雁屋哲の今日もまた

2016-08-20

中国ショック2

中国から受けた衝撃は、簡単には収まらない。

その中国ショックについての話を続ける前に、またブックレットのお知らせです。

前回の「さようなら!福沢諭吉」は実は、「福沢諭吉の引退を求める三者合同講演会機関誌」の準備のための特別誌であって、これから、新たに、正式な「さようなら!福沢諭吉」の安川寿之輔先生、杉田聡先生、雁屋哲の三者合同の講演機関誌が「創刊号」として発刊されることになりました。

前回の発行は「花伝社」による物でしたが、今回の正式な創刊号から、発行世話人安川寿之輔先生、の発行と言うことになります。

前回の「さようなら!福沢諭吉」の内容は、2015年、12月8日の名古屋での講演の内容が主体になっていますが、今回の創刊号は、それとは別に、福沢諭吉批判の内容になっています。

今回も私に注文して頂ければ、安川寿之輔先生に取り次ぎます。

 

ただ、今回の創刊号について、お詫びをしなければならないことがあります。

私は、巻頭に「勝海舟と福沢諭吉ー『痩せ我慢の説』批判」という文章を書いています。

これは、福沢諭吉が、明治維新後24年も経ってから、勝海舟が西郷隆盛と談合して、幕府が薩長を中心とする西軍〔官軍とも言う)に降伏して江戸城を明け渡しのがけしからんことで、三河武士の魂に悖る。武士なら、負けることを覚悟しても痩せ我慢をしてでも戦うべきであった。しかも、明治維新後、政府の高官になり、伯爵という爵位まで貰ったことがけしからんことだと、批判したものです。

私は、その福沢諭吉の言うことに対する反論を書いています。

しかし、その中で半藤一利氏の著作「それからの海舟」を参考に使わせて頂いたのですが、うっかりと言うのも愚かな間違いを犯してしまって、半藤一利氏には、謝罪をしなければなりません。

それは、海舟が西郷隆盛との談判の前に、江戸の火消しの親方、その他の町の有力者に頼んで話を付けておいて、西軍〔官軍が)海舟の談判にも拘わらず,江戸に攻め込んで来たら江戸中に火をつけて江戸を火の海にして西軍(官軍)を火攻めにしてその間に幕府の強力部隊が西軍を倒す、という策を立てておいた、と言う件なのですが、私は、このことについて「半藤一利氏は珍しく、ここでは出典を明らかにしない」などと書いてしまいました。

ブックレットが印刷されて私の手元に届いたとき、その個所を目にして、私は驚きました。

「一体何と言うことを書いてしまったのか。こんなことは、勝海舟の『解離録』にきちんと書いてあることではないか」

ブックレットの原稿を書きながら、「何か変だな」と感じていたことは確かです。

勝海舟については、勁草書房版、講談社版の二種類の全集を持っていて、肝心な所はきちんと読んでいたはずなのに、そのようなことを書いてしまうとは、とんでもないことです。

半藤一利氏は、その文中にもちゃんと「解離録」の名前も挙げておられる。

何もかも、私の精神的な混乱のせいです。

半藤一利氏には心からお詫び申しあげたいと思います。

(このときの私の精神的な混乱については、いろいろ言い訳もありますが、とにかく、とんでもない間違いを犯してしまったことは事実です。

更に、これは半藤一利氏とは関係のない所なのですが、同冊子の5ページに、勝海舟の乗った船が伊豆沖で激しい風雨に遭遇したときのことを、なぜか「名古屋沖」と書いてしまいました。

前回名古屋に講演に行ったときご馳走になったひつまぶしの美味しさがよほど忘れられなかったものと思います。

お詫びして訂正します。勝海舟が、帆柱に自分の体を縛り付けて水兵たちを指図をしたのは、伊豆沖です。〈「氷川清話」講談社学術文庫 35ページ〉

ただ、今度発刊する「2年C組 特別勉強会 福沢諭吉」については、安川寿之輔先生、杉田聡先生にも下読みをして頂き、編集者たちとも検討を重ねているので、このような訳の分からない間違いは絶対にありません。)

私はあの幕末激動の時代を,最小限の血を流すことで押さえ、イギリス・フランス・ロシアの介入を防ぎ、日本という国が西欧大国によって分割され崩壊する危機を防いだ、勝海舟と、西郷隆盛の英雄同士にしかわからない、苦心惨憺の歴史を見ると、徳川幕府の幕臣でありながら、傍観者としての立場に終始した福沢諭吉の批判が実に卑怯で愚かなものに思え、その件について思うことを書きました。

勝海舟と、西郷隆盛について、興味の有る方は是非お読み頂きたいと思います。〔宣伝です)

 

もう一つ、前回に書いた文章の中で、私は「蒙古民族」「蒙古族」という言葉を使いました。

それについて、読者の方から「蒙古」というのは差別語であって、「モンゴル」と書くべきだというご指摘を頂きました。

漢民族は、自分たちを世界の中心と考え、自分たちは「中華」とし、中国の周りの民族を全て自分たちより劣る野蛮人として扱いました。

自分たちの周囲の東西南北の民族を、東夷、西戎、南蛮、北狄、と蔑視しました。

蒙古も、「蒙=道理にくらい、むちなこと」、「古=古い、古くさい」などの蔑視語と言えるでしょう。

モンゴルの音に、中国語の「蒙」と「古」を当て嵌めたのかも知れません。

(日本人は、東夷=東方に住む未開人、の中の倭人=背が曲がってたけの低い小人の意、と呼ばれていました。)

チンギス・ハーンが作り上げた大帝国の、五代目のハーンとなったフビライは、国の名前を「大元大蒙古国」通称、「元」として現在の北京を都としました。

これが中国王朝の一つである「元」です。

フビライは日本をも征服しようと二度にわたって軍を送り、日本は九州で元と朝鮮の軍と戦いました。

その当時の様子は「蒙古来襲絵巻」として残っています。

日本人は、中国の呼称に従って「蒙古」という言葉を使い続けました。

モンゴルは1924年に、「モンゴル共和国」、1991年に「モンゴル国」と国名を変えました。

私も現在のモンゴルを蒙古とは呼びません。ただ、私が知識として持つ世界史の中では「元」を作ったのは「蒙古民族」であると刻み込まれていたので、その歴史表記に従ったのです。

私には差別心などありませんが、「蒙古」という言葉は差別語であると言われれば、言葉の意味からしてその通りでしょうし、現在現実にモンゴリアンは「モンゴル」という国名を使っているのですから、「蒙古」という言葉は使わない方が良いだろうと思います。

ご意見に従って、前回の記述も、「モンゴル」に書き改めました。

ご忠告に感謝します。

ただ、歴史的表記をどうするかと言うことは大きな問題として残ると思います。これは別の機会に論じたいと考えています。

 

 

で、中国ショックですが、日が経って冷静になると、反って中国のすごさを改めて感じるようになりました。

確かに、現在の中国経済は停滞しているようです。

中国人観光客による爆買いが日本を潤しましたが、その爆買いが収まると、例えば秋葉原の電気街のの「ラオックス」(中国人の所有になる店)の利益が今期は90パーセント下がったと言うし、東京の中心に建てられていた高層アパートも契約率が63パーセントになってしまったと言います。

中国の鉄鋼も生産過剰になり、低価格で輸出するので、各国で問題になっていると言います。

私が、中国にいる間に見たテレビでも、中国のある土地で(私には中国語が分からないので、その地名を記憶できませんでした)その土地の化学製品会社が垂れ流す排水、廃物の影響で深刻な健康被害を受けていることを時間をかけて報道していました。

急激に経済を立ち上げた中国にとってそのようなことが起きるのは当たり前のことだと思います。

日本もかつて高度経済成長の際に、八日市喘息、水俣の有機水銀などの公害問題が起こりました。

かつて東京の大気の汚染もひどいものでした。

しかし我々日本人はそのような公害を克服する方法を見いだし、現在の我々はなんとか環境と折り合いを付けています。

中国も、国営のテレビで環境問題を報道するからには、それは政府が環境問題に取り組むという意思表示であると思います。

中国政府が、公害対策に取り組めば、現在の中国の環境問題も改善できるのではないかと思います

現在の経済問題も、成長段階のいわば足踏みの段階であって、今の不都合を改善すれば再び猛然たる経済成長を始めると思います。

中国が駄目になるとすれば、これまでの中国の各王朝の末期のような混乱が起こるはずですが、今の中国には、それまでの王朝の末期的症状は、まだ私の目にははっきりと見ることが出来ません。

現在書店に並ぶ反中的書物、ネットを埋める反中的書き込みを読むと今にも中国は崩壊するように思えます。

そんなことを書いている人達は、まず中国の各地を歩き回ることをお勧めします。

日本は経済だけではなく、科学技術の面でも、中国に負け始めています。

中国は最近「量子通信衛星ロケット」を打ち上げました。

量子情報通信とは、量子力学の原理を情報理論に持込んだもので、

1)情報量の飛躍的な増大。

2)安全性

の面で優れています。

 

量子情報通信は、かなり面倒な専門的な話になります。私は量子力学は勉強しましたが、情報通信の面は暗いので、また勉強し直して、簡単に説明できるようにしておきます。(宿題とさせて頂きます)

とにかく、この量子情報通信を使うと、その情報を第三者が盗むことが出来ません。ハッキングは出来ないのです。

この量子情報通信システムは、アメリカなどでも盛んに研究されていますが、現在のところ地上でのやりとりしか実験されておらず。通信衛星で、量子情報通信を行うとは、非常に高度な技術を中国は持っていると言うことになります。

AI(人工知能)の研究でも中国は日本の先を行っていると言われています。

私の好きなオーディオでも、最近中国のメーカーから仲々良い製品が出て来ています。

反中本を書いている人達は、そのような現実をきちんと見て、馬鹿げた思い上がった態度、あるいは劣等感でねじ曲がった考えを捨てて、中国をきちんと捉えるべきです。

尖閣諸島問題で、やたらと中国に好戦的になっている人達も大勢いますが、中国と戦争してどうするつもりなのですか。

戦争は絶対にしてはいけません。

それでもどうして戦争をするというのなら勝たなければいけません。

だが、今の日本が中国と戦争して勝てるはずがないでしょう。

中国からしたらこんなに簡単な相手はありません。核弾頭を使う必要もない。中距離ミサイルで日本各地の原発を狙えばそれでおしまいです。

経済の面で中国に追いつくことはもはや無理です。

残るは科学技術でこれ以上遅れないように頑張ることです。

私達はもっと、深く中国を研究しなければなりません。

何も知らずに反中本を書くような人間を相手にしてはいけません。

そして何より、中国との友好を深めることです。

勝海舟は、日本、朝鮮(当時の言葉)、中国が手を結べば西欧各国と対等に立ち向かえる、と言いました。

勝海舟の言葉とは正反対のことをその後の日本はしてしまい、現在の苦境に追い込まれています。

 

よほどの、とんでもない混乱が起きない限り、中国はますます発展していくでしょう。

日本はどうやって生き延びていくか真剣に考えないとならないと思います。

 

 

 

 

雁屋 哲

最近の記事

過去の記事一覧 →

著書紹介

頭痛、肩コリ、心のコリに美味しんぼ
シドニー子育て記 シュタイナー教育との出会い
美味しんぼ食談
美味しんぼ全巻
美味しんぼア・ラ・カルト
My First BIG 美味しんぼ予告
My First BIG 美味しんぼ 特別編予告
THE 美味しん本 山岡士郎 究極の反骨LIFE編
THE 美味しん本 海原雄山 至高の極意編
美味しんぼ塾
美味しんぼ塾2
美味しんぼの料理本
続・美味しんぼの料理本
豪華愛蔵版 美味しんぼ
マンガ 日本人と天皇(いそっぷ社)
マンガ 日本人と天皇(講談社)
日本人の誇り(飛鳥新社)
Copyright © 2016 Tetsu Kariya. All Rights Reserved.
掲載の記事・写真・イラスト等のすべてのコンテンツの無断複写・転載を禁じます。