雁屋哲の今日もまた

2011-12-08

緊急のお願い

またまた、大変ご無沙汰しました。

11月12日から、19日まで福島県を数ヵ所回ってきた。
現在連載中の「美味しんぼ」被災地篇・めげない人々、もあと二回で終了する。
この被災地篇ではかつて訪問した、青森、岩手、宮城の人々を訪ね歩き、彼らが深甚な被害を受けたにもかかわらず復興の努力をしている姿を描いた。
しかし、肝心の福島については何も言及していない。
肝心の福島の被害状況と、食と放射能の問題にきちんと対峙しないことには、今まで食の安全、食環境問題を取り上げてきた「美味しんぼ」の意味がない。
そこで、福島の実態を自分の目で確かめるために、8ヶ月近く経ってからでは遅すぎるとは思いながらも、訪ねてきた。
しかし、実際には遅すぎることはなく、返って8ヶ月経っていったことで、よく分かることが多かった。 

その件の報告は次回から始めるとして、今回は、緊急のお願いがあって、こうして書いている。
話を始める前に、福島県の地図を見て頂きたい。
この地図は、「財団法人 福島県農業振興公社」のページ
http://www.fnk.or.jp/farm/index.html)から、拝借した。

写真はクリックすると大きくなります。
このように、福島県は、海際から内陸にかけて、「浜通り」「中通り」「会津」の3地域に分かれている。
「浜通り」「中通り」は原発による放射線の影響があるが、「会津」は原発の間に山があって、それが風に乗って放射線物質が飛来してくるのを防いだために、放射線の影響がないところが多い。
これから書く、「すとう農産」はその会津若松市にある、米作農家である。

私達は、今回の取材の最後に会津を訪れた。
私は、ウクライナ製のガイガー管を使った線量計、TERRA-MKS-05を今回の取材に持って来て、行くところ全ての土地で線量を計った。
おなじ、TERRA-MKS-05でも、新型と旧型があって、私の持って行った物は旧型だった。
宝島社発行の「放射線測定と数値の本当の話」と言う本の中で、編集部が33機種の線量計を実際に測定して評価をしているが、その総合評価で旧型でも、5位に入っている。(新型は2位である)
まあ、信頼しても大丈夫だろうと判断した。
その線量計で測り続けてきて、会津地方に入ったら突然線量が低下した。
たとえば福島県庁横では、一昨日の朝日新聞に載った数値でも0.9マイクロシーベルト毎時ある。(これは、年間にすると7.88ミリシーベルトを超える値である。ICRPの設定した安全基準、年間1ミリシーベルト、の約8倍と言うことになる。この計算は、その人間が1日24時間その場所にいたとしてのものなので、そこに4時間しかいないとなると6分の1にしなければならないが、そのような計算は、個々人の生活によるので、私はその土地の全体的な傾向を表す物として、24時間で計算する。)
そのほかの土地も、私の持っていった線量計によれば、空間線量は0.2マイクロシーベルト毎時を下回ることはまれだった。
それが、会津地方に入ると、突然、0.06〜0.08の数値に収まり始めたのだ。
横須賀市秋谷の私の家で計った数値と変わらない。
(ついでに、ICRPの年間1ミリシーベルトという数値と新聞や雑誌に発表されるマイクロシーベルト毎時との間の計算は、単に、
〈マイクロシーベルト毎時の数値〉÷1000×24×365で計算できるが、そのたびに計算するのはめんどうなので、0.12と言う数字を覚えておいて下さい。
これを上記の式で計算すると、1.0512と言う数字が出て来る。
で、おおざっぱに、0.12マイクロシーベルト毎時が、年間1ミリシーベルトであると、考えておけば便利です。
0.12です。
雑誌などで時間当たりのマイクロシーベルトの数字が出て来ても、0.12より高いか低いか、高かったら、0.12よりどれだけ高いか、それで判断すると簡単です。)

会津若松市北会津町では須藤さんにお会いした。
須藤さんは、合鴨を使って田んぼの除草をすることで、除草剤を使わず、農薬も使わず、完全有機農法で米を作ってきた。
近所の農家にも栽培を委託して「すとう農産」という会社を経営している。
「すとう農産」は今まで実績を積み重ね、評判も良く、経営も順調だった。
ところが、今年の新米は、それまで個人直販で米を買っていた人の6割が契約破棄、大手の米販売会社も四千万円のキャンセルをしてきた。
須藤さんは、新米が取れるとすぐに、放射線測定をした。
理科学研究所の理研分析センター、筑波分析センターの2カ所に依頼して測定した。
ここに、理研分析センターの報告書のコピーを掲載する。

クリックすると大きくなります。
理研分析センターでは、一番測定精度が高いとされているゲルマニウム半導体を用いた検出器を使っている。
しかも、検出下限値は、
ヨウ素-131に対しては、キログラム当たり 1.2ベクレル。
セシウム-134に対しては、キログラム当たり1.0ベクレル。
セシウム-137に対しては、キログラム当たり1.4と設定してある。
国の暫定基準のおおよそ500分の1の厳しさである。
放射線に関して一番厳しいスウェーデンの食品にたいする基準値は、キログラム当たり8ベクレルだから、それよりも厳しいことになる。
それで、測定しても、ヨウ素、セシウムともに、「不検出」、実質0である。

この検査の数値から、判断すると、「すとう農産」の2011年産の米は完璧に安全である。
(原発が不安定なので、来年のことは分からない。だが、今年の米は絶対に大丈夫)
それなのに、個人契約者、大手米販売会社が、キャンセルしてきたのは何故か。
それは、単に、会津は福島県、福島県の食品は危険、と言う短絡的で非理性的・感情的な判断による物だ。
これは、行政にも責任がある。
農産物の測定の網の目が粗すぎる。
地域ごとに細かい測定を行わず、突然、ある地域の米のなかに基準値を超えた物があったなどと発表する。
それでは、会津の米と他の土地の米との差が分からなくなり、会津=福島=危険と消費者は考えてしまう。
消費者は、誰一人として、国の暫定基準、キログラム500ベクレルなどと言う値が安全であるなどと信用していない。
500ベクレルという数値自体、乱暴な数値であるのに、では、499ベクレルでも安全とされるのか、とみんな不安になる。
不安になって当然なのであって、行政は国民の健康など真剣に考えず、ただひたすらあいまいにして、この場をしのいでいけば何とかなるのではないかと猿知恵を働かせたからである。
その結果、他の地域と違って放射線の影響が殆ど無い会津で、安全な米を作っている須藤さんのような人までも、消費者の「福島産だから安全ではない」、という強い思い込みによる被害を受けている。
行政は500ベクレルなどと言う数値を設定した上に、きちんと、各地域ごとに安全な物を安全とはっきりした数字で示さないから、消費者から、会津の産物にたいする信頼を奪ったのである。

私の緊急のお願いとは、「すとう農産」の米を買ってあげて頂きたいと言うことである。
安全性は、私などと言ういい加減な人間ではなく、日本で一番権威のある理科学研究所のお墨付きである。
この検査結果を疑うなら、何も食べない方が良い。
絶対に安全である、と私は断言する。
第一、大変に美味しい米である。
しっとり、もちもちした柔らかい歯触り舌触り、さわやかだがこくのある味わい。甘みも十分だ。
ご飯好きなら、この米を食べない手はない。
会津産=福島産=危険
という短絡的な判断はやめて、理性的に、合理的に判断して下さい。
この疑い深い私が言うのだ。
安全で、美味しい。
信じて頂きたい。
「すとう農産」のホームページのURLは、
http://www9.plala.or.jp/sutou-nousan/
です。
ここにアクセスして下さい。
どうか一人でも多くの方が、「すとう農産」の米を買って、その美味しさを堪能して頂きたいと願っています。
私自身百キロ買った。
親戚中に配る。友人たちにも配る。
安全な米なので安心して配れる。

福島県の報告は次回にします。

雁屋 哲

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