雁屋哲の美味しんぼ日記


和歌山県は素晴らしい

2009年4月28日(火)@ 23:10 | 雁屋哲の美味しんぼ日記

「美味しんぼ」の「日本全県味巡り」和歌山県篇の最終回を今日書き上げた。
 これがスピリッツに載るのは数週間先になるだろうが、原作者としての締切りは、これでぎりぎり一杯なのである。

 私は「日本全県味巡り」を始めて見て、日本という国の素晴らしさを決定的に身にしみて感じた。
 私が自分のことを「愛国者」だというと、右からも左からも、ひどいことを言われるが、そう言う言論の人は、ぴいいぴいいさえずっていないで、実際に日本各地を回って貰いたい。
 和歌山県もそうだが、日本の各県を回ると、どうしてこんなに素晴らしい人達、自分の生き方を決めてそのために努力を尽くす人達が大勢いるのか、それを見て、これだけで、私は日本という国に絶対なる進歩と確実な生き方を見ることができるのだ。
 実際に物を生産している地方の人達と、単なる消費者である都会の人間とは、顔つきと心が違う。
 地方に来る度に、ああ、よくぞ日本人に生まれけり、と思う。
 素晴らしい人達が我々都会に住んでくだらない消費をしながら文句を言う我が儘な人間を支えてくれているのだ。

 私は、何度も言うが、日本という国を国土の面積で示せば世界地図上では豆粒のように小さい。
 しかし、面積ではなく、文化を単位にして国の大きさを測ったら、アフリカと、南アメリカと、ユーラシア大陸のかなりの部分を合わせた以上の面積を世界地図上に描くだろう。

 こんなことを言うと、「ああ、雁屋哲も、愛国主義に陥ったか」と嘆かれる人もいるかも知れないが、そう言う人は、世界の実状をしらない人だ。勉強しなさい。

 本当に、和歌山県は素晴らしかった。
 険しい山、狭い耕地、それは確かに厳しい。
 しかし、それだからこそ養えた、和歌山の人々の心の強さ、明るさに、私は感激した。
 私は、和歌山の取材を終えて、この和歌山県篇をスピリッツ誌で連載途中なのに、小学校の同級生たちと、和歌山に行った。
 こう言うのは、反則なのかも知れないが、私の小学校の同級生たちは、私が、日本全県味巡りの取材をしたとなると、すぐにそこで見つけた美味しい店に連れて行けと、迫るのである。
 いままで、行ってきた日本全県味巡りのいいところは、すべて小学校の同級生たちを連れて行った。
 和歌山県も、大好評。
 意外に、関東の人間にとって、和歌山県は通り過ぎるだけの県になってしまっている。
 新幹線で、東京から新大阪まで良く行くけれど、新幹線の下にある和歌山県には目がいかなかった、などと言う人間が多い。
 ふざけるなよ、と言うのが、私の言いたいことだ。
 和歌山の恩を忘れたか。
 醤油、鰹節、わさび、金山寺味噌、日本人の味の基本は全部和歌山だ。
 それに弘法大師様だ。熊野三山の信仰だ。
 ちょっとした村や町には熊野神社があるだろう。
 みんな、無意識に、和歌山発の精神性に影響を受けているのだ。

 私は宗教は信じることの出来ない人間だ。
 しかし、他人に悪を及ぼしたり、人の心を操って金を取ったりしない限り、それで気持ちがいいのなら、宗教を信じればよいと思う。

 その点から言えば、弘法大師を敬う密教も、自然崇拝の気持ちの強い熊野信仰も、宗教としては害がないものだと思う。
 むしろ、文化的に興味深い物を作り出している点で、否定するべき宗教ではないと思う。
 特に、高野山の中でも歴史の古い、総持院の宮田ご住職のお言葉は凄かった。ご住職は「私のところの精進料理が動物性のものを使わないのは、動物性のものにタブーを持つ宗教の人でも受け入れるためです。これなら、どんな宗教の人でも大丈夫です」
 私はこの言葉に感銘を受けた。
 豚を食べたらだめ、イカを食べたらだめ、などと言う宗教のはびこっている時代に、どんな宗教を持つ人達でも自分のお寺には受け入れますよ、と言うこの心の寛大さ。
 全ての宗教人が、このように、相手の宗教も寛大に受け入れて、共に幸せに生きて行きましょう、と言えれば、今の世界中を覆っている不幸の、90パーセントが消えるのだ。
 宗教は、宮田住職の仰言るように、人の幸せのためのものだ。
 それが、今は、宗教が人と人との闘う理由になってしまっている。
 私は、改めて、真言宗の、心の広さに感銘を受けた。

 和歌山は、美味しいだけではなく、心に強く訴えかける県だった。
 今日で、日本全県味巡り、和歌山県篇の原稿を書き上げるのに11週間かかって、とても苦しかったが、同時に、終わってしまうと何かを失ったような寂しさを感じている。
 和歌山、素晴らしいところだ。
 また、何度も訪ねたい。
 読者諸姉諸兄にも言いたい。白浜以外にも、素晴らしいところが和歌山には沢山ある。
 もっと、和歌山の良さを知ろう。
 こんな良いところに行かないのは、人生の損失ですよ。


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