雁屋哲の今日もまた

2012-08-16

「ケチカ君」に餌を与えないで

このことについては、私の考えをきちんと述べておかなければならないだろう。
ロンドン・オリンピックの男子サッカー第3位決勝戦で勝った韓国の選手が、「竹島は韓国の物だという意味の文句を書いた」、札だか、幕だか、プラカードだか、そんな物を競技場で全世界の人達が見えるように示した。
幕だか、プラカートだか、札だか分からないと言うのは、私がその場面を見たのはインターネットの写真だけであって、その時の状況を知らないからだ。

私は、それを見て、「なんと言う愚かなことをするのだろう」と思った。
その思いは今も変わらない。
あれは、あの選手の全くの愚挙、軽薄なナショナリズムに踊らされた、愚劣な行為である。
ああいうことを世界の目の前で演じてみせることが、どれだけマイナスの効果を自分にも、韓国にも、世界中に与えたか、良く考えるべきである。
しかも、自分の主張をハングルで書いてどうする。だれが、あの意味を理解出来たか。
単に、韓国選手が政治的な主張をオリンピック憲章に反して行ったという負の印象しか与えなかっただろう。
あんなことをすれば、世界中の人達が竹島問題について韓国側に立つだろうと考えるとは、飛んでもない思い違いで、世界中の人間が白けた、だけである。

私たちきちんと日本の現代史を学んだ人間は、1910年の日韓併合後とそれ以前の間に如何に日本が韓国・朝鮮に無理無体なひどいことをしてきたか良く知っている。
戦前・戦中にかけて多くの朝鮮人を強制連行して,厳しい労働をさせたこと、若い男は日本軍兵士として徴集したこと(戦後の戦争裁判で、韓国人・朝鮮人の下級兵士がBC級戦犯として死刑に処せられた例もある)、若い女性達を性奴隷として強制連行したこと、に対して謝罪するだけではなく、賠償をしなければ、我々は朝鮮・韓国に対して、真の友好をこちらから望む訳には行かないことを知っている。

先日、紹介した、雨宮先生の文章を、もう一度ここに、引用させて頂く。
先生は、前回私が紹介させて頂いた「もう一つの強制連行 謎の農耕勤務隊」という本のあとがきに、次のように書いておられる。
「本書が過去の日本が朝鮮半島で犯した罪に対する一日本人の赦罪と償いの表明として受けとめられ、たとえささやかであっても両者の和解への一歩に役立てばと祈りつつ編んだ次第である。繰り返しとなるが、日本にも日本人にも罪深い過去を正視し、心から詫びることの出来る人間として本当の勇気を持った国際社会から心から信頼され、尊敬され、愛されるようになって欲しいと私はひたすら祈っている。
そして、『国際社会において名誉ある地位を占め』ようではないか。
その実現には、最も近い諸国との間に一日も早い和解の成立が必須条件である。和解に至るには、私たちの側に過去に対する正しい歴史認識、罪責感と心から詫びようとする謝罪の意識が不可欠である。さらにいえば、形の如何を問わず補償がなくてはならない。その時私達は初めて赦され、和解と平和が現実となり、東北アジアが最も安定した平和を作り出す地域となり、国際平和に最も大きな貢献をなし得る地域となりうるであろう」

私は雨宮先生のご意見に全く同感なので、韓国に対して和解を提案する前にきちんと「謝罪と償い」をしなければならないと考えて、そのことを、機会あるごとに日本人に訴えかけている。

竹島(独島)問題についても、日本と韓国の間の友好をどのように再構築できるのか、真剣に考えている人達は日本に少なくない。
そのような日本人は、様々な運動を起こしている。

ところが、私たち側のそのような努力に対して、今回のサッカー選手の愚挙が、砂をかけてくれた。

あの韓国人選手が見せたナショナリズムは、世界中に見ることが出来る悪しきナショナリズムの典型である。
私自身は、世界を平和にするために努力したいのであって、どこの国のナショナリズムにも荷担するつもりは全くない。
そもそも、この世の中によいナショナリズムなど存在する訳がないから、私は日本のナショナリズムにも、韓国のナショナリズムにも、中国のナショナリズムにも、当然欧米各国のナショナリズムにたいしても、ナショナリズムこそ世界平和を阻害する物だ、と思っている。

韓国選手のこの行為に、直ちに反応する愚かな日本人達がいる。
韓国の選手がJ1に移籍することに対してJリーグ事務所に抗議が多く寄せられているという。実に情けない、浅ましい連中がいた物である。
あの韓国選手の行為が、日本に腐るほどいる、嫌韓人種に勢いを付け、われわれ韓国との友好を願う人間の妨害をする力を得たのである。

愚挙には愚挙が反応する。
愚挙が互いに絡まり合ってしまうと収拾がつかなくなる。
日韓、双方とも、今回のような愚挙は慎もうではないか。
お互いの願いはなんなのか。お互いの真の友好なのではないのか。
私は、日本が完全に謝罪し、補償を行い、その結果として、韓国・朝鮮との完全な和解を成し遂げることを望んでいる。

日本には、嫌中・嫌韓の言辞を振り回す人達が大勢いる。
私は彼らを総称して「嫌中・嫌韓君」では長いので「ケチカ君」と呼んでいる。
過去の日本が韓国・朝鮮に対して行った罪業、現在もきちんとした謝罪も補償を行わない日本政府の悪辣で理不尽な態度、これに対して韓国人・朝鮮人は当然抗議をするべきだが、それは、堂々とした毅然とした態度でして貰いたい。
今度の、オリンピックでのサッカー選手のようなことをして、日本の「ケチカ君」達に餌を与えないように気をつけて貰いたいのだ。

雁屋 哲

最近の記事

過去の記事一覧 →

著書紹介

頭痛、肩コリ、心のコリに美味しんぼ
シドニー子育て記 シュタイナー教育との出会い
美味しんぼ食談
美味しんぼ全巻
美味しんぼア・ラ・カルト
My First BIG 美味しんぼ予告
My First BIG 美味しんぼ 特別編予告
THE 美味しん本 山岡士郎 究極の反骨LIFE編
THE 美味しん本 海原雄山 至高の極意編
美味しんぼ塾
美味しんぼ塾2
美味しんぼの料理本
続・美味しんぼの料理本
豪華愛蔵版 美味しんぼ
マンガ 日本人と天皇(いそっぷ社)
マンガ 日本人と天皇(講談社)
日本人の誇り(飛鳥新社)
Copyright © 2017 Tetsu Kariya. All Rights Reserved.
掲載の記事・写真・イラスト等のすべてのコンテンツの無断複写・転載を禁じます。