雁屋哲の今日もまた

2008-06-27

茶髪・金髪について その2

(昨日の続き)

 3)「若者たちよ、茶髪・金髪で身をかざる暇があったら、その頭の中味を鍛えろよ。」と書いたことについて。

 私の真意は、若者たちに自分たちの手で新しい時代を切開いて貰いたいと言うことだ。
 昨日の1)にも書いたが、もはや茶髪・金髪は一過的な流行にとどまらず、現在のところ日本の社会に定着している。(いつまた突然廃れるかも知れない。今までの流行がそうだったように)
 社会の流行・風潮に乗ることは、楽で、心地よい。
 自分の周りの人のすることを見て、その人たちと同じことをしていれば、間違いがない。自分も、その人たちの仲間になれて心強い。
 社会の流れに乗って生きていれば、とにかく安楽で、自分の居場所も確保できる。
 しかし、社会の流れに流されて生きることが、本当に生きることなのか。
 他人の定めた価値判断の基準を、自分で点検することもなく有り難く受け入れる。
 それは他人に動かされているのであって、自分で自分の人生を生きることにならないだろう。
 自分の価値判断の基準は自分で作らなければ、自分の人生は自分の物ではない。他人に操られた人生だ。
 私は若者たちに、この流れの中で一旦立ち止まって、この流れが本当に自分を幸福に導く物なのか、これが本当に価値ある人生を過ごす道なのか、考えて貰いたいのだ。
 茶髪・金髪だからといって、この世の中の流れ流されているわけではない、と言うかも知れないが、昨日も言ったようにお洒落や髪型のように自分で選択した自分の外観は、自分の中味に密接な関係がある。
 茶髪・金髪にすることは、
「社会の今の流れに自分は同調している」。「今の社会の流れが心地よい」。「今の社会の流れに逆らう気持ちはない」。
 と言う自分の心を表現しているのだ。

 今の社会の流れに流されていれば、余計な摩擦もないし、抵抗も受けない。
 何度も言うが、安楽で、心地よい。

 しかし、流れ流されていくうちに、飛んでもないところに流れ着いて驚く。
 小泉純一郎が総理大臣になり、「改革だ、自民党をぶっ壊す」と喚くと、日本人はみんな何が何だか分からないのに喝采を送り、非常に高い支持率を示した。
 そして、いま、小泉が作った流れに日本人が乗ってきた結果が表れている。
 大企業と、高級官僚は、たっぷり潤っているが、一般大衆は悲惨な状態に追い込まれてしまった。
 全労働者の内三分の一が非正規雇用。
 年収二百万円以下の給与所得者は一千万人を超えた。
 昔は、労働者と、雇用者の間に、口入れ業者が入ることを制限していたが、構造改革という美名の元に、派遣会社などと言うこれまた結構な名前の組織が出来、大企業の要請に合わせて、必要な期間、必要な人間を働かせる、社会保障は企業が負わない、と言う仕組みが出来上がった。
大手の派遣会社の年間売り上げは三千億円を超す。
 この三千億円はもともと労働者が得るべき賃銀から、派遣会社がピンハネをした物だ。
 先日秋葉原で通り魔事件を起こした青年は、派遣労働者で、いつ首にされるかも知れないという不安を抱いていたという。彼は、派遣会社の用意したアパートに住んでいたから、首になった瞬間ホームレスになる。
 彼が事件を引き起こした要因はそれだけではないだろうが、大きな要因の一つではないか。
 そして、同じような境遇にいる若者は、何万、何十万といるだろう。
 この、今の社会の流れに、安閑として流されていって良いのか、と私は若者たちに問いたいのである。

 幕末に徳川政府を倒し、新しい日本を作ろうとした、いわゆる明治維新の志士たちは、運動を開始したとき、いずれも20代の青年だった。
 坂本竜馬が土佐藩を脱藩して、勝海舟の門下に入ったのが28歳の時、それから、32歳で暗殺されるまで、大活躍したのはご存知の通りだ。
 伊藤博文は22歳の時に、長州藩の藩命を受けてロンドンに留学し、その後長州藩で指導的な立場に立ち、維新運動を進めた。
 明治政府が成立したとき、伊藤博文は27歳だった。
 いつの世も、新しい時代を切開くのは、先に目覚めた若者たちである。

 今、日本は激動の時代を迎えている。それも、良い方の激動ではなく、悪い方の激動だ。
 日本はエネルギーの90パーセント以上、食料の60パーセント以上を外国に頼っている。
 ところが、このところの異常な原油価格の上昇、世界の穀倉地帯の干ばつ、などで、エネルギーも食料も危うい状態になっている。
 この状態が、改善する見込はない。中国やインドという10億、13億という人口を持つ国が、経済発展を続ける訳だから、その分、日本の取り分はなくなっていく。
 一度、世界の経済状況の統計などじっくり見て貰いたい。
 このままでは、十年後の日本は惨憺たる物だ。
 世界から相手にされない貧乏国に転落しているだろう。
 本当に、日本は危機に直面しているのだ。
 こんな時に、若者たちに、この流れに身をまかせて安閑としていないで、立ち上がって新しい時代を切開いて貰いたいと私は願う。
 老人たちに支配されていて何も出来ない、などと弱音を吐くな。
 選挙運動、市民運動、新しい労働組合を作る運動、いくらでも出来る道はある。
 この、閉塞状況を打ち破り、新しい時代を若者たちに切開いて貰わないと日本は滅びる。
 私は、若者たちが立ち上がってくれることを切に願っているのだ。
 茶髪・金髪でも、そんなことは出来る、と言うのなら、それは結構だ。
 茶髪・金髪を批判した、私の挑発に乗って、若者たちよ、安閑としていずに、次の時代を切開いていって欲しい。

 4)クリエーターについて。

 茶髪・金髪のクリエーターたちは、自分たちが今の社会の流れに乗っていることを示している。
 今の流れに乗ったクリエーターは、今の同じ流れに乗った人達を満足させる物しか作れない。それは、真のクリエーター(creator=創造する人)ではない。そう言う人間の作った物は、作った瞬間に消費されてしまう。保って2、3年の命だ。
 本当のcreatorは新しい流れを創造する。
 歴史を振り返ってみて欲しい。後世に作品を残し、後世に影響を与えた creatorは全部、自分で新しい流れを産み出している。
 流れに埋没していて、新しい流れは作れない。
 茶髪・金髪でも新しい流れを作れるというのなら、それも結構。私の挑発に乗って新しい流れを作り出して見せて欲しい。

 以上が、「茶髪・金髪」に対する、私の更なる考えだ。
 そう言うわけで、23日の日記を読んだ方々の多くに不快感、反撥を感じさせたかも知れないが、そしてそれに対しては、私は非常に遺憾に思うが、私は、あの意見を変えるつもりは毛頭無い。

 私の意見は私の意見、私に反対する意見は又それで一つの意見。
 こうして、意見を正しく交わし合うことで、私も、私に反対の方も、自分の考えを深めることが出来るだろう。

 意見を交わし合うことについての、この私の態度を読者諸姉諸兄、諒とせられよ。

雁屋 哲

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