雁屋哲の今日もまた

2009-06-03

読者の皆様、有り難うございました

 前回の、PHについての私の間違いについて、今月コンビニエンス・ストアで発売される、マイ・ファースト・ビッグ版「美味しんぼ」に掲載される「美味しんぼ塾」に以下のような文章を書いた。

《今回は、まずお詫びから始めなければならない。
 私のホームページ(http://kariyatetsu.com)に、ある読者がメールを下さって、「前回の『美味しんぼ塾』の冒頭で、地球温暖化と二酸化炭素について述べている中で『海水が酸性化したために、ある地域ではそれまで岩を覆って繁殖していた貝がその数を減らしているところをテレビでは見せた。その時研究者の示したその地域の海のPH値は7.8だった。PH値7が中性だから、その地域の海水は確かに酸性に傾いている。』と、書いているが、PHの値が7以上ならそれはアルカリ性ではないか。PH7.8を酸性というのは、間違いだ。」と指摘された。
 私はそのメールを見て、飛び上がった。
 PHの値が7以上ならアルカリ性、7以下なら酸性、などと言うことは中学で教わることではないか(今では小学校で教わるかもしれない)。
 自分の原稿を確かめたら、本当にそう書いてある。一体どうしたんだろう。
 私は全身から力が抜け、気力も失せた。大学では量子力学を学んだというのに、私の老耄もついにここまで来たか。なんという情けないことだ。
 私は早速その読者に、PH値について逆のことを書いてしまったことを謝罪し、その研究者の研究自体は間違っているとは思えず、単に私が数字を見間違ったのだと思う、と言う内容のメールを送った。
 そのことを、ホームページに書いたら、「pH7.8とお書きになったことを何かの間違いだったと誤解されていらっしゃるご様子がお気の毒に思えたので、メールさせていただきました。
 海水はもともとpH8以上のアルカリ性なので、それがpH8に近づき、より中性に近づく今の状態を酸性化と表現されているのをWeb上に複数確認しました。ですから、雁屋様の書かれたことは何も間違ってはいなかったと思われます。どうぞこれ以上このことをお気にやむことのないように。」と言う、大変に心やさしいなぐさめのメールを頂戴した。
 その感激もさめないうちに、またもう一人の読者から、
「私は植物プランクトンの研究を専門にしています。海水の「酸性化」そのものが専門ではありませんが、その辺の事情は良くわかっています。
 雁屋さんが主張なさった、海のpHが7.8を示すように「酸性化」傾向にあるのだという文自体は、学問的には全く正しいのです。ただ、言葉の定義と背景が一般の方にはわかりにくいために、誤解されかねないかな、とは思います。
 場所や時期にも多少左右されるものですが,もともと海水のpHは約8.3付近にあります。なので、もしpH7.8を示す海があるならば(私の常識的には)それは、相当「酸性化傾向」にあると言えます。真水を中性と定義するという中学校の常識から言えばpH7.8は確かに弱アルカリですが、pH7.9がpH8.3より(相対的に)酸性だ、という言い方もまた正しいのです(大学ではそのように教えます)
 雁屋さんが、「もともとpH8.3程度であった海が、pH7.8まで酸性化した」とおっしゃるのであれば、100点満点です。

 p.s. それとついでですが、海の酸性化は大気中の二酸化炭素が溶け込んだからという単純なメカニズムで起こるわけではありません。ただ、それは余りに専門的になってしまうので、よろしければ本をご紹介しますが、ここでは控えておきます。複雑だということをご理解いただければと思います。」
 
 ああ、何と言う心やさしい方々であろうか。私は、すっかり落ち込んでいた心が、救われたような思いがした。
 本当に、助け船を出して下さった方にはなんと言ってお礼を言ったら良いか分からない。
 しかし、
 一、私がPHの値について反対のことを言った。
 二、私は、いつも、魚介類の保護とか、水質保全などと声高に唱えながら、その実、海水自体がアルカリ性であると言う、海水についての基本的な知識を持っていなかった。
 と言う二つの過ちは消えない。
 読者諸姉諸兄に、あの過ちをお詫びすると同時に、海についてもっと基本的なことも含めて深く勉強し直すことをお誓いして、お許しを請いたいと思います。
 如何にうっかりとは言え、本当に、恥ずかしいことをしてしまいました。
 それにしても、こんなに優しい読者をもって私は本当に幸せです。
 皆さん有り難う御座いました。
 これからも皆さんの御期待に沿うように頑張って参ります。よろしくお願います。》

 と、まあ、以上の文章で、前回のPHについての問題は、お許し下さるよう、読者諸姉諸兄にお願いします。
 また、この文章を編集部に送った後に、私を慰めてくださるメールを頂戴した。原稿を送った後だったので、上記の文章に付け加えられなかったが、深く感謝します。
 おかげで、海についてもっと深く勉強しなければならないという意欲が湧いてきた。
 鬱も、少しはれました。
 次回からは、久しく中断していた、反「嫌韓・嫌中」を開始しようと企んでいます。
 読者のみなさま、本当に有り難うございました。

雁屋 哲

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