この、政治的空白の恐ろしさ
先日、朝のテレビ番組を見ていたら、いやな物を見てしまった。
それは、ニュース番組なのだが、若いアナウンサーが、嬉しそうに「今日は、凄いニュースが入ってきました」と言って、手に持った、フリップを見せた。
フリップには大きく次の数字が書かれていた。
28.8。
アナウンサーは非常に嬉しそうに、「鳩山内閣の支持率がここまで落ちました」と言った。
それを見ていて、それは、アナウンサー、と言うより、テレビ局の人々は嬉しいだろうと思った。
鳩山内閣が出来てから、検察の鳩山首相と、小沢幹事長に対する政治資金疑惑の捜査が続き、それをテレビ、新聞、雑誌で、検察のリークをこでもか、これでもか、と流し続けた。
一般の人間の情報源は、新聞、テレビ、週刊誌しかない。
そこで、連日、鳩山氏と、小沢氏を悪者として非難し続ければ、一般の人間はその情報を鵜呑みにするしかない。
その結果が、28.8パーセントという数字なのだ。
テレビの人間は自分たちが、鳩山首相をここまで引きずり落としたことを大手柄だと思っているのだろう。だから、あのアナウンサーは、鬼の首でも取ったように、満面の笑顔で、その数字を書いた紙をテレビカメラに突きつけ、視聴者に念を押したのだ。
鳩山内閣が出来てから半年間、鳩山内閣は何も仕事が出来なかった。
その第一の理由は、検察による、鳩山首相と小沢幹事長に対する攻撃だった。
そんな攻撃を受けていて、まともな政治活動が出来るはずがない。
この半年は、検察による政治妨害だった。
挙げ句の果てに、不起訴とは何だ。
検察の失態ここに極まれりだ。
今、日本は経済の破綻で苦しんでいる。
政治による対策が一刻も早く必要だ。
その時期に、検察は政治妨害をした。
鳩山内閣が何も仕事を出来ないようにしたのだ。
私は、民主党なんて自民党と変わらない、と思っている。
支持する意図は全くない。
しかし、検察の政治妨害はこれは別問題だ。
この半年、致命的に大事な時期に、日本は政治空白を持った。
今日のワシントンポストの第1面、オバマが核サミットで集った各国首脳と挨拶している写真が並んでいたが、鳩山首相との写真だけが載っていなかった。
もはや、日本はアジア各国の中で、中国・韓国よりも、世界的に意味が無くなっていることをはっきりと示している。
私は、ナショナリズムのような馬鹿らしい物は地上から全て消えなければ人類の平和と友情は成り立たないと思っている。
しかし、これから、百年間以上は、「国民国家」の時代が続くだろうと思う。
「国民国家」とは、たとえばアメリカのように、一つの人種ではなくさまざまな人種が集って「アメリカ」という国を作る。そう言う国家を、「国民国家」というのである。
その場合、ナショナリズムと同じ物が「国民国家・愛国心」として作用する。
アメリカ人の愛国心は異常な物がある。
この「国民国家」の形態が、われわれ個人の生活に影響を及ぼす。精神にまで影響を及ぼす。
どの国の「国民」であるかによって、その個人の人生が変わってくる。
世界は一つ人類はみな兄弟、などと言う理想論を言う前に、ちょっと考えて貰いたい。
読者諸姉諸兄よ、あなたが日本ではなく、例えば、今人権が甚だしく無視されている国に生まれていたとしたら、どうだったか。
今の状態で、人類は一つ、世界は一つ、全人類は運命共同体だから、互いに助け合おう、などと言っても、それは、世界の現在の真実の姿を見ようとしない、地に足のついていない夢想である。
これから、百年は、全人類が自分たちの過ちを認めて正しい方向に進む決心をするまでは、現在の国民国家の形態が地球上の人類の生き方を規定するだろう。
私は国民国家が必然的に国民に抱かせる「国民国家・愛国心」を心から憎む者である。(そんな物は、サッカーのワールドカップの時だけで充分だ)
しかし、今の状態で進んで行くと、我々日本人は、世界的にひどく惨めな状態に陥る。
百年先に達成できる理想を忘れてはいけないが、今日明日の飯の種をきちんと稼ぐ事を考えておかないと、百年先に、国民国家を克復して世界国家の理想を達成するときに、我々は、その理想の実現に何の役にも立たないことになる。
いやな話だが、周りの国がみんな、国民国家意識で、自分たちだけが栄えることを考えているときに、われわれだけ、百年先の理想を唱えて、現実に超然として、結果として貧困の底に沈むわけにはいかないのだ。
今の日本の惨状は、過去の自民党政府の政策の結果である。
それを、良い方向に戻すための政府がどうしても必要なのだ。
それが、現在の民主党政府とはとても思えないが、それにしても、民主党政権になってからの半年間の政治的空白が致命的だ。
28.8パーセントなどと言う札を掲げて喜んでいる、テレビ、新聞、などの報道機関も同罪だ。
あの、テレビニュースを見ていて、日本の復活は余程の事がない限り難しいと、深く落ち込んでしまった。