雁屋哲の今日もまた

2010-04-18

環境問題篇を書き終えた

 ついに、先ほど、環境問題篇その2の最後、第9話を書き上げた。
 もう、本当にくたくたに疲れ果てた。
 こんなに難しい仕事は初めてだった。

 環境問題についての話は難しい物ではない。
 極めて明確だ。
 しかし、それを、毎週22頁に収めるという作業が地獄のような苦しみだった。
 折角書き上げた原稿を、漫画のページ数を超過すると言って削るときのあの悲しさ。なさけなさ。大事だ思って書いたのに、削らなければならない。
 身を削るより、原稿を削る方が、辛い。それも、時には、原稿用紙二枚も三枚も削る。
 こんな苦しいことは無い。

 今、段ボールいっぱいの取材資料を眺めていて、「ああ、百分の一などと言ったが、実際に漫画に書き込むことが出来たのは千分の一も無い」と改めて痛感して、何と言うか「慟哭」というのにふさわしい嘆き悲しみの状態にある。
「何も書けなかった」と自分を責める声が、心の底から湧いてくる。
 しかし、同時に、前にも言った「漫画で解決策は提示できない」という言い訳も出て来る。
「読者諸姉諸兄に、こんな問題があるんだ」と提示することが出来れば、漫画としての使命は果たしたと考えるしかない。

 しかし、悲しいのだ。
 これだけの、材料を、このまま眠らせて良いのか。
 といって、こう言うことを本に書いて、どれだけの読者が読んでくれるのだろう。
 活字本は、本当に読者は手に取ってくれない。しかも、このような固い内容の物は受け付けてくれない。
 だから、漫画で書く意義があるのだ。

 それにしても、このまま、この材料を眠らせてしまっては犯罪的だな、と思う。
 一つの仕事をし終えて、もっと幸せな充実した気持ちになるはずだったのが、欲求不満の固まりになってしまった。自分を責める声が自分の心の奥底から響き渡る。

 今夜は、睡眠薬を飲んで寝よう。
 ああ、心が、昂ぶる。
 自分の無力さに対して、悲しみが募るのだ。
 しかし、一合升には一合の酒しか入らない。
 私が取材した材料は、一斗、二斗、一石(若い人達のために、一合は180CC。一斗は、その百倍。一石は千倍)だ。
 与えられた頁は一合にも満たない。

 入るはずがない、と自分で慰めて寝ることにする。(言い訳だな)

雁屋 哲

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