなかった。

 8)1938年になるとアラブの暴動を更に激しくなった。
 その間に、1938年9月29日に英仏伊とナチスドイツの間のミュンヘン協定が成立してから、世界大戦に備えてアラブを味方につけ置きたいという思惑から、イギリス政府は態度を変え、アラブ宥和政策を取るようになった。

 9)1938年11月9日、イギリスはパレスティナ分割案を放棄し、ユダヤ人アラブ人が話し合うための会議をロンドンで開いたが、ユダヤ人アラブ人が互いに話し合うことを拒否し、何の成果ももたらさなかった。

 10)しかし、その会議の後、1939年5月17日、イギリスの植民地相マルコム・マクドナルドは新しい白書を発表した。
 イギリスはアラブの要求を呑む方針に変更した。
 これによると、ユダヤ人移民はユダヤ人人口がパレスティナ全体の3分の1までを目途に、年間1万人で帰艦を年間に限定し、それ以降はアラブの同意を必要とする。ただし、ヨーロッパのユダヤ人難民に対しては特別に2万5千人の移住許可を与えるとした。
 一方でユダヤ人に対する土地売却は制限されることとなった。
 この白書で、バルフォア宣言は消滅したことになったのだ。

 ここにも、イギリスという国の身勝手さが表れている。
 その時、その時の都合で、対外政策をころころ変える。
 ユダヤ人もアラブ人もイギリスにいいようにあしらわれている。

 11)このマクドナルド白書は後に大きな意味を持つ物となる。
 第二次大戦が始まっても、1942年までには、まだパレスティナのユダヤ人たちはヒトラーがユダヤ人を大量に虐殺し始めたことを知らなかった。
 それを知ってから、パレスティナのユダヤ人は、ヨーロッパ・ユダヤ人を助けるために、パレスティナに帰還させようとしたのだが、このマクドナルド白書がユダヤ人の移民数を制限していることで、それは上手く行かなかった。
 イギリスは白書を楯にとって、ヨーロッパ・ユダヤ人がパレスティナに逃げ込むことを拒否したのである。
 なんとも、無惨なことである。

 12)第二に大戦が終わり、パレスティナのユダヤ人はイギリスが政策を変更して大量のユダヤ人移民を許可することを期待した。
 しかし、イギリスは、ますます石油の重大さを認識し、アラブを敵に回す事はしたくなかった。
 マクドナルド白書を堅持して、ユダヤ人の不法移民を強制送還することまで行った。

 13)そこで、パレスティナユダヤ人のイギリス政府に対する抵抗運動が始まった。
 後にイスラエルの首相を務めたメナハム・ベギンの率いる武装組織イルグンは数々のテロ活動を行った。
 ホテルを爆破して、28人の英国人、41人のアラブ人、17人のユダヤ人が犠牲になったこともある。

 14)その、ベギンらによるテロ活動はイギリスに、パレスティナ撤退を決意させた。

 15)1947年5月国連で、パレスティナ問題が議題にのぼり、ユダヤ人こっかとアラブ人国家を創設し、エルサレムを国連の管理下に置く、というパレスティナ分割案を可決した。

 16)そして、1948年5月14日、ベングリオンはイスラエルの独立を宣言した。

 と、まあ、イスラエル建国までを、駆け足で見てきた。

 本格的なパレスティナ問題はこの時から始まるのだ。

(このつづきは、また)

雁屋 哲

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