雁屋哲の今日もまた

2010-09-22

暑いねえ、今年は

初春の候を迎えて、さまざまな花が咲き始めて実に気持ちの良いシドニーを後にして、9月12日に日本へ戻ってきて既に10日経ったが、意義のある日は、ただ1日だけ。
18日に安川寿之輔先生の福沢諭吉についての講演を拝聴し、飛び入りで一言余計なおしゃべりをさせて頂き、その後会食に参加した。そのことだけ。
その会食は楽しかった。
本当に真面目に物事を考える方ばかりで、みんながこう言う自由で正義感あふれる人間だったら、この社会も、ここまでひどくはならなかっただろうに、と思う。
安川寿之輔先生は78歳だそうだが、実に若々しく、身のこなしも軽い。
結構、お酒も飲まれる。
そして、論理がさえている。
高文研という真面目な本ばかり出している出版社の編集者が間に入ってくださって、安川寿之輔先生にお会い出来たのだが、福沢諭吉研究の第一人者である安川寿之輔先生と出会えたことは私の人生にとって、素晴らしいことだった。
私は、来年の春を目指して、中学生にも分かるような内容で福沢諭吉についての本を書く準備を現在進めているが、一番助けになるのは安川寿之輔先生のお書きになった福沢諭吉研究の4冊の御本である。
福沢諭吉についての研究者の本を色々読んだが、安川寿之輔先生のように、筋道を立てて論理的に解明していく、また、その論理の筋道の検証が誰にでも出来る、そう言う研究者は安川寿之輔先生だけである。

自然科学の世界では、一つの論を立てる際には、まず、誰でもが検証できる事実を元に、論理を組立てていく。その論理の筋道が、第三者にも検証可能であること、が基本である。
ところが、おうおうにして、社会科学の世界では、その点が曖昧である。
例えば、福沢諭吉について言えば、多くの福沢諭吉の論文の中から自分に都合の良い物だけ選び取り、論をこねくり回して、自分独自の福沢諭吉像を作り上げる。
しかし、そのような論は、福沢諭吉の別の論文を持って来るとあっけなく崩れてしまう。
そう言うおかしな論文でも、論文を書いた人が、俗世間的な名声があり、社会的な地位があると、高く評価されてしまう。
自然科学の場合、結果は明確な数字で出て来る。
社会科学の場合は曖昧な「心理的納得」が結果であるような場合が少なくないのではないか。

安川寿之輔先生の御本の場合、そのように、恣意的に福沢諭吉の論文を選んで勝手に安川流の福沢諭吉像を作ると言う方式ではない。
福沢諭吉の論文を細大漏らさず網羅的に読んで、それを元に科学的に論を進める。
非常に明快である。
福沢諭吉の思想も、人間像も、福沢諭吉の書いた文章から把握できる。
思いこみや、偏見は一切入っていない。真実のみである。

それでは、安川先生のその4冊の御本があるのだから、今更私のような学者でもない、ただの漫画原作者ふぜいが福沢諭吉について、何も言う必要はないようだが、安川寿之輔先生のような専門家の書き方と、漫画原作者の書き方とでは、方法が違うので、別の角度から福沢諭吉を描くことが出来るかも知れない。私の本を読めば、もっと福沢諭吉について詳しく知りたくなって、安川寿之輔先生の本に進んでくれれば有り難い。私の本は、福沢諭吉への入門書という位置づけだと思う。

それが上手く行くかどうかは、これからの私の努力にかかっている。
安川寿之輔先生という、偉大な導き手のお力もお借りして、絶対に成功させてみせる。

今年の暑さは異常だが、世間も異常だ。
あの、大阪検察庁の主任検事は何なのだ。
証拠物件であるフロッピーディスクを「遊んでいる内にデータをいじってしまった」と仰言る。
証拠物件で遊ぶのかい。ええ?検事さんよ。
また、データをいじった方のフロッピーの情報ではなく、いじらない方の情報で調書を作ったのはどう言う訳だろう。いじった方のデータを使わないのなら、何のためにいじったんだ。
その辺の解明が必要だ。何か非常に臭いものを感じますね。
それに、いじったら、それこそ証拠隠滅のために、いじった形跡を消しておけばよいのに。
訳の分からない人間がいるものだ。
しかし、こう言う人間が大阪検察庁のエースだというのだから呆れる。
この人間は、小沢一郎氏の件でも東京に出て来て小沢一郎氏の秘書を取り調べている。
小沢一郎氏の件でも、不正をしているのではないか。

大阪高検と言えば、公金の不正使用で検察庁を訴えようとした、元検事を、その直前に不可解な容疑で逮捕してしまった経歴がある。

検察庁がそれでは、ほんまによう言わんわ。

小沢一郎氏追い落としの件では、検察庁は大成功だ。
検察庁のリーク→マスコミの一斉報道→マスコミの世論調査(マスコミに煽られた大衆は検察のリーク通り小沢一郎氏を悪の権化と思う)→世論調査を真に受けた党員たちによる民衆党代表選挙で、小沢一郎氏敗北。

菅直人首相は、はやばやとアメリカ追従路線を打ち出したし、これで、日本の支配者層は一安心という物だ。
こう言ういい加減な検察庁が、日本を動かしているかと思うと、村木氏ではないが「本当に怖い」

ところで、話が変わるが、桂歌丸はいい噺家になったねえ!
「笑点」なんかに出ているので、軽く見ていたら飛んでもない。
この、二、三年、ずいずいずいーっと伸びた。
噺家は歳を取らないと駄目なのかな。
いや、そんなことはない。歳を取っても、駄目な噺家は、駄目なままだ。
桂歌丸はよほど精進したに違いない。
12月3日に横浜で桂歌丸の独演会がある。
「美味しんぼ」の取材に協力してくれるカメラマン安井さんのご好意で入場券を手に入れた。
今から楽しみで仕方がない。
演目は何なのだろう。

雁屋 哲

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シドニー子育て記 シュタイナー教育との出会い
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