雁屋哲の美味しんぼ日記


ベビー・スピナッチのサラダ

2008年7月28日(月)@ 17:45 | 雁屋哲の食卓

 ベビー・スピナッチ(ホウレンソウ)のサラダ

 次女の作った、ベビー・スピナッチのサラダを紹介しよう。

 1988年にシドニーに引っ越してきた当座、日本で食べていたホウレンソウがシドニーには無いことに驚いた。
 いや、最初に引っ越した先は、チャーチ・ポイントと言って、大変に景色のきれいなところだが、シドニーの中心部から車で四十分も離れていたからホウレンソウが無かったのであって、中華街あたりに行けばあったに違いない、と連れ合いは言う。しかし、そのチャーチポイントあたりの住民は中の上以上の所得階層に属していたから、食費を節約する必要のある人達とは思えず、ホウレンソウがシドニー中にふんだんに出回っていたら当然その近くのショッピング・センターなどでも売っていたはずだ。

ホウレンソウなんてものは、ポパイの缶詰で有名だから、西洋社会なら当然あるものだと思っていた。(オーストラリアも西洋社会の一員だと自分たちは言っている。そのくせ、サッカーのワールド・カップの予選にはアジア地域に入れろと言って無理矢理入って来た。マレーシアの前の首相、マハティールはオーストラリアをアジアの一員とは絶対に認めないと言っていたけれどな)
 ところがホウレンソウがない。
 ホウレンソウのお浸しも、バター炒めも、胡麻よごしも、全然食べられない。
 信じられなかったが、本当に無かったんだ。

 ただあったのは、ガーデン・スピナッチと言って、まるで中国野菜のパクチョイを大きくして、その白い部分を更に広げたような、あるいは白菜のような形の巨大な野菜だけ。しかし、葉の緑の部分が厚ぼったい。
 日本のホウレンソウとは似ても似つかぬ奇怪な形だ。
 たしかに、それをバター炒めにすれば、ホウレンソウの香りがする。
 しかし、あまりに無惨な感じで、とても何度も食べる気にならなかった。
 良く、オーストラリアは囚人の作った国だなどと悪口を言われるが、私達が引っ越して来た当時のオーストラリアの食を考えるとその悪口もむべなるかなと思わざるを得ないところもありましたね。

 そのガーデン・スピナッチとはこんな姿の野菜です。

ガーデン・スピナッチ1 ガーデン・スピナッチ2
ガーデン・スピナッチ3 ガーデン・スピナッチ4

 ちょっと凄いでしょう。
 これを、こちらでは、グラタンなどにして食べます。
 次女が、今回ついでに作ってみました。
 マッシュルームと合わせます。

ガーデン・スピナッチのグラタン1

 ホワイトソースをかけ、チーズをたっぷりのせて、焼く。

ガーデン・スピナッチのグラタン2(焼く前) ガーデン・スピナッチのグラタン3(焼くと)

 これこの通り、まるで中国野菜のグラタンみたいだ。

ガーデン・スピナッチのグラタン4 ガーデン・スピナッチのグラタン5

 フランスでもこのグラタンを食べるようで、フランスの料理書にはガーデン・スピナッチの葉っぱ部分を使えと書いてあるそうだ。
 しかし、白い茎の部分の方が美味しい。
 こうしてグラタンにしてみれば、さっぱりしていて美味しい。
 日本のホウレンソウと比べるから文句が出るので、ガーデン・スピナッチは名前だけスピナッチでホウレンソウではないと思えば、それはそれで美味しい野菜なのだ。
 今回、グラタンにしてみて、満更悪くないと見直した。

 しかし、オーストラリアの食の事情の改善の速度はめざましいものがある。
 それは、主にアジア、中近東、地中海方面からの移民のおかげである。
 新しい移民が、ちゃんとした食べ物を運んで来てくれたのである。
 日本で食べているのと同じホウレンソウもふんだんに手に入るようになったし、ここに紹介するベビー・スピナッチなども手に入るようになった。
 おかげで、こうして、美味しいサラダが食べられるのである。

 で、肝心のベビー・スピナッチのサラダだが、ベビー・スピナッチさえ柔らかで甘味のある良い物が手に入れば、後は簡単。
 かりかりに焼いたベーコン、半熟ゆで卵、削ったパルミジャーノ、を合わせ、そしてドレッシングは、オリーブ・オイルとホワイト・ビネガー。

ベビー・スピナッチのサラダ1 ベビー・スピナッチのサラダ2

 食べるときは、半熟卵を潰して、ベビー・スピナッチに和える。

ベビー・スピナッチのサラダ3 ベビー・スピナッチのサラダ4

 この、半熟卵の黄身と、ベーコン、パルミジャーノが合わさると、じつに豊穣な味わいで、このほろりと苦くしかし甘味のあるベビー・スピナッチの 爽やかな味わいを一層引き立てる。
 これと、トーストだけで、昼食なら十分という感じだな。

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