小野伸二選手のPKで勝ったぞ
ええ、こんち、またサッカーのお話しで、どちらさまもご迷惑さまで、恐れ入りましてございます。
今日は、Australia Day.
1788年1月26日にArthur Philip船長が、シドニーにイギリス国旗を掲げたのを記念して作られた祝日で、建国記念日にも当たるそうで、あちこちでお祭り騒ぎが行われるし、花火も打ち上げられる。
オーストラリアの国旗を窓に掲げて走る車を何台も見る。オーストラリアの先住民、アボリジニーたちに取っては耐え難い日である。
そんな日に、小野伸二選手の所属する、WSW(Western Sydney Wanderers)とMelbourne Heart FCとの試合が行われた。
いつも通り家族五人で観戦に行った。
今日は、日本人の観客が大変に多かった。
私たちの周りに、日本人の観客が多く、うっかり日本語でまずいことはしゃべれない。
私たちの前列に六人連れほどの日本人の家族が来ていたが、その中の小学生の男の子が、私の長男に、英語で、「貴方は小野伸二の親戚か」とたずねた。
長男は坊主頭で、ちょっと見た目に小野伸二に似ていないことはない。その小学生は、もう、日本語より英語の方が楽にしゃべれるようになってしまったのだろう。姉と弟では英語でしゃべっている。私は、自分の子供が日本語をしゃべれなくなったら困るから、シドニーに来て、家族の中で英語で話したら、罰金を取ることにしていた。私たちと一緒に住んでくれていた連れあいの母が美しい東京弁を話したので、今でも私の子供達は、日本の人が「今頃の日本の若い人はこんな風にしゃべれません」とおどろくほど、昔どおりの日本語をしゃべることが出来る。
最前列には、「小野伸二頑張れ」と書いた横断幕を持った日本人女性の一団がいる。
私たちが、WSWの試合を見に来たのは三回目だが、最初より驚くほど日本人の数が増えた。
シドニー在住の日本人の間に、小野伸二選手の話しが広がっているのだろう。
今日の試合ほど、ストレスぎんぎんの試合はなかった。
開始早々、WSWの選手が、ペナルティ・エリアでレッド・カードを取られて、一発退場。
そして、相手によるPKである。
もう駄目だと思ったが、WSWのゴールキーパーの奇跡的なセーブで助かった。
しかし、そのあと、一人欠けると、流石に不利だ。
今日は、いつもの、Youssouf Hersiと言うオランダ人のMF(オランダ人だがエチオピア生まれで、肌の色は黒く、細身で精悍で、極めて足が速く、動きが素晴らしい。小野伸二選手はこのユスフに球を回すことが多い)と、Dino Kreisingerと言うクロアチア人のForwardがいたので、小野伸二ひとりに、重荷が回る展開にならず、有利に運ぶと思っていたのに、のっけから一人退場だから、たまったものじゃない。
それでも、しのぎにしのいで、何度かCKを取り、その度に小野伸二が良いセンタリングを入れるのだがWSWには小野伸二のセンタリングを生かすことの出来る選手がいない。
前半はしのいで、後半に入って十分過ぎくらいに、今度は攻め込んだユスフが相手に倒されて、PKを取った。
PKを蹴るのは、小野伸二選手である。
私たちの目の前で、小野伸二が蹴る。
会場に詰めかけた日本人観客は、私たちも含めて、「頼むから入れてくれ、ああ、でも、もし入らなかったらどうしよう」と、みんな、がちがちに緊張して青ざめて、私なんか吐き気がした。
小野伸二選手の緊張は推して知るべきである。
しかし、小野伸二はすんなりと決めた。
その瞬間のスタジアムの騒ぎをなんと言ったらよいのだろう。
全員総立ちで、両手を振り回して「シンジ・オノ! シンジ・オノ!」と声を限りに絶叫する。
正に歓喜の尺玉花火、100連発だ!
小野伸二選手も、百戦錬磨の名選手とは言え、流石に緊張していたらしく、PKを決めた後、自分のユニフォームにキスをしたり、観客の声援にほっとした笑顔でこたえたり、あとはチームメートに揉みくしゃにされた。
その後、小野伸二選手は相手のキーパーと衝突してしばらく立てなかった。
それを、レフリーが気づかないので、観客が大騒ぎ。
あわてて、レフリーが試合をとめた。
小野はしばらく倒れていたが、やがて元気に立ち上がった。
観客は「シンジ・オノ! シンジ・オノ!」とその勇気を褒め称えた。
ところが、またしばらくして、今度は脚を引っかけられて倒れて、矢張り起き上がって、観客から大声援を受けたが、WSWの監督は、既に1点入れていることだし、ここで小野に休んで貰わないと、次の試合から困ると考えたのだろう、残り十五分くらいで交替してベンチに下がった。
その時の観客の、拍手声援も凄かった。
小野伸二選手は、Western Sydney地区のサッカーファンに熱烈に愛されている。
ロスタイムに、危うく1点相手に入れられると思ったが、ゴールキーパーが身を犠牲にして防いで(頭に怪我をした)何とかしのいだ。
とにかく、勝った。
こんなにほっとしたことはない。
前回、負け試合の後、サポーター達が暴れたので、何と今日は、特別の警官隊、Riot Squad 暴動取り締まりのための警官隊が派遣されていて、サポーター席を取り巻いていた。
会場の外には、騎馬警官がいるし、恐ろしく物々しい警戒だった。
長男はふざけて、「残念だな、この、Riot Policeの活躍を見たかったな」と言った。
おいおい、それは、WSWが負けたときの話だろう。
いやあ、本当に勝って良かった。
大勢詰めかけていた、日本人観客もほっとしただろう。
今日は、日本人の公式カメラマンが二人、会場内にいて、ピッチにも入って写真を撮っていた。
観客席の日本人観客の写真も、小野伸二選手の名前を書いた横断幕の写真も撮っていた。
日本のメディアに載るのかな。
小野伸二選手の活躍が余り日本で騒がれて、また日本に連れ戻されたら、私たちオーストラリア在住の日本人は淋しいな。
小野伸二選手には、活躍して欲しいし、活躍しくれると本当に嬉しいし、でも、これが目について日本に連れ戻されるのも困るし、大変に複雑な心境です。
今日の勝利で、WSWはオーストラリア、A-リーグで三位になった。
今シーズンから参加したばかりのチームがいきなり三位とは凄い物で、やはり小野伸二の貢献は大きい。
このまま行けば、一位も無理ではない。
本当に、小野伸二選手って凄い選手だな。
しかし、当分、WSWのホームでの試合はない。
しばらく、サッカーの楽しみもお預けだ。
矢張り、サッカーというものは、テレビで見るよりスタジアムで見た方が百倍面白いからなあ。
と言う訳で、今夜はとても幸せに眠れます。
小野伸二選手、有り難う。
体を大事に、これからも頑張ってね。
付け加え、その1。
オーストラリア人の声は凄まじく大きい。
私は、耳が、キンキンして去年患った突発性難聴が再発するのではないかと恐れた。
次女はちゃんと耳栓を持ってきていた。
オーストラリアのサッカー場の騒ぎのすごさは分かるでしょう。
サポーター達は試合の始まる前から、騒ぎ続け、歌を歌い続け、頻繁に両手を前方に突き出して色々なことを叫ぶ、それに我々も合わせなければならないから、私たちの周りの大声も凄まじいことになるのだ。
付け加え、その2。
私たちは、いつも、チキンカツのサンドイッチを弁当に持って行く。
有機栽培の素晴らしいニワトリが手に入るので、しかも、その腿たるや、信じられないくらいに太いので、そのもも肉を開いてカツに揚げる。
これが、美味しいんだ。
私の家では、完全有機ではないが、殆ど有機に近い素晴らしい豚肉も手に入るのだが、最近はとんかつはやめて、チキンカツ専門になってしまった。
今日は、トルコ風のパンに、チキンカツ、レタス、アボカド、と言う単純なサンドイッチだったが、いやこれが旨い。
これも、サッカーを見に行く楽しみの一つなのだ。サッカー・スタジアムで食べるチキンカツ・サンドイッチはもう最高。
ただ、残念なのは、このスタジアムで売っているビールはひどくまずくて飲む気になれないことだ。
仕方がないから、長男は自分の好きなビールを魔法瓶に詰めて持って来る。
私は、ほうじ茶の冷えた物を魔法瓶に詰めて持って来る。
今度は焼酎か、ウィスキーの水割りを魔法瓶に入れて持って行くことにしよう。