雁屋哲の今日もまた

2018-03-20

財務省の文書改竄

私の友人から、

「今回の財務省による書類の改ざん/隠蔽の顛末についてどう思うか、答えよ」

というメールが来ました。

私は、この問題については考えたくもないと思っているのですが、長い間いろいろと面倒を見てもらい、大変にお世話になっている友人なので、その恩義に応えるために何か言わなければなりません。

 

森友学園の経営する塚本幼稚園が幼稚園児に教育勅語を暗唱させたりするのは、「曲がった愛国主義」と捉えざるを得ません。

私はインターネットでその様子を見ましたが、あのような教育を幼稚園児にする人間の心の中を想像すると腹の底まで冷え冷えとします。

しかし、今問題とするのは、教育の中身ではありません。

あの財務省の文章改竄という犯罪行為についてです。

 

犯罪行為を行ったのは財務省の人間です。

しかし、「減点主義の役人が自らの意志で書き換えのような危険を冒す訳がない」ので、財務省を支配する権力者の意向に従ったものであると考えるのが自然でしょう。

 

改竄された文章という現物証拠がありながら、しかも文章を改竄したことを当の財務省が認めていながら、財務省の担当官僚が改竄せざるを得ない空気を作り出した張本人がしらを切り通している限り問題は解決しない、という不思議な状況に今の日本の社会はあるのです。

それは、誰も表だってその張本人の名前を言わないからです。

なぜ誰も、張本人の名前をはっきりと言わないのでしょう。

 

この文書の原本の存在を突き止め、文書改竄問題を報道したのは朝日新聞でした。

続いて、毎日新聞も改竄される以前の文書の存在を突き止めたことを報道しました。

なぜ、朝日新聞と毎日新聞だけだったのか。

他の新聞社は無能だったのか。

私はそうは思いません。

はっきり言えば、この問題に踏み込む勇気がなかったのでしょう。

朝日新聞が何故勇気を振り絞ったのか。

それは、朝日新聞がこの文書改竄問題を取り上げる寸前に、安倍晋三首相との対立があったからだと私は考えます。

 

この対立問題について、長くなりますが、書いておきます。

というのは、現在問題になっている財務省の文書改竄はこの対立時に既に始まっていたのではないかという疑問を私は強く抱くからです。

 

当時の報道をまとめると、

A)朝日新聞は2017年5月に、森友学園の籠池泰典・前理事長が証言したとして、小学校の設置趣意書に「安倍晋三記念小学校」との校名を記して財務省に提出した、と報道した。

B)財務省は、同年11月に立憲民主党にその設置趣意書を開示したがその中には、校名は「安倍晋三記念小学校」ではなく「開成小学校」となっていた。

C)2018年2月5日の衆院予算委員会で、安倍晋三首相は「裏取りをしない記事は記事とは言えない」と批判した。

D)翌6日朝日新聞はその報道経緯についての記事を第7面に載せた。

その中で朝日新聞は、

イ)「安倍晋三記念小学校」の名称は、学園が建設計画を進めていた当初、使っていた校名だった。

ロ)学園が14年春ごろ、運営する幼稚園の保護者に配ったとされる小学校への寄付金の「払込取扱票」には、安倍晋三記念小学校という文言が印刷されていた。前理事長も一時期、この校名で寄付金を募っていたと認めている。

ハ)2017年5月8日、衆院予算委員会で当時民進党の福島伸亨氏が財務省から開示された設置趣意書を示し、開示された文書のほとんどが黒塗りだったことを示した。(この文書を見たことのない人のために、5月22日の「週刊金曜日オンライン」から引用させて頂き、掲載します。無断引用で申し訳ないことですが、私が「週刊金曜日」創刊時からの定期購読者であることを考慮に入れて大目に見て下るよう「週刊金曜日」にお願いします。

黒塗り文書

 

写真はクリックすると大きくなります

 

 

この文書を見ると、文書の題名として「・・・・・」設置趣意書となっています。「・・・・・」の部分には設置する小学校名が入っているはずですがその部分が黒塗りになっています。

題名だけではなく、全部で100ページほどある文書の中で、黒塗りでないのは9ページだけ、と川内博文・元衆院議員は「週刊金曜日オンライン」の私が写真を引用したのと同じ記事内で証言しています。

それにしても、殆ど全てを黒塗りにした文書を「開示」と称して提示する財務省のこのやり方は、国民を徹底的に馬鹿にしたものでは無いでしょうか。

これは「開示」ではなく、「隠蔽」ではありませんか。)

ニ)福島伸亨氏は、その部分には「安倍晋三記念小学院(学校)」と書かれていたのではないかと質問。前理事長らに開示の同意を得たとし、説明を求めた。

同省の理財局長だった佐川氏は「学校の運営方針に関わることなので、情報公開法の不開示情報になっている」と拒み、前理事長の同意があっても、学園が民事再生手続き中であることを理由に、開示するとしても管財人への確認が必要だとも説明した。福島氏は「タイトル(文章の題名)がなぜ不開示なのか」と批判していた。

ホ)財務省が説明を拒んでいる以上、当事者の前理事長にどう記載したかを確認する必要があると考え、朝日新聞は同日の国会審議後にあったインタビューで複数回にわたって質問。前理事長は「安倍晋三記念小学校」と設置趣意書に記載したと答えた。

ヘ)記事では前理事長の証言にもとづき、「籠池泰典氏が8日夜、朝日新聞の取材に応じ、『安倍晋三記念小学校』との校名を記した設立趣意書を2013年に財務省近畿財務局に出したと明らかにした」と報じた。

ト)財務省は前理事長のインタビューから半年たった昨年11月、立憲民主党に対し、管財人から「開示されても支障がない」との意見書を得たとして、設置趣意書を開示。実際には小学校名が「開成小学校」と記載されていた。

チ)安倍晋三首相は5日の衆院予算委で「(昭恵氏が)棟上げ式に行ったと籠池さんが証言した。これも朝日新聞が大々的に報道した」と述べた。今年1月28日付の朝刊「首相夫人に言及 減額迫る」との記事を指していると見られる。

この記事では、前理事長ら学園側が16年春、国に土地の購入を申入れた時期の協議で「棟上げ式の時に首相夫人が来られることになっている」と言及しながら国有地の減額を求めていたことを音声データをもとに報じた。前理事長は「棟上げ式に来た」とは述べておらず、記事中にもそのような表現はない。

 

以上のようなことを書いた後に朝日新聞はさらに「森友学園への国有地売却問題と小学校の名称をめぐる経緯」として、2017年5月の記事が書かれた経緯を細かく書いています。

その中には、

ⅰ)2014年10月、学園側が大阪府に設置認可申請書を提出した。府教育庁の幹部によると、名称は「瑞穂の國記念小学院」となっていたが、申請前には仮称として「安倍晋三記念小学校」という名称も使っていた。

ⅱ)2017年3月、籠池泰典前理事長が、国会の証人喚問で「当初は安倍晋三記念小学校とするつもりだったが、昭恵夫人から首相の名前を使うことを遠慮して欲しいという旨の申し出があった」と証言。

などと、細かなことまで記載されています。

 

E)この朝日新聞の経緯説明が掲載されると、自民党の和田政宗参議院が、6日、フェイスブックの個人用アカウントで「謝れない朝日新聞」と批判した。朝日新聞の記事に「籠池氏の手元にあるはずの設置趣意書のコピーを記者が確認したかについて一切触れていない」と言い、「すなわち、していないと暗に認めた。やるべき取材をせずに、籠池氏の証言のみに頼って記事にし、結局誤報となったわけだが、全く謝罪なし」と批判した。

F)すると、安倍晋三首相が個人用アカウントで、「哀れですね。朝日らしい惨めな言い訳。予想通りでした」と書き込んだ。

 

さて、以上、長くなりましたが、A)からEまでに、朝日新聞が今回財務省の改竄問題を取り上げる前にあった安倍晋三首相との対立をまとめました。

長くなって恐縮ですが、ここまでは最低書かないとこの問題の理解は難しいと思うので、我慢して読んで下さい。

 

今回財務省の文書改竄問題が明らかになった段階で、安倍晋三首相と朝日新聞の対立を考え直すと、これまで考えることも出来なかったことを考えられるようになりました。

Ⅰ)その第一は黒塗り文書の問題です。

ここまで黒塗りにして何が情報開示なのだ、と驚きませんか。

しかも、文書の題名にある小学校名まで塗り潰してあります。

これでは何が何だか分からない。

この黒塗りについては、例の佐川氏が、「学校の運営方針に関わることなので、情報公開法の不開示情報になっている。前理事長の同意があっても、学園が民事再生手続き中であることを理由に、開示するとしても管財人への確認が必要だ」と説明しました。

要するに、学園のために黒塗りにした、と言っているのです。

「管財人への確認が必要だ」というのなら、どうしてその確認を得ようとしないのか。実に奇々怪々な答弁です。

佐川氏の言うことはいつもその場限りの言い訳です。

 

Ⅱ)第二は、財務省は前理事長のインタビューから半年たった2017年11月、管財人から「開示されても支障がない」との意見書を得たとして、設置趣意書を開示したことです。

その開示された文書には小学校の名前が安倍晋三記念小学校ではなく開成小学校となっていました。

 

さて、このⅠ)とⅡ)について、じっくり考えて下さい。

「なあんだ、黒塗りの下に書かれていたの開成小学校だったのか」とあっさり納得してしまった方、もう一度

「財務省は文書を改竄する役所である。しかも、佐川氏のようにその責任者もその場をごまかすための虚偽を述べ立てる。」

という事実を補助線にして考え直してみて下さい。

 

私は今や、この黒塗りの下から現れた文書も改竄の疑いが濃厚だと思います。

黒塗りを外してみれば、その下から「安倍晋三記念小学校」ではなく、「開成小学校」が現れたとは、まるで種も仕掛けも見え見えの下手な手品ではありませんか。

 

3月19日の参院予算委員会集中審議で財務省の太田充・理財局長は、現在問題になっている文書が改竄されたのは「2017年4月4日」であると説明しています。

2017年5月8日、衆院予算委員会で当時民進党の福島伸亨氏が示した財務省から開示された森友学園小学校設置趣意書は黒塗りでした。

3月19日に太田充・理財局長が説明した文書改竄時期の後です。

であれば、今回問題になった文書の改竄の際に、設置趣意書の内容も危ないと見て黒塗りにしたと考えるのは自然でしょう。

そして、その時期から11月に開示するまでの間に、黒塗りだった部分を「開成小学校」としたと考えても推理小説の読み過ぎのせいだとは言えないでしょう。

 

私のこの推理が正しいかどうかは籠池前理事長に確かめるのが一番です。あるいは、それしかないかも知れません。

しかし、それは出来ません。

籠池前理事長とその夫人は今まで6ヶ月以上も拘留され続けています。

日本のこの拘置・拘留制度は極めて政権の都合の良いように使われています。

2016年沖縄平和運動センターの山城博治氏が、米軍ヘリコプター離着陸帯(ヘリパッド)建設現場近くで鉄線を切断した疑いで逮捕され、2017年3月まで約五ヶ月拘留されたのがその一例です。

籠池前理事長は2017年3月に国会の証人喚問で色々と証言しました。

籠池前理事長が長期拘留されているのは、国会証人喚問の時より更に踏み込んだ証言をされるのを防ぐためでしょう。

 

私は今回の文書改竄問題とならんで、この設置趣意書問題も「本物の原文書」を開示して、真実を明らかにするべきだと思います。

籠池前理事長夫妻を直ちに釈放して、真実の解明をするべきだと思います。

籠池前理事長夫妻は若いとは言えない年齢です。その夫妻を拘置所に勾留し続けるとはなんという残酷な話でしょう。拘置所に勾留されて拘禁症で苦しんだ人の話を幾つか聞いています。

何のためにこんな長期間拘留するのか。これは拷問ではありませんか。

籠池前理事長夫妻の森友学園での教育方針や、国有地を不当な安値で購入した件については、私は強く批判したいと思いますが、長期拘留されて精神を痛めつけられたことについては深く同情します。

 

以上が、今回の改竄文書問題を朝日新聞が報道する以前に安倍晋三首相と対立した件についての事実関係と、それから得られた私の考えです。

 

 

安倍晋三首相は、設置趣意書の件で朝日新聞を「哀れですね。朝日らしい惨めな言い訳。予想通りでした」と言いました。

私はその安倍晋三首相の言葉が朝日新聞の闘志をかき立ててしまったのだと思います。

ここまで言われたら朝日新聞としても「このままでは済まされない」と発憤したのでしょう。

安倍晋三首相は墓穴を掘ってしまったというところです。

 

最初に私は何故朝日新聞だけがこの問題取り上げたのかと書きました。他の新聞が無能だったわけではない。

ただ、朝日新聞は安倍晋三首相に悪し様に言われたままでは朝日新聞がつぶれてしまうという危機感をいだき、発憤したからだと思います。

 

だらだらと長くなってしまったのでまとめましょう。

◎この文書改竄を安倍晋三首相が命じたという確証はまだ出ていない。予算委員会集中審議を見ても、財務省は佐川氏に責任を全部負わせている。

◎しかし、この改竄で誰が一番得をしたか考えて見れば改竄を命じた人間は誰なのか容易に推測がつく。

◎文書改竄は設置趣意書についても疑われる。

◎Youtubeに安倍晋三首相夫人昭恵氏が森友学園を訪問した時の動画が多数残されている。

それを見れば安倍晋三首相の夫人昭恵氏が森友学園と浅くない関係にある事はどんなに鈍い人間にもよく分かる。

◎安倍晋三首相は2017年2月17日の衆院予算委員会で、森友学園の小学校認可や国有地払下げに関して「私や妻が関係していたということになれば、首相も国会議員も辞める」と言っている。

ここまで、昭恵夫人の関わりが濃厚に示されたからには安倍晋三首相は辞めるべきだ。

これ以上安倍晋三首相が今の地位にしがみついていれば、国政の混乱は甚だしくなる。

 

また最初に戻りますが、朝日新聞も含めてなぜだれもが、改竄を引き起こした張本人の名前を言わないのでしょうか。

それは、財務省の担当者がはっきりと張本人の名前を挙げるか、安倍晋三首相本人が認めない限り、「改竄を命じた張本人は安倍晋三首相である」であると言う確証はないことになり、うっかりそのようなことを書くと安倍晋三首相側から攻撃されることを恐れてのことでしょう。

 

私も今回、うっかりしたことを書かないように気をつけて書きました。

しかし、もう、その心配もなくなる日は近いと思います。

3月19日の新聞各紙は、世論調査の結果安倍晋三首相内閣の支持率が40パーセントを切ったことを報道しています。

安倍晋三首相は人々を覚醒させました。

安倍晋三首相は、プーチン、習近平、金正恩、とは違います。

人心が離れれば、その座を追われます。

 

今度の文書改竄問題は本当に汚らしい話です。

早くきれいな結末を付けるのは私達国民の責任です。

 

 

雁屋 哲

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