雁屋哲の今日もまた

2012-12-14

部落問題についての訂正

前回、部落差別について書いた文章の中に大きな誤りがあることに気がついた。

過ちは他にもあるかも知れないが、取りあえず、二つばかり過ちを訂正しておきたい。

1)まず、上杉聡氏の著書「天皇制と部落差別」(1994年、三一書房刊)18ページを引用する。
《日本の歴史で、「奴隷的賤民」と「被差別部落」の二種類の賤民があり、「奴隷的賤民(古代では奴婢、中世では下人、近世では娼妓など)は所有にもとづき、「被差別部落」(穢多、非人、隠亡など)は排除にもとづく賤民だ、と言うことである。この二種類の賤民を明確に区別することは大切で、よく「部落」をあたかも「奴婢」のように考えて、売買されたり、単純にこき使われる賤民と混同している場合が多いことを残念に思う。「奴隷」と「部落」は異なっていて、とりわけて所有物として売買されるか否かは、両者の決定的な違いである。》
(註:「奴婢」とは、男女の奴隷。「隠亡(おんぼう)」とは死体の始末をする仕事をする人達)

この上杉氏の指摘は正当である。
私は、前回の文章の中で、「部落民」「非人」を武力によって権力者に権力を奪われたものとして書いた。
それでは、受取りようによっては、「部落民」「非人」は「奴隷」であるとしかおもわれない。
しかし、現在「部落民」としてして差別されている人達の中には、武力によって権力を奪われ、被差別階級に落とされ人間の末裔もいるだろうが、それだけではない。
私の前回の書き方では正確ではない。
権力によって「穢多、非人、隠亡」などと区別され、その範疇に入れられ「部落民」とされた人が多いのである。

2)現在被差別部落人達への、差別する側の態度を見ると、自分たちとは違う人間として扱う、と言う側面が大きい。
必ずしも、「士農工商」のさらに下の階級として捉えられていたのではない。
むしろ、そのような階級社会の外にある人間、社会外の人間として扱われていた。

差別する側は、被差別部落民達を自分たちの社会の外にある人間として排除するのである。
したがって、被差別部落の人達を自分たちの家族、会社、仲間、に入れまいとする。
自分の下に見ることより、自分たちの社会に入る事を許されない者として排除する方がその差別の度合いは遙かに強烈である。

私の前回文章の中の大きな間違いの内の二つは以上である。

まとめると、
a)「被差別部落」の人達は必ずしも、武力的に権力を奪われた人達の末裔ではない。「穢多、非人」などのような枠組みに追いやられた人達が多い。
b)「被差別部落」の人達は、階級社会の、最下級のさらに下というのではなく、社会から「排除」されている人達である。この社会の「外の存在」として捉えられているのである。
社会に、その階級序列の最下層のさらに下としてでも加えられていれば、階級をよじ登って少しでも上に上がることも可能だが、その社会に加わることを「排除」されていては、努力のしようがない。

以上、前回の過ちの内二つを訂正しておいた。

被差別部落問題、差別問題は、非常に根が深く大きな問題だ。
あまりに、問題が大きく複雑で、一人の人間の意見が必ず他の人間の反対を買う。
しかも、差別をなくしたいと思って部落問題について書いても、当の差別を受けている人達から、余計なことを書いて寝た子を起こすようなことをするなとか、差別を助長するとか、差別の理解を妨げるとか批判されることも多い。

そういうことで、被差別問題については書くことをためらう人が多い。
物書きとしては勇気がいる。
そんなことを書いたところで、非難を浴びるだけで、何の得にもならない。
黙っている方が賢いだろう。
しかし、私も歳を取った。あと何年生きられるか分からない。
では、人が尻込みすることでも、書くべきことであるなら書いて行こう。

で、私は心を決めた。
被差別問題そのものを、深く追及し始めるときりがないし、専門家でもないので、決定的なことは書けないが、被差別問題を考えるきっかけになることを、中学生にも理解出来るやさしい分かりやすい形で、これから、このページで、書いて行くことにする。
あくまでも、部落問題を考えるための最初の手掛りを作りたいのである。

怠け者の上に、鬱病と闘いつつ生きている私なので、文章が早く進むとは限らない。
しかし、きちんと書くつもりなので、差別問題が分からなくて困っている人達に、分かりやすく考える道を付けることをお約束します。

雁屋 哲

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