雁屋哲の今日もまた

2013-01-25

国賊とか、切腹とは何のことだ

13-01-25 国賊とは何のことだ。

実は、この記事は、1月18日にこのブログに載せた物だ。
しかし、ここに書いた人物、石原慎太郎氏を私は心底嫌いなので、氏の名前を私のこのブログに書くことだけで、このブログが穢れるような気がして、翌日、書き込みを削除したのだ。
しかし、その後の、日本の動きを見ていると、沈黙している訳にはいかないと思い、嫌な人間の名前を書かざるを得ないが、再び乗せることにした。

2013-01-18付けの読売新聞ネット版によると、

《小野寺防衛相は17日夜のBSフジの番組で、鳩山元首相が中国側に対し、沖縄の尖閣諸島をめぐり、「係争地である」との認識を中国側に伝えたことについて、「中国側は『実は日本の元首相はこう思っている』と世界に宣伝し、国際世論を作られてしまう。言ってはいけないが、『国賊』ということが一瞬頭のなかによぎった」と述べ、激しく批判した。》

私は鳩山氏の擁護をするつもりは一切無いが、この小野寺防衛相の言うことはあまりに馬鹿げている。
現在目の前で起きていることをきちんと、しっかり見ることが出来ない、認識できない、どこか頭に変調を来している人間でしかこんな事は言えないだろう。
現実をちゃんと見なさい。
中国が,尖閣諸島の領有を主張して、中国国内では反日暴動を起こす、尖閣諸島近辺には艦船を派遣する、戦闘機が尖閣諸島周辺の日本の領空を毎日のように侵犯している。
これこそ、尖閣諸島が日中の係争の地となっていることの証拠だろう。
この防衛相は何を言いたいのか。
「尖閣諸島は日本の領地と決まっているから、そこの領土権争いはあり得ない」と言っているのか。
目の前で現実に起こっていることを、見ないようにするのか。

挙げ句の果てに、防衛相は鳩山氏を「国賊」と言いたかったようである。
「『国賊」ということが一瞬頭に中によぎった」
こう言う言い方は、政治家がよく使う手法で「私は『国賊」とはいっていませんよ、ただその言葉が頭をよぎっただけです」といえば、それで「鳩山氏を国賊である」とはいわなかったと、強弁できる。
しかし、一般には、「鳩山氏は国賊である」というメッセージは充分に伝わる。

だが、なぜ鳩山氏が「国賊」なのか。
「国賊」の定義はどの辞書でも簡潔である。
広辞苑でいえば、
「国を乱す者。国に仇する者。」
と言うことになる。
鳩山氏は「尖閣諸島が係争地である」と言ったことで、何か国に害をなしたか。
「国賊」とは重い言葉である。政治家が他の政治家に対していったのだから、その重さは格別である。
防衛相は、はっきりと、鳩山氏が国賊であるゆえんを、明確に述べなさい。

「安倍政権」は、「尖閣諸島は日本の領土」ということは決まったことであるから、それを中国と争うことは、既成の日本の国益を損なうことである、と言う考えなのだろう。
だから、「尖閣諸島」では、領有権の争いなどあり得ないと言う超然とした態度をとりたいと思うのだろう。

それは、安倍内閣の防衛相として無理なことである。
なぜなら、親分の安倍晋三氏は「尖閣諸島は日本の領土である」ことを主張し、2013-1-06日のNHKのニュースによると、《領空や領海が侵犯されないよう万全の態勢を整える必要があるとして、航空自衛隊の戦闘機や海上保安庁の巡視船の運用の見直しを指示》した。
これで、安倍内閣が、尖閣諸島問題に対して超然とした態度をとっていると言えるか。
明らかに「日中の係争の地となっている」ことを、安倍晋三氏が上記の文で明らかに明言しているではないか。

さらに、航空自衛隊は、領空侵犯してきた中国機に対しては曳光弾を使って威嚇するといっている。
これに対して、中国政府は「曳光弾を発射した段階で攻撃された物と受取って対抗する」といっている。
ただ、航空自衛隊の話を聞くと、これは中国軍の、意図的かそれとも無智故のことばなのか、この曳光弾発射は、相手の飛行機に向けて撃つ物ではなく、航空自衛隊の飛行機は、相手の飛行機と平行に並んで飛び、その間に前方に向けて曳光弾を撃つのだそうで、相手の飛行機に対して180度の方向に向けてうつのだから、相手の飛行機に何らの被害も及ぼさない、のだそうだ。
それを、正確に知って知らずか、中国政府は威嚇してきている訳だが、このような事象を踏まえると、尖閣諸島はあきらかに「紛争地」である。

防衛相の意図は明かである。
今の状況を、日本側に損が及ばないように穏便に収めたい。
だから、あの状況を「係争」といって欲しくない、ということなのだ。
その状況を正しく「係争」といった鳩山氏は安部政戦にとって不都合である。
そこで、鳩山氏を「国賊」扱いしたのだろ。
ああ、なんと言う現実に対する認識不足だろう。
鳩山前首相は「国賊」なのではなく、「安倍晋三」一派が鳩山氏の言葉を気にいらないことでしかないのである。
安倍内閣が勝手に自分たちを「日本国」である、と僭称するのはやめなさい。
安倍内閣の意見に染まない物を国賊と呼ぶとは、思い上がりも甚だしい。
知的劣化の度合いが進みすぎていないか。

中国は、今や、ナショナリズムをかき立てることで、国の舵取りが上手く行っているのである。
中国は、江沢民が反日政策を推し進めることで「外危内安」政策で中国の国民を導いて、経済発展を進めて来た。
「外危内安」とは、「外が危ない、外に敵がいる」と国民を煽り、それによって「国の内部の統一を図る」という、昔から権力者が取ってきた国を動かす手法である。
中国は、1989年の天安門事件以後、国の内部の言論を弾圧すると共に、国民の関心を外に向けるために「反日」をそれ以前の政権には見られない勢いで煽り立てた。
国民の不満を、「反日」に向けて、国内の政治不安を押さえてきた。

日本が戦後六十年以上になるのに、きちんとした戦後処理を行って来なかったことが大本にあるのだが、江沢民自身が非常に日本嫌いと言うこともあって始めた「反日」政策がここまで、中国国内に留まらず在外中国人の間にまで深く広がるとは江沢民自身考えなかったことなのではないだろうか。
大の日本嫌いの江沢民には、満足のいく結果なのかも知れないが、これから最低百年間は憎まれる日本だけでなく、憎む中国にとっても、好い果実は望めないだろう。

そもそも、尖閣諸島を「係争の地」に仕立て上げたのは、前東京都知事である石原慎太郎氏である。
石原氏が都民の税金を使って、尖閣諸島を買った(私は、それまで、尖閣諸島が個人の、それも日本人の持ち物だったということを知って驚いた。)
そこを慌てて、野田首相が、尖閣諸島の国有化宣言をした。

それまでの日中の合意では、「尖閣諸島問題は棚上げにする」という物ではなかったか。
もちろん、それまでに、尖閣諸島問題について日中で色々論じられていたが、尖閣諸島を買い上げ、国有化すると言う具体的な行動に出るのは、棚上げ論から大きく逸脱している。
中国は、それでなくとも、現今の経済的な不振から国民の目をそらさせるためにナショナリズムを煽りたいところだった。
そこに、尖閣諸島を都が購入して、さらに国有化する、と言う行為は、飛んで火にいる夏の虫と言うべき愚行で、中国からしたら待ってました、と言うところではなかったのか。
日米戦争開戦前に、日本海軍はパール・ハーバーを攻撃した。
これで、アメリカ人の対日抗戦意欲は一挙に爆発して、アメリカは「先に攻撃されたから」ということを大義名分にして、原爆投下も、非戦闘民虐殺の日本各地の大爆撃も、全てをパール・ハーバーを原因にして正当化することが来た。
今度の、尖閣諸島を都が買い上げ、国有化したことも、中国にとっては、パール・ハーバーみたいな物だろう。

その結果が、中国各地での反日暴動であり、日中貿易の甚だしい落ち込みである。
石原慎太郎氏の愚挙に始まり、その愚挙に釣られた野田首相の盲動に、中国は一気に乗ってきた。
一国の指導者達が、天文学的な数字の巨富をため込むとは現代の世界では考えられない事なのだが、中国の指導者達は、上から下まで、非常識な額の富をため込んでいる。
江沢民に至っては、清国最後の皇后、西大后の別荘を自分の住まいとしている。
清朝の皇帝気取りなのだ。
このように腐敗した上層部は、自分たちの権力の足下を掬われないように、外危内案政策をさらに推し進めて、日中友好など知ったことではない、自分たちの権力の維持拡大に全力を尽くすだろう。

中国の新しい指導者、習近平は胡錦濤以上の保守・強硬派だという。
日中関係はこうなってしまったら、五年や十年でどうなる物でもないだろう。
情けない話だ。

それにしても、だれも、この騒ぎの元凶である石原慎太郎氏を批判しないのは何故なのか。
正直に言わせて貰うが、氏の知的後退はかなり顕著ではないか。
時々、インタビューの際に、ぽけーっと放心したような顔をする、そして思い出したような紋切り型の乱暴な言葉を口に出す。
都庁に出て来るのは週に、二、三回だったという。
殆ど知事としての公務が出来ていない状況だったようだ。
老人性の知的後退の進んだ人の見せる行為として、後先の見境なく自分の子供っぽい勇ましい言辞をひけらかすことがある。
氏は今回尖閣諸島を都の税金で買うと決めたときに、どのような精神状態にあったのだろう。

知的に後退した老人の、思いこみ、きまぐれで、日本と中国の関係がこれ程までに険悪になってしまった。
普通の人間なら、それに対して何とかいうべきだが、氏は、一言三言、紋切り型の論理を全く欠いた単語を並べるだけである。
知的で論理的な言葉を、原稿用紙一行の文書でも並べる力がないようである。
氏は「若い者がちゃんとしないから八〇歳の私がしなければならないんだよ」といった。典型的な、耄碌した老人の言葉である。老耄した人間はこのように、自分に従う無力な手下共を脅かすのが好きなのだ。
日本経済に大きな痛手を与え、日中友好を破壊した、石原慎太郎氏こそ真の「国賊」である。
氏が,日本と中国に与えた損害は、巨大である。
日本の「経団連」なり、経済団体は、どうして氏を訴えないのか。

大体、七十歳以上の政治家は、MRIによる、各自の頭脳の画像を公開するべきだ。
私も自分の頭脳のMRI画像を見て、愕然となった。
年相応に、頭脳は萎縮しているし、意識もしていないのに梗塞の痕も幾つもある。
これが、自分の頭脳の真の姿であると見せつけられると、脚が震えた。

さて、石原氏のMRI写真はどうであろうか。
氏の、最近の言動と合わせて、ぜひ公開するべきである。
「国賊」の頭の中身を見たいと思うのは私だけではないはずだ。
衆議院議員でしょう。みんなに、少なくとも投票してくれた人達には見せなさい。
それは、義務ですよ。

と、以上は1月18日に書いた物である。

その後、鳩山氏が中国から帰ると、安倍晋三氏に忠誠を誓おうとする人間達は、鳩山氏に「切腹しろ」などと言った。
恥の上塗りとはこのことで、恥を知らないからどんどんその上に恥を塗っていく。
念を押すが、私は鳩山氏自身を支持する訳ではない。
しかし、尖閣諸島が係争地であると言う事実を押し隠して何をしたいのか、その連中に尋ねたい。

雁屋 哲

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